Roger Zerazny
| 『光の王』ロジャー・ゼラズニイ/深町真理子・訳(ハヤカワ文庫) |
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ここまでダークヒーローなお釈迦さまがいまだかつていただろうか。 物語性にずば抜けて優れたフィクションは、読者に語る余地を残さないと思うし、本書はまさしくその一冊であると思う。魅力溢れるインド神話とSF的設定との融合によって成り立ったその世界を描いていく、ゼラズニイの奔放なまでのイマジネーションには圧倒されるばかりだ。いやもう、何も聞かずに読んでみてほしい。 遥か遠い未来、死滅した地球を捨て長い放浪の末に発見された惑星に移住した人類。植民第一世代の彼らはインド神話を模した世界を建設し、【神々】として【天上都市】から科学技術を独占し、人々を支配していた。しかし、再び人類の叡智を人類全ての所有に戻そうと、【神々】のひとりだった男が反乱を起こす。人は彼を【仏陀】と呼んだ――。 類を見ない世界観とともにまた、この世界に息吹く人々、いや神々がまたあまりと言えばあまりにも格好良いのだ。もう基本中の基本を押さえているのにそれが嫌にならないっていうか、それが格好良いきっと惚れる。 一時期は自分が属していた陣営に対し反乱を起こすサム(=仏陀)。なんかもう、それだけでいいような気もするのに、冷静な表面の内奥に激情を秘めている、というもう何というかゼラズニイが書く主人公って感じの主人公。仏陀なのに暗殺とかするし。ブラフマンを毒殺したりシヴァ神を撲殺したりするのだ。かっこいいよ、仏陀。 脇を固める人物たちがこれまた格好良くて、もう今までこんなにシブかったヤマ(=閻魔大王)がいただろうかっていうくらい格好良かったりする。天地に並ぶ者がない強さな上に比類なき天才。でもなんか満たされない愛に苦悶してたりして。いやもう、読んでいてかっこいいと叫ばずにはいられない。 2年前、国土さんにゼラズニイをすすめてもらい、『伝道の書に奉げる薔薇』を読んで「いやあ(ゼラズニイは)いまいち合わなかったッスねえ」とかほざいていた自分の胸倉掴んで本書を顔に叩きつけてやりたい。 いやもう、むっちゃ面白かったッス。 オススメくださった国土さん、ありがとうございました。これからも精進してゼラズニイ読むことにします。
(2003年2月16日更新)
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