Patrick Suskind
| 『香水』パトリック・ジュースキント/池内紀・訳(文春文庫) |
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希代の〈匂いの魔術師〉をめぐる嗅覚奇譚。 様々な匂いが立ち込める18世紀パリの街角で、ずば抜けた嗅覚を与えられてその生を受けたジャン・バティスト=グルヌイユ。その一代記。ずば抜けた嗅覚をもち、それ故に孤児となったグルヌイユ。その異常性故に、ある時嗅いだ偉大な〈匂い〉に執着することになる。グルヌイユはその〈匂い〉を再現するために、手始めに香水調合師に弟子入りをし――。 それにしても主人公グルヌイユの〈匂い〉に対する執念は凄まじい。第二章の前半部には鳥肌が立った。全作に渡って醸し出される匂いと臭いとにおい。それこそ鼻をそむけたくなるほどの臭いが漂ってくるものの、その物語から目を離すことはできない。嗅覚異常である主人公を軸に進められていくその物語は、どれもこれもが異常であって、しかしまたそれ故に、読者は物語に引きずり込まれていく。ストーリーテリングが抜群に巧く、あっという間に読んでしまった。 ある種のクライマックスが物語中盤でやってくるにもかかわらず、その後もラストまで物語はだれることない。いや、「だれることがない」という言い方は正確ではない。ラストへ向けてグルヌイユの異常性はますます目について顕著になり、鮮烈な、壮絶なラストへと繋がる。その強烈なラストは、その凄惨さなにもかかわらず、まったく嫌な気持ちにはならない。むしろこの異常な主人公について書かれた本書の締めを飾るに相応しいラストだ。 ここに感想をアップする際、よく読むと粗があったり好き嫌いが分かれそうだと思ったりするため、お茶を濁しながら終わらせることが多いのだけれど、本書に関しては手放しでオススメしたいと思う。シンプルで読みやすく、最近文庫化もされたため手に入りやすい本書に関しては、余計な言葉はいらない。ここを見ている全てのヒトに読んでみてもらいたい。
(2003年9月27日更新)
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