衝動
路地の水分が凍りつくほどの夜風を一身に受けて

ただまっすぐに 斜め20度の姿勢で歩き続ける人々の間を

ことごとく縫う風に乗るシルフのように 息を切らして走る僕は

他の誰よりも たった今この時においては


幸せ者だったのだろう


もうすぐ、君に会える。

ただひたすらに その衝動だけが 僕を突き動かしていた

無情にも時を刻む 腕時計の文字盤をちらちら見ながら

退屈そうに ネオンで照らされた星の無い空を仰ぐ

そんな君の仕草を想像しながら


ふてくされた顔に安堵の表情が浮かび

ただ正直に 笑みを隠せない君が僕に飛びつく

お決まりの台詞を言う前に 僕は 少し汗ばんだマフラーごと

君の冷えきった腕に包み込まれていた


気づいた時には 既に僕のカケラなんて何にも無くなっていて

ただひとつだけ 君しか残っていなかった


僕の中に君さえ居れば

君さえ居れば

ただ性懲りも無くリフレインする


君の創った 真冬の蒼い衝動





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