「星影」
「次週日曜、課外授業を行う、場所はプラネタリウム。参加希望者は?」
先生が授業のはじめにそう、切りだした時私は迷わず手を挙げた。
入学してからやっと少し慣れたけど、まだまだこの街にも知らないところの方が多いし、
何より先生のことをもっとよく知りたいと思ったから・・・
最近私、すこし変かも?気がつくと先生の姿を目で追ったり、挨拶するのがちょっと恥ずかしかったりしてる。
日曜日は少し雨まじりの肌寒い日だった。
私たちは先生に引率されて、静かに場内に入場し着席する。
私の席は先生の隣。居眠りなんか絶対できなさそうな席だ。やがてアナウンスが流れプラネタリウムがはじまった。
映し出される満天の星・・・(そういえば・・・と私は考える)
田舎のみんな元気かな?
私が中学を卒業するまで過ごした、あの海辺の小さな街。
はばたき市のように賑やかでもないし、高いビルなんてあまりなかったけど、
何よりも空気が澄んで、星空がきれいだった。
泣きながら、何度も何度も手を振って見送ってくれた友達の顔が浮かんでくる。
思わず涙ぐみそうになって、あわてて目をこする。泣き顔なんて先生に見せられないもんね。
プラネタリウムに集中しなきゃ、集中、集中・・・
ハッと気づくと、閉館を告げるアナウンス!!(やばい〜私寝ちゃったんだ〜どっどうしよう・・・)
恐る恐るとなりを見ると苦虫を噛み潰したような先生の顔。怒ってるんだろうなあ・・・
「あの、すみませんでした。私寝ちゃって。他のみんなは?」
「とっくに帰宅させた。全く君は・・・」(ひい〜ごめんなさい、ごめんなさい〜)
「家まで送ろう。早く私の車に乗りなさい。」(???)
てっきり反省文十枚!と怒鳴られるのを覚悟していた私は少々拍子抜けしてしまった。
車の中で私は思わず先生に聞いてしまった。
「どうして起こさなかったんですか?」
「何度か起こしたが、君は起きなかった。それだけだ。」
そう、起きなかった。いや起こせなかったというべきか・・・。氷室は反芻する。
軽い寝息にはすぐに気づいた。揺り起こそうと肩に手を置いた瞬間、君はつぶやいたのだ。
「帰りたい、帰りたいの。・・・この街は・・・星が・・・すくなくて・・寂しいよ。」
見れば目元には涙がにじんでいる。転校してきて気持ちが張りつめていたのだろう。
学園での君は、明るく友達も徐々に増えて学園生活を楽しんでいるように見えたというのに。
私は担任でありながら、君の内面の寂しさに気づけなかった。それがショックだった。
「まだ、時間は大丈夫か?」先生にそう、聞かれて少し驚いたけど思わず頷いてしまった。
先生の車は市街地を抜けてどこへ向かっているんだろう?街の灯りが遠ざかる。
(はばたき山方面・・?)案内表示が一瞬目をよぎった。
小高い山の中腹の駐車場で車を止めた先生に促されて、私は車から降りた。
風がひんやりとしてとても気持ちがいい。
「こちらに来なさい。暗いから、足下に気をつけて。」
先生は駐車場から少し離れたところにある階段を上り始めた。結構キツイ、息が少し荒くなる。
「もう少しだから頑張るように、さあ・・・」先生がそういいながら私の手を取り、再び階段を上り始めた。
「!?」自分の顔が火のように赤くなっている気がする。(暗くてよかった。見られたらもっと恥ずかしい)
数分後、展望台のような場所に着いた。
「上を見るがいい。」そういわれて素直に夜空を見上げて驚いた。
街中では考えられないような美しい星空が広がっている。月もないのでより鮮やかに星々が見えた。
しばらくぼ〜っと眺めていると先生が言った。
「少しは寂しさがまぎれたか?この星空は、君の田舎の星空に少しでも近いだろうか?」
びっくりした・・・。先生は私の心が読めるんだろうか?寂しいそぶりなんて見せたつもりなかったのに。
「頑張りすぎなくてもよろしい。寂しいのならそう、口にすればいい。誰かがきっと君を支える。」
ちょっと感激してしまって言葉が出ない。頷いて、微笑むのが精一杯。
「さあ、だいぶ遅くなってしまった。戻ろう。」先生が私の手を取ったまま来た道を戻り始める。
先生、先生。ホントにきれいな星空を見せてくれてありがとう。
もっともっと、先生のことが知りたいです。
このままどんどん気持ちが先生に傾いて、好きになったら許してくれますか・・・。
凛とした星空。私が先生と一緒に歩いた初めての夜。
fin.