リレー小説(5)





「知白、朝よ!いつまで寝てるの」
また、か。
今日は何かあったっけ。
「ほら早く!今日は部活でしょう?」
「うん、わかった」
「……」
あたしがベッドからすぐ出ると何故か母さんは驚いていた。
「何?あたし、何か変?」
「うん変よ。低血圧のあんたがそんなのすぐ起きるなんてね」
ニコリと笑われる。
「ふぅん。そうなの?」
そんなこと、知らない。
だってあたしは現にこうしてすぐに起きれたし。
「そうなの?・・・って、あんたやっぱり変だわ。熱あるの?」
「別に…」
熱はなさそうだけど目は重たい。
変な異物感がある。どうしてだろう。
「なら…部活はいけるわね、ほらしゃんとしなさいしゃんと」
母さんが心配させないでよという風に言った。
「母さん」
まだ何かあるのかと振り返られる。
「あたし………何部だっけ?」
「………」
母さんがまばたきを繰り返した。
「知白!?あんた昨日プールに行っておぼれたの!?それとも頭打った!?……とっとりあえず病院……!?」
母さんはかなり慌てた様子で下に降りて行った。
……あたし、何か変な子と言った……?
とりあえずブカツブカツ♪
制服に着替えた。あたしの中学校の制服はけっこうカワイイ。
紺のブレザーに赤くて細いリボン。あたし的にリボンがお気に入りだ。
――――――ドタドタドタドタッ
「知白、着替えてちょうだい。出かけるわよ」
「え?どこに?」
気持ちよくリボンを結んでいると母さんがものすごい勢いで部屋に来た。
「……ドコって。病院よ………?」
さっきの勢いはどこへやら。
母さんの頭の上にクエスションマーク(?)が浮かんでいた。
「…病院?どうして?あたしこれから部活なのに」
「あんた、何部かわかるの?」
「…はぁ?あたしは家庭部でしょ?母さんこそ何言ってるの?」
「え……いや、そうね。うんうん。いってらっしゃい」
「うん……?ごはん…」
「あ、そ…そうね。じゃぁ下に来なさいね」
そういって母さんは下に降りて行った。
クエスションマークは五個ぐらいに増えたみたいだ。
しきりに首をかしげている。
――――――あたし変なこと言ってないよね?母さんどうしたんだろう?
髪をときながら考え込む。
――――――チャンチャチャチャンチャーン♪
いきなりエレクトリカルパレードがながれ始めた。
しかも最新(?)の16和音で。
……あたしケータイ持ってたっけ?
何故か机の上に置いてある、黒くて二つ折りのケータイに出てみる。
「……もしもし?……」
『もしもし。知白?あたしだけど』
あたしって誰?そんな声聞いたこと無いんだけど。
「……」
『えーと。覚えてないのか』
電話口の相手がなんか呟いた。
『川原琴音ですけど。……あの、同じクラスの、同じ部活の』
「かわはらことね……?」
一音一音確かめるかのように復唱する。
『……そうよ』
「……」
『……』
沈黙が続く。
「何いまさら自己紹介してるの?琴音」
あたしは眉をひそめる。
―――――――ガタガタッ。
電話ごしに琴音のくずれる音が聞こえた。何でだろ?
「琴音、なんか変よ。まぁ、変わってるって事は前から知ってたけどさー」
返事はなかった。やっぱり今日の琴音は変だ。とりあえず話を聞くことした。
「で、何か用?琴音」
『今日、部活があるのは知ってる?』
聞き返されてしまった。
「そんなこと、知ってるわよ。まさかそのこと聞くために電話したの?」
みんなあたしを馬鹿だと思ってんだろうか。どの程度のこと、忘れるはずがないじゃない。
『ううん。違う。今日の朝、路香からあたしに珍しく電話があってね』
「みちか…?……路香から琴音にって珍しいの?」
一瞬顔が思い出せないような気がしたが気のせいだろう。
琴音の疲れたような声が受話器から聞こえる。
『珍しいのよ。……あのね知白、悪いんだけど。これから私の言うことどんな疑問があっても口を挟まないで事実だと思ってね』
「何言ってるの?琴音の言ったことにさっきから一度も疑問なんて感じてないよ?」
『…ならいいわ。それでね、路香がいきなり新学期に入ったら料理大会が生徒会の運営により行われるらしいなんて言うからびっくりして電話かけちゃったんだけど』
「…それで?」
『何で路香がそんなこと新学期にもなってないのに知ってるんだろうって思ったんだけど』
「…それで」
『…じゃぁ、知白がなにか思ったことを答えてくれない?』
「楽しみだね」
『…はい?』
「料理大会」
『楽しみって…そりゃそうね…』
「じゃあ、今日も頑張って部活しようね」
『え……あ……うん』
なんだか頭がぼうーっとしてる。
別の記憶が…?あの時みたいに。
――――――あの時?いつ?いつのこと?
「頑張ろうね。琴音。僕たちの未来のためにも。ふふふっ」
『知白っ!?あんたどうしたの!?』
「え?何が?」
『――――――っ。そう……覚醒が早いわね』
「え?改正が何だって?」
『ううん。なんでもないの。知白、今日も一緒に頑張ろうね。期待してるわ』
ブチッっと音がして電話が切れてしまった。
ツーツーツーツーと機械音だけが流れている。
知白は首を傾けた。
何か忘れているような気がする。何だろう?
「あっ。ごはん!!」
ケータイをかばんに入れて知白は下に降りて行った。



「もしもし。ナツメくん?……ええ。琴音です。カイ様に伝言なんだけど」
ノートパソコンの前に座っているのは琴音だ。
朝なのにカーテンを閉じたくらい部屋でパソコンだけが起動している。
「え?メールで?そう分かったわ。じゃぁね」
ニ、三分キーボードを触ってノートパソコンを閉じてしまう。
はぁー。
首をぐるぐる回して、ポツリと呟いた。
「学校行かなきゃ」



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