9/12
閉鎖すると言うておきながら、どうしても筆を執りたい一瞬がある
今のオイラを、どうぞ許して下さい。
そんな一日でした。

来週は彼岸。
休みが多いと逆に忙しくなる。それが接客業であり、そこに卸売
している業者も例外やのうて、休日出勤もザラなんや。
しかも今はダブルジョブで、和食屋の運び屋もしとる。

せやから一週間繰り上げての墓参り。
先祖の墓は来週行けるから、今日は報告も兼ねて一人旅。
久々に顔を出した親友の墓標は、それはもう目を当てられず…
猛暑と程よい雨のせいだったのか、雑草がぼうぼうと覆ってた。


親友の名前、まだ言うとらへんかったっけ。
あまり聞かない名前やったけど、もじって「ケン」て呼んどった。
ケンのご家族には、オイラもよう世話になっとった。
その恩返しって程でもあらへんし、それに色々と事情があって
この時期の掃除はオイラがやっとる。

ぶつぶつ他愛も無い独り言を言いながら、黙々と草を抜く。
庭師になった気分で、植木の伸びた所を不器用に切りまくる。
墓の名前にこびりついた汚れを、歯ブラシで磨いて取る。
ほうきでゴミを集めて、捨てるついでに売店に寄る。

花を添えて、ワンカップ(て言うても割とええ所の酒やで)を
墓の中央手前にそっと置く。
煙草に火を付けて、墓の囲いに座ってポカリ飲んで一服。
暑かったから酒で乾杯したい所やけど、車やしな(笑)

線香にジッポーで火を付ける頃には、もう30分以上経ってた。
そんな彼岸も今年で7回目。


「俺さぁ、今な、一人ぼっちを楽しんでんだ」

高3の夏休み前の頃やった。オイラが腰をやられてた頃。
右足が義足のケンは、病室のオイラにそう言った。
なんやねんな急に…と思った。

部活もやれない、つるむ奴もいない、勉強もあまりしない。
部屋で一人。気の向いた時に本を読んだりエロい事をしたり。
義足で移動が大変なはずやのに、一人で俺の所に来る。
そういう一連の一人旅が、やけに楽しいと言うんや。
バイクより、義足の方が色々と景色が見えて楽しいと。
一人ぼっちはツラくなんかねぇ、と。

珍しく反論したね、オイラは。
そんな奴は強がりでしかない。常に誰かを求めとる。
一人で考えられる事なんて大した事ない、って。それに…
「なにがどうなっても、たった一人だけの奴なんて居らへんわ」

そーかぁ?って笑ってたな、ケンは。
お前には一人は友達が居るやんけ、とは言わんかった。
その時は照れくさかったんやと思う。多分。

そのあとのコトバ、まだ俺は忘れとらへん。
最初で最後の、オイラの中の人生を変えるほどの。


「まぁな、俺にはお前が居るさ」

俺もケンも笑った。それ言うてみぃ、って俺は更に笑った。
学校ではダンマリのケンが、そんな事言うとは思わなかった。
笑いながら俺は、凄く熱い気持ちになった。
いいしれないほどの、感じた事の無い、そんな熱い衝動。


この墓標に立つ度に、その衝動がじんわりと包み込む。
冷えきったもの全てが熱くなるような感じ。
男同士の友情にしかない、粗削りで不器用で、確かな愛情。

「一人ぼっちはツラくなんかねぇ」
あぁ、そうや。一人は決してツラくなんかない。けど…
最近分かったんやけどな。


「独り」ぼっちは、寂しい。


人は、何かをこの世界に残す為に、そのプライドを光らせる。
技術を、学問を、子孫を、愛情を。様々な形で。
例え死んだとしても、別れがあったとしても。
誰か一人にでも、その記憶の中に何かを残す為に。

ケンは独りじゃない。今なら言える。俺の中にずっと残るから。
オイラは…どうなんやろな?お前の中に残ってっか?
ってか、オイラの事を決して忘れない人は居るんかなぁ。
そしてこの先、そんな人は現れるんかな。。


鼻で笑って、自分を無理矢理に車に乗せた。
なんか申し訳ないけど…ケンとは違って、俺はまだ生きとる。
仕事も勉強もゲームもセックスも、多分何でも出来る。

恋愛沙汰も、きっとまた出来る。
つーか、俺は決して孤独じゃあないんだ。きっと。


車に乗った頃には、墓に着いてからもう1時間を過ぎていた。
いつもこんな感じや。あいつと話しとるとキリがない。
ぬるくなったポカリを一気飲みして、車を出した。

家に帰り、今これを猛スピードで打ち込んどんねん(笑)
これから、ネットで最近知り合った人の元へ車で行くんや。
最近は、人に求めて会う事が億劫になってたんやけど…
今はもっと色々な人に会うほうがええんかなって考えたから。


いや、考えられるようになったんや。今日からは。





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