Amos Tutuola
| 『やし酒飲み』エイモス・チュツオーラ/土屋哲・訳(晶文社クラシックス) |
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ここはアフリカの底なし沼。十歳の頃からやし酒を飲むことしか能がない男が、死んだやし酒づくりの名人を取り戻しに「死者の町」への旅に出る。頭蓋骨だけの奇怪な生き物。地を這う巨大な魚。指から生まれた凶暴な赤ん坊。後ろ向きに歩く死者……。幽鬼が妖しくゆきかう森を、ジュジュの力で変幻自在に姿をかえてさまよう、やし酒飲みの奇想天外な大冒険。 エイモス・チュツオーラ、はナイジェリアの作家だそうです。世界中で高い評価を受けているらしいです。寡聞にして、私は知らなかったのですけれども。 凄い作品です。本書は、英語でかかれた作品なのですが、出版当時は、叩かれたらしいです。非常に風変わりで不正確な英語語法で書かれ、なおかつ迷信を信じているように思われてしまうので、ナイジェリア、ひいてはアフリカという国が誤解されてしまうのではないか、と。国内のジャーナリズムから。しかし、こんな作品でありますから、国外での評価は高かったようです。是非とも英語に堪能になってから、原書で読んでみたくなりました。 「わたしは、十になった子供の頃から、やし酒飲みだった。私の生活は、やし酒を飲むこと以外には何もすることのない毎日でした」 前後の辻褄なんぞは考えず、とにかく話は進んでいきます。読者は振り回されるばかり。ちょっと読み飛ばすと何が何やらわからない。いや、丹念に読んでいっても何が何だか。 「"どらむ"がドラムを打ちはじめると、百年このかた死んでいた人々がみな一斉にムックリと起き上がって、ドラムが打っているのを見んものと、方々から集まってきた。また"ソング"が歌いはじめると、新しい町の家畜や森林の動物やヘビまでがみんな、人間に姿を借りた"ソング"を人目見んものと集まってきた。そして"ダンス"が踊り出すと、森林の生物、精霊、山の生物こぞって、それに川の生物までもダンスをしている人を見ようと町に押しかけてきた。そしてこの三人の仲間が同時にスタートした時には、新しい町の住民全部、墓から起きだしてきた人々全部、それに動物、ヘビ、精霊、そのほか名もなき生物に至るまで、一斉に、この三人組と一緒に踊り出し、わたしは、生れてはじめて、その日にヘビが踊りが一番うまいのを、見たのだった」 本書は、チュツオーラのオリジナルのフィクションを混ぜつつ、伝承的民話を集めたり、直したりしながら繋げたもの、のように思われるのですが、この繋げ方がもう強引なわけです。次の街へ行ったら、何か事件が。しかし、その事件が何らかの伏線でも何でもなく、ただただ事件が起きた、で終わってしまったりするわけです。 例えば、指の先から子供が生まれるのですが、非常に凶暴かつ乱暴な子供だったので燃やして殺してしまったり。 「この世でもっともすばらしく、もっとも高価な服をまとい、背丈が高く、すらっとして、しかも屈強で、身体のどこをとってみても、完璧な」紳士が、実は頭蓋骨だけの奇怪な生き物であったり。 わけがわかりません。でも、こういうお話は嫌いじゃないです。 いわゆる「民話」が好きな方にオススメ。
(2002年8月1日更新)
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