Leonard Wibberley
| 『小鼠 ニューヨークを侵略』レナード・ウイバーリー/清水政二・訳(創元推理文庫) |
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もう、笑いっぱなし。 北アルプス山中の小国グランド・フェンウィック大公国――自由を旗印に平和な日々を送っていたこの小国にも、人口の自然増による社会問題が持ち上がっていた。外貨を獲得する手段は、大公国が世界に誇るワインだけ。増収をあてこんだワインに水割り論をめぐって、賛否が国を二分し、決断を迫られた大公女は何とアメリカに宣戦を布告するという奇想天外な手を考え出した。折も折、アメリカでは究極兵器Q爆弾が発明されたばかりだった……。核による大国支配の国際政治を痛快に戯画化した抱腹絶倒、痛快無比のユーモア小説。 これがまた巧いのだ。 小国グランド・フェンウィックが大国アメリカを翻弄するつもりはないのに翻弄するしていく展開にはもう笑いっぱなしである。爆笑、ではなく、何て言うんだろ。あの、苦笑い、というか顔がにやけてくる感じの笑い。登場人物は、タリイ・バスコムも、マウントジョーイ伯爵も、コーキンツ博士も、アメリカ合衆国大統領も、皆まじめなのだけれども、どれもこれもがちぐはぐになっていくのが、もう。それはもう。 あ、でも、グロリアナ十二世は茶目っ気があってかわいい。 さて。 あまり良くないかもしれないけれども、もうちょっと詳しく粗筋を話してみることにする。ので、そういうのが嫌な方は、この後読まないのが吉です。 舞台となるグランド・フェンウィックは六世紀も続いている北アルプス山中にある小国。それも人口が4000人。その4000人が400エーカーの葡萄畑でワインを作って細々と国は成り立っていた、と。しかし、第一次世界大戦を境に、6000人を超過してしまう。4000人から6000人で1.5倍。今までも、ワインだけでおっつかっつ何とか成り立っていた国であり、このままいくと経済破綻を起こしてしまう。総勢10名の議員たちはまだ若い大公女(22歳!)グロリアナ十二世の下、額をつき合わせて対策を講じることに。そこで、ワインを薄めて大量出荷してみてはどうかという〈水割り党〉と、そのようなことをしたらわが国の恥だ、と〈反水割り党〉に対立する。膠着状態に陥った時に、グロリアナ十二世はこう宣言する。 「アメリカと戦争するのです」 何とまあ、アメリカに宣戦布告して戦争で負けてしまおう、というお考え。今までアメリカと戦って負けてきた国はアメリカが経済支援をしてくれているから、グランド・フェンウィックもそれをしてもらおう、と考えたわけです。さて、そこでアメリカに宣戦布告するわけですが――。 おいおいそこまでネタを晒すなよ、とか思われるかもしれないけれども、ここまででまだ本書の五分の一。この後が、これまた突拍子もない話になっていくのですが――。最後はユーモア小説らしくハッピーエンドで終わります。 ウィット効きまくり、エスプリありまくり、ユーモアあり過ぎ、の冷戦時代の風刺小説。非常に良質なユーモア小説であるので、是非とも復刊して欲しいところ。創元推理文庫さーん。これが絶版は勿体無いよー。
(2002年8月15日更新)
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