『夢の共演』裏話



「お父様の誕生日パーティーに歌をうたってあげたいの。クリフト、協力してくれる?」

「もちろんですとも。けれど珍しいですね。アリーナが公の場でそのようなことをされるなんて」

「あのね、堅苦しいのはやっぱり嫌いよ。でも、お父様には喜んでもらいたいの。
 それにたまには、私だってお母様の娘なのよってところを見せなきゃね♪」

クリフトは微笑する。
確かにアリーナの母は、音楽の才に長けているところがあった。
在りし日には、アリーナと自分にピアノを弾き聴かせてくれたこともよく覚えている。
“でもそんなに気にしなくても…”
彼女は確かにお転婆だけど、やっぱり母親似だと、皆知っているのに。
容姿も、才能も、そしてその優しい性格も。

そして当日。
もちろん、クリフトには楽譜は必要ない。他人の合図も。
アリーナの仕草と、互いに見交わす視線だけで、
巧みに音を操り、彼女が望むように演奏する。

豊かなピアノの音色と透き通るようなソプラノが見事に溶け合って。

その日一番の喝采を浴びたのが、彼女たちであることは言うまでもない。



Fin.