キャアァァ!という悲鳴。
ドアノブから手を放しすぐに振り向く。
そこには接触した二人が立っていた。
クレミィとゾディエ。
奴はクレミィを掴み左手で抱きかかえ右手で彼女のこめかみに
銃口を突きつけている。
「ゾディエェ!」
俺は叫び、走った。
(クレミィまで殺させてたまるか!
 くそっ、どうして止めを刺さなかった?
 どうして奴の所持品をちゃんと調べなかった?
 あの時奴が隠し持っていてもおかしくないと気づいたのに!)
俺と奴の距離が近づく。
だが、近づくにつれて分かった。
あれはクレミィの銃だ。
銃身が妙に短い、女性用のものだ。
俺が足で地面をける度、左手が悲鳴を上げる。
その悲鳴は俺の神経をつんざき力を奪っていく。
だが、立ち止まれない。
ここで止まったらまた後悔することになる。
俺はもう失いたくない!
俺があと数歩地面を蹴れば奴に飛びつける
そのあとはどうにでもなる。
奴の腹を叩いてやれば奴はもがき苦しむだろう。
今だって立っているのがやっとなはずだ。
俺が手を伸ばす。
もう少しで届きそうな....気がした。
ドゥン!
鈍い低い音が轟く。
銃声であるのは疑うまでもない。
奴の銃口からは白い煙が立ち上っている。
では、クレミィは既に死んだのか?
何てことだ、走ったのに。
彼女を助けようとしたのに。
くそ、どうして俺は...。
うなだれた首を持ち上げる。
これだけでもかなりおっくうだ。
完全に疲れ切ってしまった。
俺のしてきたことの意味を全て否定されたようだった。
そして、俺の目はクレミィを捉える。
彼女はこっちを向いて叫んで、手を伸ばし、泣いていた。
(何で泣いてるんだ....?)
だが、彼女は生きている。
では、銃弾は何処に?
俺は腹を伝う奇妙な感覚に気づいた。
右手を腹に当てる。
手にまとわりつく嫌な感触。
何度か経験のあるどうしても好きになれない液体。
「え....?」
その弾は....俺を貫いていた。
そう気づいた瞬間、身体に激痛が走る。
口からは大量の紅い血が流れ出し止まることを知らない。
思わず右手で口を覆った。
指の間から流れ落ちるモノは地面に吸い込まれ、
逆にそれを黒く染めている。
(ヤベェ...俺、シヌかも...。)
「ルクス!」
クレミィの叫ぶ声が遥か遠くで聞こえる。
意識が遠のき俺を遠くから見ている。
痛みは既になかった。
ただあるのは身体を襲っている脱力感、だるさ、吐き気。
俺はその場にうつ伏せに倒れた。
いや、倒れたのかどうかも分からない。
既に平衡感覚などなかったのだから。
そこが本当に地面だったかのかも...。
血は惜しみなく流れ出て、俺の周りに池を形づくる。
常人なら生きていないほどの出血。
いや、俺も常人だから
間もなく死ぬだろう。
こんなくだらないことさえも考えたくなくなってきた。
思考が薄れる。
今感じるのは熱さだけ。
さっき身体を覆っていたものさえも今はもう感じない。
あの女の熱など比にならないほどの熱さ。
(悪い...ルナ..。約束....守れない...。)
俺は挫折感を味わいながら、ゆっくりと、できる限りゆっくりと
鉄で出来ているような重いまぶたを..閉じた。

     day after days
風が俺の髪の間をすり抜けていく。
微かな草の匂いだけ残して。
透明な透き通った風だった。
丘の上から村を見下ろしていた。
全員が協力して村を立て直しているために思ったよりも早く終わりそうだ。
カスナの滝に到着したのは村人の半数に満たなかった。
老人子供が多くいなくなった。
戦闘や現実を逸脱した環境に耐えられなかったのだ。
ババァも森の中で死んだ。
今、俺の前には黒く光る3つの板がある。
地面対して直角に建てられあちら側が透き通って見える。
それは黒曜石から切り出した3つのグラーブ。
名の刻まれていない飾りのグラーブだ。
光を反射して村を見守っている。
俺の後ろには倒壊した家があった。
元長老の家。
そして、俺の大切な人の家でもあった。
今考えれば、よく生き延びてここに立っているものだ。
あんなことがあったというのに...。
     *  *  *
(もうダメだ...意識が...。)
死ぬのか?
(どうやらな...。)
それで本望なのだな?
(そんなわけない!..でも...。)
ならば、目覚めるのだ。
(なんだと?..一体何のことを言ってるんだ?)
汝の中の強大なる<Mystic Force>よ。
(俺の中の..<Mystic Force>..だと?)
汝の抱える絶大なる<Mystic Force>よ。
(ちっ..分かったよ、もう一度だけ...。)
俺は身体に力を入れた。
何処も動きそうにない。
腹と左手が際限なく痛むだけ。
(ルナ...力を貸してくれ...。)
俺はもう一度目を開こうとした。
刹那−
俺の前に視界が広がる。
茶色い地面が埋め尽くしている視界。
俺の身体に触れているのは...クレミィか。
「この...。」
「?..ルクス?!」
クレミィも気づいたようだ。
俺は地面に右手をつく。
それだけで血がまた流れ出る。
だが、ここで倒れたら先と何も変わらない。
俺は何とか立ち上がった。
足に力が入らず、安定しない。
だが、俺にできる限りのスピードで立ち上がったのだ。
それは奴が振り向くには十分過ぎた。
「何だと?何故立ち上がれる?」
奴の顔が驚愕の色に染まる。
あるいは、死への恐怖で。
奴の反応は当たり前だった。
生きているのがやっとな俺が立ち上がったのだから。
「死ぬわけには...いかない!」
俺は奴を見据える。
完全に立ち上がって。
その瞬間だった。
俺の前に一筋に光が舞い降りる。
いや、一筋ではなく一粒。
蛍のような小さな輝き。
それは次々と何処からともなく集まってきた。
クレミィも驚きでじっとこちらを見上げている。
数百ぐらいの光が集まっただろうか?
その時に光は左手と腹に移動を始めた。
ゾディエも攻撃すらしてこない。
光は左手をゆっくりと形づくっていく。
最初は球だったのが、平たくなり、指を作る。
腹の傷もふさがっていく。
痛みはそれ以前に無くなっていた。
(この力が....<Mystic Force>?)
「馬鹿な?!どうして貴様に<Force>が使える?!
 無能力者の貴様に!」
奴のうめき声など俺の意識には届かない。
とても心地よく、安らぐ時間だった。
数十秒後、完治した。
左手を開いて握る。
何も変な所はない。
腹も触っても痛みがなかった。
「もう一度殺してやる!」
奴が銃を構えた。
俺は特に何もしない。
それでいいのだ、と身体が教えてくれた。
奴が引き金を何度も引く。
鉛弾が発射されまっすぐ俺に向かっている。
奴はスライドストップがかかるまで撃ち尽くした。
そして、脇目も振らずにこっちを見ている。
俺はそのまま立っていた。
弾は数瞬後には俺に届く。
だが、届かないのだ。
銃弾が俺に届く前に消えていく。
何処へともなく俺を包む光がかき消している。
(これが俺の<Force>...無能力じゃなかった。)
通常、<Force>は5〜10才で覚醒するのに。
随分遅い覚醒だ。
だが、この力は強大過ぎる。
いまなら、何でも出来るだろう。
それこそ世界征服でも、だ。
そんなことをしたりは決してしないが。
俺は視界の端で逃げようとしているゾディエを見つけた。
そして、それを手で覆い隠す。
俺の視界から消えるように。
そのあと、手をそこからずらした。
奴はこの世界にはいなかった。
潰したのでも、どこかへ飛ばしたのでもない、
完全に消し去ったのだ。
奴の<no distance>など足元にも及ばない力だ。
(もっと他に、今なら出来る、今しか出来ないことがあるのでは?)
そう考えはしたが、使い方など何も分からない。
それに、俺の精力は底をつきそうだった。
<Force>を制御すること、それも初めての時はかなり辛いのだ。
俺は目眩がして足がもつれる。
倒れそうになるのを何とか堪えたが、右手は頭に当てていた。
頭痛が酷い。
「大丈夫?」
クレミィが近寄ってくる。
そして、俺の意識は弾けた。
完全に何も見えない。
卒倒しその場に倒れた。
左手を右手で強く握りしめながら。
クレミィの話によればそのあと、俺から幾千もの光が飛び出したらしい。
そして、それらは散り散りに飛んでいったそうだ。
完全に眠っていて全く気づかなかった。
でも、何か快い夢を見ていた気がする。
草原に寝転んで風を感じまどろむような。
そんなのどかな夢をずっと見ていた。
俺が目覚めるまで彼女はずっと俺についていてくれたそうだ。
森の端の柔らかな木漏れ日の中で。

俺は目が覚めてからルナの所に行った。
約束通り彼女を迎えに行ったのだ。
ルナの遺体をきちんと埋葬するために。
だが、そこにルナはいなかった。
綺麗さっぱり消えていた。
残っていたのは木の皮のわずかな血痕だけ。
「どういうことだ?」
俺の疑問に対する答えなど、ない。
いや、その言い方には語弊が存在する。
その時には、まだなかっただけなのだから。
     *  *  *
俺は風に身を任せ空を見ていた。
青い空は俺を受け入れることに戸惑いもないようだ。
いつものように微笑んでいるような気がする。
あんなことがあっても俺は生きている。
俺の<Force>は自分では発動できないのが少し悔しい。
どうやら、極端な危険に落ち入り、俺が瀕死でないとダメらしい。
役に立たないったらありゃしない。
鳥が空を飛んでいる。
数匹で群がって飛んでいる。
空を泳ぐ途中で、俺のすぐ目の前を横切った。
少しの風が俺の前髪を吹き上げる。
それを左手で抑えた。
ついでにひさしも作る。
このままでは日射病になってしまう。
鳥は滑空して村の広場の木に留まった。
村からは幾らかの生活音が聞こえてきている。
人々の生きている証。
昼食を用意している主婦、再建などそっちのけで遊び興じる子供、
家の屋根などを直す父親、せかせか走り回る青年。
「村長!」
不意に後ろからそんな名で呼ばれた。
まだその呼ばれ方には慣れていないのだが。
俺はゆっくりと振り向いて言ってのける。
「その呼び方はヤメロって。で、何?」
「ハ〜イ。で、次は何をすればいいの?」
その娘は俺の方を覗き込むように笑っている。
屈託のない無垢な笑顔。
俺はこの顔がとても好きだった。
彼女の全てを包んでくれるようなほほ笑み。
その隣にはクレミィがいた。
こっちとその娘を見比べて笑っている。
「分かった、すぐに行くよ。ちょっとだけ待っててくれ、ルナ。」
俺はルナにそう告げた。
下ではラークとダットが木を運んだりして
村の再復興に一役買っている。
彼女たちは数日前にいきなり現れた。
もとの格好のまま。
傷など何処にもなかった。
「気がついたら光の中にいた。」
そう3人が3人とも言っていた。
それを聞いて俺とクレミィは顔を合わせて微笑んだ。
そして、何も覚えていないらしい。
この村が襲われた頃からの記憶が全く。
俺はもう一度グラーブを見た。
「じゃあ、また来るから。ラーク、ダット、そして、ルナ。」
黒曜石が黒く光る。
俺はグラーブに一礼をするとルナとクレミィの所に行った。
ルナがすぐに寄ってくる。
そして、尋ねてきたのだ。
「ねぇ...。」
「ん?何?」
「ずっと聞きたかったんだけど...
 あそこにある3つのあれ。あれって、何なの?
 毎日、絶対通ってるよね。」
俺は少しだけ答えに窮した。
クレミィを見ると、その視線に気づいて優しく微笑む。
彼女だけが一部始終を知っている。
ルナが何歩か先に行って振り返る。
太陽がちょうど彼女の真後ろから差していた。
「私には言えないこと?」
俺は彼女の方を向いて見詰める。
少し赤くなったルナはちょっとだけ視線を反らしたが、
俺が殊更優しく話し始めると視線をこちらに戻した。
「グラーブだよ。」
「お墓?誰の?」
俺は答えるまでに少しの間をとった。
彼女の髪が風にたなびく。
数日前の丘の上でのように。
そのリズムに乗せて俺は前を向いた。
山脈と森と空。
風と空気と匂い。
それらに告げるように俺は言ったんだ。
「俺の大切な人の、だよ。」

This was the story of the earth more long long ago than
when human ancesters was born.this was the story about Mystic Force.
What did it give people? Where did people go?
What did peopel know? And why did people live hard everyday?
We must be alive forever. We must do what we hate,too.
But so we can be alive with other people.
So we will love others eternally.
As time goes by,we know,learn and understand something.
What is something?
Maybe someone will be able to reach the answer.
Now only one boy that have already grown up knows it.