冲方丁
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『マルドゥック・スクランブル The First Compression圧縮』冲方丁(ハヤカワ文庫)
『マルドゥック・スクランブル The Second Combustion燃焼』冲方丁(ハヤカワ文庫) 『マルドゥック・スクランブル The Third Exhaust排気』冲方丁(ハヤカワ文庫) |
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熱い。 冲方丁の作品には迸る何か、がある。それはデビュー作『黒い季節』(角川書店)で既に迸っていたし、怒涛の新刊ラッシュな最近のどの作品を読んでも感じられるし、ホームページを覗いてみてもそれはよくわかる。 熱い。 ただひたぶる熱い。 本書は、主人公バロットが賭博師シェルの奸計にハマり、車の爆発事故で瀕死になるシーンから始まる。瀕死の彼女を救ったのは、委任事件担当官であるウフコックとイースター。彼らの協力を得て、バロットはシェルの犯罪を追う。そしてシェルを追い詰めるために、シェルの息のかかったカジノへ――。 で、このカジノのシーンが熱い。それはもう、むちゃくちゃ熱い。カジノ小説で一体何が熱いと言えば、やはり数多のいかさま師と凄腕のディーラーたちを対手とした、手に汗握る駆け引きだと思う。裏をかき、裏の裏をかき、裏の裏の裏をかく。ゲームの場面を熱いものにするためには主人公たちによる高速の思考だけを追いかければ良いのではない。対手だ。より強い対手が必要なのだ。そして、本書に出てくる対手役がこれまた格好いい。カジノ界屈指のスピナー〈ベル=ウィング〉とカジノの用心棒とも呼ばれる敏腕ディーラー〈アシュレイ=ハーヴェスト〉。バロットの前に立ちふさがるこの二人がもう、そりゃあもう、かっこいいのだ。多分惚れる。誰でも惚れる。っていうか私は惚れた。 三巻のあとがきで作者は、ビジネスホテルに閉じこもって本書を書いたというエピソードを述べている。 > 彼らの勝負熱に、執筆している本人が煽られ、突然、 > 胃に酸っぱいものが込み上げてきた。慌てて横を向いた > 途端、思いっきり吐いた。ビジネスホテルのベッドと床 > にぶついまけられた反吐を前にして、声を上げて笑った。 > このときばかりはさすがに自分が異常なのではないかと > 思った。吐いたことが問題なのではない。 > 「今、自分が書いているこの物語は、本当に面白いぞ」 > と、唯一、確信を抱くことができた瞬間が、そのとき―― > 自分の反吐の匂いを嗅いだ時だったからだ。 熱い。冲方丁は熱い。 熱いものが読みたい方には是非とも読んでもらいたい。オススメ。 譲って下さったQuanさんに感謝感謝感謝。どうもありがとうございました。
(2003年9月11日更新)
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