Jerry Yulsman

『エリアンダー・Mの犯罪』ジェリー・ユルスマン/小尾芙佐・訳(文春文庫)

 すごいよ、これ。

 しかしまあ、これほど感想が書きづらいのも珍しい。いやもう、本当に毎度毎度で大変申し訳ない限りなのだけれども、本書に関しては本当にまったくもって白紙の状態で読んだ方がいいかもしれない。ただ、人によるとは思うのだけれども、私の場合に限って言えば、何も知らずに本書を見ても多分読まなかったと思う。『エリアンダー・Mの犯罪』とまあ一体何の小説かよくわからないものの、何となく普通のミステリーっぽくて、ちらと表紙を見ても何というかこう一昔前の日本の社会派ミステリとか一昔前の翻訳ミステリとかみたいな表紙だし、まったく興味がそそられない。いやまあ、翻訳されたのは1987年だから一昔前ではあるだけど。しかしこれが読み始めるとやめられないのだ。古本屋にあったら手にとって裏表紙の粗筋も見ずにひとまず買って読み始めた方が良い本であることは確か。あー、本当に書きづらいな、これ。

 というような本であるので、以下の感想は蛇足。本来は。白紙で読みたい方はすぐに戻れー。戻って古本屋走って買って読めー。

 で。まあそれだけでも何なので、もう少しだけ書いてみる。

 実は先日、所属しているサークルで古本市をやるということで、笛吹きさんが事前に出品する本を大学に持ってきていたのだ。それを漁らせてもらいながら、何かオススメの本はないかと聞いたところ、歴史改変ものは好きかと聞かれたため、歴史改変ものは好きだと答えてみた。まあ、まださほど数は読んでいないけれども歴史改変ものは大好きである。で、数日後古本市で、これはどうだと本書を譲ってもらったのだけれども。
 これがほんとにすごくて。

 まあ少し簡単にネタバレしてしまうと本書は第二次世界大戦をネタにした歴史改変もの、の一作である。ただ何となく普通の改変歴史ものとも少し違うような気もする。多分、改変歴史というと、やはり改変歴史SF、とSF色が強いものを思い浮かべてしまう(人によってはWWUのifものを思い浮かべるかもしれないが)。本書はどちらかというと、裏表紙にも書いてあるとおり、ミステリー・ロマンとでも言った方が良い作品で、サスペンス色が濃い。そして次は一体どうなるのか、とページをめくる手がもどかしくなるくらい読ませる。

 とここまできても、やはり私にはちょっと本書のネタを書くことができない。本当にこれだけは粗筋を全く知らずに読んだ方がいい。どうしても歯切れの悪い感想になってしまったのには勘弁してもらいたいのだけれども、やはりどうしてもネタバレができない小説というものはあるわけで、そしてそういう種類の本は確かに面白いというのもあるわけで、もし古本屋で見つけたら是非とも手に取ってもらいたい一冊である。損はさせません。

 本書を譲って下さった笛吹きさんには感謝。感謝感謝感謝。

(2002年12月28日更新)

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