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 9    今は亡き父
 
 
 
あなたが死んだのは、私が小学4年の時でしたね。
 
 
 
いつも通り家に帰ると、親戚やら近所の人やらが集まっていた。
 
 
 
私は何故こんなに人がいるのかわからなかった。
 
 
 
いや、直感的には感じていたんだ。父か母が死んだのではないかと。
 
 
 
 
案の定、私の予想は当たっていた。
 
私と姉は親戚の叔父さんに、こう言われた。
 
 
 
 
 
 
「お父さんが・・・亡くなった」
 
 
 
 
 
 
声を上げて泣いた。ただ泣く事しか出来なかった。
 
 
皆が優しくしてくれる事が尚更つらかった。
 
 
 
「死んだのはお父さんではなく、別人かもしれない」
 
 
 
何度も何度も父かもしれない亡骸の顔を見た。
 
 
 
 
いくら見ても私のただ一人の大好きな父だった。
 
 
 
 
 
夢にまで出てきた。
 
 
 
 
 
 
お父さんが私たち家族の所に帰ってくる夢。
 
私の名前を呼びながら、こっちに向かって歩いてくる夢。
 
 
 
 
 
そっと私を抱き上げ、今まで自分がどこにいたのか話してくれた。
 
「もうどこにも行かないよ。ずっと一緒にいるよ。」と約束を交わした。
 
 
 
 
 
本当に、本当に幸せだった。
 
 
 
 
 
 
なのに目が覚めると、そこに父の姿はなかった。
 
 
 
 
涙が溢れた。
 
 
 
 
 
 
母も隣で泣いていた。
 
声を殺しながら。
 
体を震わせながら。
 
時には嗚咽も聞こえてきた。
 
 
 
 
 
 
父は死んだんだ。
 
 
 
 
体にすっと入っていく父の声。
 
いつも抱きしめてくれた大きな手。頭をなでてくれた、大きな手。
 
私とよく似た額。
 
ひげの生えた顎。
 
 
 
 
もう声も聞けない。抱きしめてもらえない。頭を撫でてもらえない。
 
私とよく似た額に触れることもない。顎のひげを触らせてもらえない。
 
 
 
 
 
 
 
父ハモウイナインダ
 
 
 
 
 
父は骨になってしまった。
 
もう父が生き返ることはないんだ。
 
 
 
 
 
父の骨は太く、とても白かった。
 
怖くなかった。愛しいとさえ思った。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
年月が経つのは早いものですね。
 
 
 
私はもう高校1年になりました。あれから6年の月日が流れたのです。
 
 
 
 
大好きな父へ
 
 
私は元気でやっています。母も少しは立ち直ったみたいです。
 
けれども少し、寂しいです。
 
大好きな父へ。私のただ一人の父へ。
 
私があなたを忘れることはないでしょう。
 
 
もし母が再婚することになったとしても、あなたは笑って祝福するでしょう。
 
いつも見守っていてあげてください。
 
母は今でもあなたのことを愛しています。
 
大好きだと。
 
私もあなたを愛しています。
 
誰よりも、誰よりも
 
 
 
 
 
 
 
 
                     たま



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