えるちゃんの砂糖(仮)1.


『えるはピカピカの大学一年生!学校で友達つくるんだ』

☆☆☆

(ライトと一緒に学校行きたかったのにな)
ホテルから出たLは小さくちぇっと言って足元の小石を蹴飛ばす。
せっかくリムジンをキャンセルしたのに月本人に断られてしまったのだ。
だって友達じゃないの?って詰め寄りたかったけどライトが気を悪くしたら嫌だからぐっとこらえた。せっかくできた友達なんだからタイセツにしないと。
「…ふふ」
(「友達」だって!きゃー!)
つい、Lは笑みを漏らす。
実は誰にも、ワタリにさえ言っていなかったのだがLは前から友達が欲しかった。特殊な環境下で育ったために友達と呼べる人はまわりにいなかったのだ。
くだらない話で盛り上がったり、一緒に登下校したり、相手の家にお泊りしたり。
町行く同じくらいの年の子たちを見掛けては爪を噛んでいた。
なんて羨ましい!
(でもでも!)
しかし今は月が友達だ。
月はたいへん頭がいいからきっと話もあうだろう。
(ふふふ!)
そう思うとうきうきしてLは知らず口が緩んでしまう。傍目ではまったく気付かない程度ではあったが。

校門に入ると前方に月らしき人物が歩いていた。
(ライトはっけーん☆)
Lは心持ち顔を綻ばせた。自然と早足になる。
ライトー!っていいながら走っていって抱き着きたい衝動に駆られる。
(でもダメ!ライトに嫌われちゃう!)
Lはかすかにふるふると首を振る。
だってまだライトって呼べてない。敬語癖さえ治ってない。
「…っら、らっ、ライ…!」
ちいさなその声では誰も振り向かない。
どもる。赤面する。恥ずかしい。
心の中なら言えるのに。
そう思ううちにLと月の距離は縮まっていく。
(「おはよー!ライト☆」って…)
「おはようございます夜神くん」
ひょいと斜め前にでてきたLに月はちょっとびっくりした顔をした。Lと視線をあわすと顔を綻ばせる。
「あぁ竜崎…いや、流河おはよう」
好青年のさわやかな笑顔で月は挨拶を返してきた。それから二人して前を行く。
(ああん!えるのばかばかぁっ!)
今日もライトって言えなかった!
そうしてLは今日も、誰にも知れずに心の中でハンカチを噛み締める。

Lの頭のなかに(おー手てーつないでー♪、と)バックミュージックがかかっているのは月には内緒(☆)である。
(あぁ、でも歯痒いっ。今すぐにでもよびたい…ライトって。そして手とか…手とか…繋ぎたい!でも手を繋ぐのは保育園児くらいまでかなぁ…流石に大学生で手はなぁ…)

「そういえば流河」
月がLに話しかける。
(でもいいよね?繋いだことないって言ったらきっとライトも仕方ないなぁ、とか言って、それで、それで、手…手をつな…つないで…)

が、Lは妄想を爆走させていたためその呼び掛けは耳に入らない。
「……流河?」
流石に不振に思った月が肩を叩いた時にやっと気付いて、小動物のように体をびくっとさせて、後ろを振り返る。
「…何ですか?(んっきゃー!いつのまにかライトを追い越しちゃってる!最悪!)」

「流河……大丈夫か?歩いて来たから少し疲れてるんじゃないかい?」

(はっ!ライトがちょっと困った顔をしている…そしてさりげに歩いて来たってことも気にかけてくれているっ!)
けれどLは嬉しさを表にださず、答えた。一生懸命、仲良さげな会話をするため思考を働かせても出てくる言葉はいつもの反射的なもの…いつもならうまいこと言うのに友達と意識すると言いたいことはなかなか言えない。
「…あぁ、すみません。少し考え事をしていたもので」(大丈夫っていいたかったな…それかなんで一緒に来てくれなかったの?っていいたかった)

「へぇ、流河が甘いものなしで考え事するなんて珍しいな」
「あぁ、そうでした(ライトのこと考えるときに甘いものなんていらないけど、でもせっかくライトがいうし食べようっ☆)」
Lがズボンの右のポケットからごそごそとポケットから飴をとりだすと、月はそれに呟いた。
「…常備かい?」
「えぇ常備です、驚きました?」
「いや、そんなことだろうと思ったよ…」
(わらった〜!ライトが私の台詞にわらったー!)
そういうふうに月がふふっと笑うだけで嬉しくなってしまう。それだけで鼻血ものだ。
それが苦笑だとはまったく気付けない…Lは彼にとってはにこやかに(彼にとっては=凡人にはわからない)こたえる。
「チョコレートは体温で溶けますから、ポケットには入れられないのが残念です……そういえば夜神君、さっきは何を聞こうとしてたんですか?」
「あぁ、流河は今日どうして学校に来たんだろうと思って」
「…それは(ライトに会うためなんだけど)……息抜きですかね」
「はは、息抜きか。周りの人が聞いたら激怒しそうなセリフだな」

沢山おしゃべりをしながら歩くと、気付けばもうそこは既に教室前。今日はLも月も同じ授業が朝からある日だったのでそのまま教室に入る。

「夜神クン、おはよ〜」
「おはようございます、流河君」
話題の首席二人はそれぞれいろいろな人に挨拶をされ、月はそれをにこやかに返し、Lはどうも、と返したが実は心はドキドキしながら葛藤を繰り広げていた。
(どうしよう…隣に座りたい…ライトの隣に…でも嫌がられたらやだなっ!あ、それに監視されてるって思われてそうだし…やっぱ真横は…駄目だな)
意外と早く決着がついて、いつもの真ん中ちょっと後ろに座ろうとしたとき…。

「流河、隣に座ってもいいかい?」
「…えぇ。どうぞ」
(え?らいと?ライト自ら横に…すわ…ぇええぇえ……………ぶちっ)

…予想外の展開に驚きすぎたらしいLの妄想回路は、とうとうショートしてしまった。

思考回路は〜短絡寸前〜♪(もうしてるけどー)





(…息抜き、ね)
月はノートを書く手を止め、猫背でいつもの不思議な体制で横に座るLをみた。
自ら監視しにくるのもおかしい話だと思って、でも今日はあえて近くにいたほうがいいだろうと思ったが、教科書もノートも開かずお前はあきらかにやる気がないな…何をしてるんだと思ってみれば。
「コイツ、この体制のまま寝られるんだな」
リュークのつっこみに月は溜息をつくしかなかった。
(目は開いてなくてよかったよ…)
とりあえず、今はノートでもとって気を紛らわしていようと思った。


2004/07/26
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