『時には空を見上げて』


「やーっ!」
ぐしゃっ!!!
アリーナの会心の一撃が決まり、最後の魔物はゆっくりと倒れていった。                

「よーし、それじゃ今日はこの辺で野営とするか」
リーダーである勇者の一声で、
今日も、いつもと同じような一日が終わりを告げる。

それぞれが助け合って準備を進めていくなか、
水を汲みに出たアリーナは、ふと空を見上げた。
そのまま、彼女は桶を傍らにおいて腰を下ろす。
視線の先には真っ赤な夕日。

それは、いつもと変わらぬ美しさ故に、彼女の思いを過去へと誘う。

昔は、よくこんなふうに庭や自分の部屋から夕日を眺めていたっけ。
あの頃は、わたし、外へ出たくて出たくてたまらなかった。
お城から抜け出して、連れ戻されて、怒られて…、
不機嫌のまま、ずっとずっと空を見上げていたこともあったっけ。
夕日の向こうのその先の世界へ行ってみたくて…。

でも、こうして皆がいなくなるまでは気付かなかった。
そんな毎日ですら、本当は幸せなことだったんだね…。

「お父さま、待っててね。きっと、助けてあげるから…」

アリーナは、そっと空へ呟く。
そんな彼女を、太陽は茜色の光でやさしく包み込んでいった。
まるで、彼女を力づけるかのように。

やがて――――
アリーナは立ち上がり、仲間たちの元へと戻っていった。
いつものように、元気いっぱいに。     


画 ぼのらも様 



Fin.