リレー小説(13)
…学校行事の料理大会に何の裏が必要なの?
でも料理大会なんて普通の学校行事にしてはふざけすぎてるものね、裏があって当然…っておかしいって。
「そうですね裏は…この学校にいる「関係者」が全員参加する舞台の為」
「何故、料理なのよ?」
生徒会長の答えに、琴音がやっぱりお茶をすすりながら返す。
「だから目的は「関係者」の全員参加だからね。何故か「関係者」は料理となにかしら繋がりがあるらしいからね…偶然にも都合良く」
さっきから、関係者関係者何なんだろう一体。一体何の関係者?
もしかして、敵とか争いとか何とかの…関係者?
そんなあたしの疑問をほっといて3人は会話を続けてしまう。
「偶然にも都合良く…ね…あたしには貴方が裏で手をひいているように思えましたけど?」
「そうなのかい?」
「僕はそんなつもりはなかったんですけど…ただ、あえて言うなら…因縁ではないかと思うんですよね。料理への」
「因縁…」
「因縁ね」
琴音と一緒に呟いたカイ様が、ふとあたしを見た。
「知白は琴音が料理部に誘ったのかい?」
「ううん、違うわ、ねぇ知白」
いままでずぅーっと3人で話していたのにいきなり話をふられて、いままで「関係者」について考え事をしていたあたしは慌てて返した。
しばらく口を開いてなかったからか無駄な緊張のためかわからないけど変な声になってしまう。
「う…ぅん、そのときは…入学当初はあんまり琴音と喋らなかったし…あたし料理好きだからずっと入ろうかと思ってたし…」
あたしの言葉に生徒会長がにっこり笑って呟く。
「そちらも…因縁ですかね?」
生徒会長があたしの目を探る様にじーっと見てくる。
「はぁ……?」
因縁ってなんだよ。意味が分からないんですけど。
「まあ、そうかもしれませんね」
カイ様が苦笑しながら言った。
た、助かったぁ!
生徒会長の目によって硬直してしまったあたしは、ほっと息をした。
「それにしても、ものすっごい強い因縁だこと」
琴音がすっごく嫌そうな顔をしてぼそりと囁いた。
独り言だったろうにそれはしんと静まり返った部屋の中で、響いて聞こえたのだった。
……。また生徒会長室は静まりかえった。誰も口を開かない。
琴音がやばいという風に眉を寄せる。
怖い、怖い、怖いっ!
真夜中の学校にいる以上に怖い。
何が怖いかって、そりゃあ和やかだった空気が一変してどんよーりとした、やりきれない空気になったからだ。
何よ、この葬式のような暗ーい空気は!
もしもあたしがこの中に一日中いたら何もやる気のおこらない人になるっ!絶対に!!
「それで、チーム分けの紙はこれです」
そういって、生徒会長がたくさんある中から一枚の紙を取り出した。
トーナメント表にはチーム名しか分からなかったが、それにはチームの名前に、参加者全員の名前、学年、クラス、出席番号、それからなぜか生年月日から血液型、趣味特技まで書かれていた。
「あの、最後の方は必要あるんですか?」
琴音が不思議そうに訪ねた。
そこには琴音やあたしの分も書かれている。
「いいえ、関係ありません」
生徒会長がやけにきっぱりと言った。
おいおい。なら必要ないじゃん。
心の中でつっこみなんか入れてみる。
「でも詳しく書かれていたほうが、その人の事をよく知れて応援するにも熱がはいるでしょう?」
…いや、そんなことないって。
またまたつっこみを入れたいところだったけど生徒会長のやけに自身満々の笑みにそれはやめておいた。
「これはこれは、たくさん書いてあるね」
呆れかえっているあたしをよそに、カイ様が心底感心したように言った。
「えぇ、うちの生徒会にたまたま情報収集に長けている子がいまして」
いや、だからってこんなことしなくても。
「へぇ、これでより白熱した試合になるだろうね」
心の中で頭を抱えてるあたしを尻目にカイ様はやはり感心していった。
え?何で共感してるの。
やっぱりこの人たちなんか感覚おかしいよ。
ここにいたらあたしもおかしくなりそうだ。
こんな人たちがこの学校を支えていて大丈夫なのかな。
影響力だけは強いみたいだけど。
「さて、話すことはこれくらいですね」
生徒会長がちらちらとあたしの方を見ながらカイ様に言った。
え?何?あたしの顔に何かついてる?
するとカイ様まであたしの方を向く。
「知白、何か言うことはないかい?」
「はぁ?」
何かって…何?
何であたしに意見を求めるの?
いつの間にこれは会議になった。
「え?え?」
混乱してるうちに、いつの間にかしんとなった部屋の中で期待に満ちた三人の目があたしに集まる。
何故かガラリと変わった空気。
また、あたしだけがわからない。三人の持つおかしな感覚。
何を求めている。何を引き摺りだそうとしている。
何を?…「誰」を?
『知白』
『ごめん、知白』
「知白!」
突然椅子から転がり落ちそうになった「知白」にとっさにカイ様が手を差し出す。
「や、心配ないよ。甲斐」
すんでのところで体勢を立て直した「知白」はカイ様に悠然と笑いかけた。
「…クスキ(仮)様ですか?」
確かめるようにゆっくり話しかけるカイ様。
それを見ていた生徒会長が腕を組んで息を漏らした。
「やっと出てきましたか。遅いですよ」
「そうよー、何度出てきやすい空気を作っていたの思うの?」
クスキ(仮)と呼ばれた知白が、ふふふ…と笑う。
「いやっはっははーごめん。なんてったって知白の体ダシー!出て来ていいかまよっちゃっテー」
…いや、なぜ口調が微妙。なぜ語尾がカタカナ。というかなんか全部間違っているような気がする。
なんだか情けなくて琴音はフゥ…と溜息をつく。そんな彼女にクスキは引き続き微妙な口調で、「琴音ったら何よその態度はァ」とか言う。
それになんだか生徒会長が珍しく焦りながら、口をひらいた。
「あの〜なんか記憶と激しくキャラが違うと思うのは僕だけですか…?」
「気にしないで。おおやけに出てくるのが久しぶりで、はしゃいでるだけだから」
琴音がにっこり笑みを浮かべながら言うと、真っ向に相手にしてもらえなくて飽きたのか、せっかく知白になりきろうとしてたのに。仕方がないなぁ普通に振る舞えばいいんだろ普通に。まったく相変わらず簡単な冗談が通じないメンバーだね。とかぶつくさ言って椅子に座り直し、さっと髪を翻す。
仕切直し。ということらしい。
「ふぅん料理大会…ね」
何か言うことはないか、と先ほど尋ねられたクスキはそう呟いて生徒会長を見る。
先程の視線とはまったく違う、優しさがまったくなくて鋭くてだけど人を引き付けるようなそんな目で見て。
そして呟くのを続ける。
「料理のお題はもちろんカレーだよね?」
「……別にカレーじゃなくてもいいんですが」
生徒会長の反応が遅れた。
いつもなら人をからかう時、ものすんごく楽しそうに言うのに、今日は笑顔が引きつっている。
この人も可哀想に……。
琴音とカイはその時、同じようなことを考えていた。
いったい何年生きてきたのか。何十年という単位ではない。何百年生きてきたこの頭のおかしい、愉快犯を相手にしなくてはいけない。
あはは、同じ立場なら絶対ヤダ。
多少の言葉の違いがあれども、二人ともやはり同じようなことを考えていた。
「ん〜、それは困るねぇ。いやいや、私はいいんだよ、それでも。しかしだな、困るねぇ。いや、それも楽しいか」
なんだかわけの分からないことを呟いては一人できょろきょろしている。
どうやら誰かに助言して欲しいらしい。
しかし誰も目を合わせようともしないので、話が進む様子はない。
全く、生徒会長も生徒会長だ。
もうすでに決定したことを揺らぐようなことは言わないで欲しい。
この人は、決定したものを覆すどころかマイナスまで戻しかねないのに。
そんなことになったら今までしてきたことは何だったのか。
あんなにも真剣に馬鹿馬鹿しいことを考えた、あの苦労は!!
「しかし、みんなちょっと見ない間に大きくなったものだね」
クスキ(決定)の言葉でいきなり話がずれた。
「ええ、最後にお会いしたのはだいぶ昔のことですから」
生徒会長が苦笑しながら返答した。
「昔、ねぇ。時が経つのは早いものだね」
クスキの目はその時、昔を振り返っているようだった。
ここにいる人間では知る事のない昔を。
この人にしてみればあたし達が大きくなったからって、さほど昔のことではないのだろう。
結局、この人の時間は止まったままなのだから。
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