俺は、急いでルナの所へ戻った。
ルナは先と全く同じだった。
そのままの場所でそのままに倒れている。
俺は走り寄って膝で座った。
ルナは苦しそうに消え入りそうな息をしている。
俺に気づくと辛そうに横向いていた身体を仰向けにした。
ルナの下腹部が服の茶色と混ざって黒く染まっている。
左手で彼女はそこを押さえていた。
「..ルナ...。」
「..ル..クス...。」
「ルナ。」
一言一言を話すのも辛そうだ。
度々顔をしかめる。
「ごめん..ね..。...ちょっと..無理...みたい..。」
「大丈夫だ!こんな傷、助かるから!」
俺の言葉で彼女の顔が少しだけ笑う。
だが、目を開けたりはできないようだ。
「うん...そうだ..よね。」
「..護ってやる、って言っただろ?」
自分の声に涙の声が混じらないようにしていた。
「うん..ちょっと眠い....だけ、だから...。」
実を言えば助からないことなど分かりきっていた。
(護る、って誓ったのに...。俺は..何の役にも立たなかった!)
自分の唇を噛み締める。
いつか感じた血の味が口中に広がる。
少しの痛みが襲ってきても、緩めたりしない。
ルナの痛みに比べればこんなもの....。
「........。」
「そんな顔...しないで.....。」
そう言ってルナが右手を差し出す。
その右手がそっと俺の左頬に触った。
そして、親指でゆっくりと優しく俺の涙を拭ってくれた。
柔らかく、温かいその指で...。
俺はその手を左手で包み込む。
ルナの手は小さくて俺の手の中にすっぽりと収まってしまった。
少し彼女が微笑む。
「...北へ...向かって...。」
「え...?」
「ルクスに..月の導きが...ありますように....。」
ゆっくりと小さな声で呟くルナ。
そして......。
俺の左手に小さな負荷がかかった。
彼女の右手から力が抜けたのだ。
「ル..ナ?..ルナ?!ルナ!!」
俺の響きが悲しく森にこだまする。
その悲痛な叫びさえも一瞬で消えていった。
森の黒がいとも簡単に吸収していった。
ルナは目を閉じて完全に眠っている。
やり場のない悲しみと怒りが全身を駆け巡る。
(守るって...誓ったのに!)
俺は上を見上げた。
一人の森は一層広く感じる。
ルナはさっきからずっと眠っている。
起きる気配はない。
ルナの手を取った。
(まだ..こんなに温かいのに....。)
手を離したいのを堪えながら、なんとか背中に背負った。
彼女の体重、胸の感触が背中にはっきりと伝わる。
ルナは本当に死んでいるのだろうか?
信じられない。
俺は森の中をゆっくりと歩いた。
「北」へ向かって。
ルナは逝く間際<guidance>を使ってくれていた。
この瀕死の身体で。
俺はルナの言葉を信じる。
きっと、きっと「北」へ向かえばすべてがうまくいく。
的中率がどうだの、なんて言わない。
今回は絶対に当たっていると確信していた。
少しずつ俺にも彼女の体温が伝わる。
(肌はこんなに柔らかなのに...。
 髪はこんなに良い香りなのに....。)
俺は無心に歩き続けた。
とりあえず、キリの良い所まで。
この森で一番大きな木に向かって。
森の中には何もなかった。
闇と暗と黒以外。
その中へと、さらに深い所へと進んでいった。
自分の周りに黒い粘性のものがまとわりつく。
俺はずっとそのままだった。
永遠に続いているのではないかと思った。
自分のものとは思えない足、金属で出来ているかのような脚を
ゆっくりと、上げ続けた。

     3rd day
陽光が身体を照らしている。
少しの温かみを覚えて目を開いた。
いつの間にか眠っていたようだ。
何の夢も見なかった。
見ている暇などなかった。
巨木にもたれ、右肩には少しの重みを感じる。
森で一番大きな木の麓。
昨夜歩いていて此処にたどり着きそのまま眠ってしまった。
目に入る陽射しでふと目を閉じる。
瞼を通じて光が赤く見える。
木々の間から光が漏れているのだ。
背中の木肌の感覚が俺のだるさをかき消してくれる。
右を向いた。
自然に、だ。故意に向いたわけではない。
そこにはルナがいた。
俺が起きても気づきもせず眠っている彼女。
昨夜の月光に照らされた彼女とは違う、
日の光を浴びて赤く輝く彼女。
.........死............
その一言を認めたくなくて彼女を横に寝かせておいた。
でも...ルナは微動だにしなかった。
目を閉じて、少しだけ微笑んで...。
下腹部の黒い染みがどうしても気になる。
俺はマントを脱いで彼女にゆっくりと掛けた。
立ち上がって彼女を見下ろす。
見詰めはしても、触れようとはしなかった。
わざわざ確かめたくない、認めたくなかったから。
頭の一部は既に良く理解しているのだ。
彼女は既に冷たいのだ、と。
だから、手を握ろうとはしなかった。
彼女の冷たさで凍りついてしまうのが怖かった。
そうなれば、俺はきっと動けなくなる。
溢れる感情を抑え切れなくなる。
だから...俺は彼女をそのままにしておいた。
森の方を見る。
黒、暗、闇は姿を潜めたようだ。
俺はルナに一言だけ言って「北」に向かうことにした。
しゃがんで彼女を見詰めて言う。
ルナはそっと微笑んでくれた...気がした。
「必ず....戻ってくるから。」

森の中をことさらゆっくりと歩く。
敵に見つかりたくなかったから。
だが、踏み分ける草から出る音がどうしても耳につく。
(一人で歩くのはこんなに寂しいものか...。)
ずっとそう思って、右手を強く握りしめていた。
昨日は存在していた柔軟さがかけらすらも残っていない。
あるのは空虚と静寂のみ。
俺はずっと歩き続けた。
(考えてみれば..よく敵に見つからなかったな...。)
昨夜のことだった。
一晩の間、完璧に熟睡していたのに何も起こらなかったのだから。
そして、少々油断していた。
「...おい。」
「!!」
後ろからの声に驚いて振り向き、銃を抜いて構える。
そこにいたのは...。
「ラーク....。」
「よう、ルクス。」
ラークだった。
後の二人も一緒にいる。
(この森の中で出会うなんてな....。)
ラークが少し辺りを見てから言う。
「ルナはどうしたんだよ?」
「....。」
おそらく、ラークも気づいている。
この場にいない理由など一つしかない。
だが、認めたくない、認められないのだとその言葉は物語っていた。
ラークはこっちを凝視している。
俺は視線を合わせることが出来ない。
俺の取ったその行動でラークの予想は確信へと変わっただろう。
いや、断言できる。
ラークは既に完全に気づいている。
クレミィが小さな声で囁いた。
「....もしかして.....。」
「.....ああ。」
俺が聞き取ることなどおよそ不可能な声を上げる。
そのすぐ後にラークが...。
「何やってんだよ!おい!ルクス!
 おまえが護ってやるんじゃなかったのかよ!!」
ラークが俺の襟元を掴んでこっちを見ている。
俺は目を背けるしかできなかった。
「何とか言えよ!このまま黙り続けるのか?
 ...ちっ、てめぇにルナを任せるんじゃなかった。」
...ラークがゆっくりと手を離す。
「.....。」
「何も言い返せないのか?...話せよ。
 ルナが死んでしまった理由。」
「.....。」
「このまま何もしない気かよ?..ルナもうかばれないな。
 こんな奴に頼って殺されればさ。」
俺はその瞬間にラークにつっかかっていた。
でも、ラークの目を見ることが出来ない。
クレミィが俺たちの間に割ってはいる。
「やめて。ラーク、ちょっと言い過ぎだよ。」
クレミィが優しくラークを抑える。
俺はやはり何も言えない。
「ルクス...おまえはそんな奴だったんだな。
 全くもって知らなかったよ。」
そう言ってラークは向こうを向いてしまった。
ダットが代わりに出てきて言う。
「話してみろよ、な。ラークもきっと混乱してるだけだから。」
「.......ああ。」
その場に座って話し始めた。
昨夜から朝にかけてを事細かく話した。
そして、すべてが現実味を帯びていなかった。
.........
「そうだったのか。
 俺たちはまだ、敵に会ってなかったからな....。」
ダットが暗い顔で言う。
後の二人は黙っていた。
「で、これからルクスはどうするんだ?」
「北へ行く。」
「北?」
ダットがさも不思議そうに尋ねる。
その根拠が聞きたいと言っているのだ。
「ああ、ルナが言ってた。北へ向かって、って。
 だから、俺は北へ行くんだ。」
「ちょっと待てよ。<guidance>の力の成功率は70%ぐらいだろ?
 それを完全に信じるのか?」
ダットが心配といった様子で尋ねる。
「ああ。ルナが死ぬ間際に言ってたんだ。
 根拠なんかどこにもない。でも、俺は信じる。」
「そうか...。」
全員が黙ってしまった。
俺はやっと覚悟を決めた。
こいつらにまで迷惑は掛けられない。
「じゃあ、俺は行くから。」
俺はそう言って立ち上がった。
「...待てよ。」
ラークが下を向いたまま言う。
「どうせおまえ、仇討ちする気なんだろ?」
「....。」
「だったら、俺も行くぜ。ルナに罪はない。奴等を潰してやる。」
「そんなこと...。」
ラークが顔を上げた。
それを見れば、もう言っても聞かないことなど分かりきっていた。
「断っても無駄だ。おまえにそんな権利はない。」
「...恩に着る。」
ラークは立ち上がって言った。
「おまえの為にやるんじゃない。ルナの為にやるんだ。」
「わかってる。」
そのラークにダットとクレミィも続いた。
「私も行く。」「俺も行くぜ。」
「ルクス..。」
ラークの押し殺すような声。
俺は自分を押さえつけてラークの目を見た。
怒りと決意の入り交じったその目を。
「何だ?」
「行くぞ。」
「ああ。」
4人で揃って進み出した。
森の中の道は少しだけ光り、先が見えている。
このまま敵に会わないことだけを願い続けていた。

夜が迫ってきた。
今日も森から出られなかった。
当たり前だ。
軽く後2日はかかる。
走っていけば別だが、それではリスクが大きすぎる。
敵に見つかりやすくなってしまうからだ。
あまりそういう行動は避けたい。
もう、誰も傷つけたくない。
森の中で適当にキャンプをすることにした。
食べ物の類は持ってきたから心配はない。
2人ずつ交代で眠る。
見張っている森の中には誰の影も見えない。
少しの風のざわめきと月光の奏でる協奏曲。
それにずっと心を委ねていた。

     4th day
今日もまたゆっくりと目覚めた。
ぼんやり開いた瞳の先には空がある。
昨日ほど晴れてはいないが、悪い天気でもない。
俺が起きたことに気づいたクレミィが笑って挨拶してくれた。
「おはよう。」
「ああ、おはよう。ダットは?」
「ちょっと辺りを見てくる、って。」
「そっか。」
俺は起き上がって背伸びをした。
敵に会わないから油断している。
だが、今はまだ大丈夫そうだった。
何とか目が覚めてきたので後の一人を起こすことにした。
言わずともラークのことだ。
「おい、ラーク。起きろって。」
「ラーク、起きて。」
クレミィも一緒になって起こす。
だが、この男はなかなかにしぶとい。
寝返りを打ってまた寝てしまった。
(こいつは...状況が分かってないな。)
少しだけ「お手上げ」ってな感じになったときだった。
ダットが帰ってきた。
俺に気づいたようだ。
「おお、ルクス。起きたな。」
「ああ、おはよう。」
「おはよう。ラークは?」
「阿呆ならまだ寝てるよ。」
ダットが小さく笑う。
「ラークらしいな。」
「で、何かあったのか?」
俺の質問にダットは首を振って答える。
「いや、特に何もなかった。兵士一人も見えない。」
そう簡単に言うとダットはラークを起こし始めた。
数分ねばってやっとラークが起きる。
背伸びをしているラークを横目に俺は言った。
「行こうか。」
全員がしっかりと頷いた。
「ああ。」
森の中をまた歩き出した。
此処を抜けなければ平和など手に入らない。
抜けたとしても手に入るとは限らない。
でも、「北」へ向かって歩き続けるしかない。
それが運命だとしても、しなくても。
それが俺たちの意志なのだから。
それがルナの遺志なのだから。

「止まれ....。」
俺はそう言って右手で後ろの3人を制する。
「え?」「なんだよ?」
突然の言葉に驚く3人。
俺には何かが聞こえたのだ。
「何があったの...?」
クレミィが小さい声で尋ねる。
俺はできる限り小さく言った。
「おそらく...敵だ。」
「何だと?」
「多分...1人。..皆は先に行ってくれ。」
ダットが驚きを隠さずに言う。
「1人で戦うつもりか?」
「...大丈夫だ。先を急いでくれ。」
「だが..。」
ダットが何か言いかけたのをラークが止める。
そして、俺をまっすぐ見る。
「分かったよ、ルクス。任せていいんだな?」
「ああ、先に行け。...もうすぐ来る。」
「了解。ダット、クレミィ、走れ。」
2人はためらいがちに頷く。
俺はずっと一方向を向いていた。
(一人で来るとはな....。)
3人が走っていく音が聞こえる。
俺は銃を取り出してセイフティーを解除した。
(来るなら...来い。)
森の静けさが緊張を掻き立てていく。
この気配に気づいた時からヤバイと思っていた。
ただのソルジャーではない。
もっと、もっと危険な奴が来る。
そう感じていたから、敢えて残りの奴等を先に行かせた。
最悪、俺が死ぬだけで済む。
そんなことは頼まれても御免だが...。
風が吹いて木々がざわめく。
冷や汗が背中を伝っているのが分かる。
いまだかつてないほど恐怖にかられていた。
(死ぬかもしれない。)
冗談ではなくそう思っていた。
「死」と「生」の境界線。
今はその線より少しだけ「生」側にいるだけ。
そんな感じだった。
鳥が数羽飛び立つ。
それに気を一瞬取られていた。
そして我に返った直後、気配を掴んだ。
(後ろ!)
俺は一瞬で飛び退いて後ろを向く。
そこには人がいた。
右手を地面に突き刺して片膝をついている男。
真っ黒な服にグローブ、ブーツ、すべてが黒。
男が右手を抜く。
そこは俺が立っていた場所。
俺を頭から貫くつもりだったのだろう。
少しでも反応が遅かったらアウトだった。
男は顔を上げた。
こちらを凝視している。
そして、男はゆっくりと口を開いた。
「....よくかわしたな、ルクス。」
「な...どうして俺を知っている?」
「おまえは覚えてはいないか...ふっ、無理もないな。」
男は少し首を俯けて微笑した。
「....!まさか..シースか?」
男がくすっと笑って右手の土を払う。
その土が風にさらわれて森の中へと吸い込まれていった。
「どんぴしゃだ。まさか、おまえに会えるとはな。」
「...どうしてこんな事をした?」
「決まってるだろう。<Force>を解明したかったからさ。」
淀みなく口を開け続けるシース。
俺の口調は自然に大きくなっていた。
「ほざけ!貴様らのせいで何人死んだと思ってるんだ!!」
シースがクククと笑うのが分かる。
「さぁな。まぁ、貴様に用はないさ。
 どうせ今も「無能力」なんだろ?昔から相変わらず。」
「黙れ!」
俺は右手を前に突き出して奴の左胸を狙う。
奴はなにもしようとはしない。
(こんな奴は...俺が殺してやる。
 村を、村の皆を二度も裏切りやがって。)
照準を合わせると同時に引き金を引いた。
ドンッ!
聞き鳴れた音と共に鉛弾がまっすぐ奴の心臓へと向かっていく。
その時シースは微笑しながら
左胸の前に右手をこっちに手のひらを向けて差し出していた。
(..?あれで止める気か?馬鹿な。貫くだけだ。)
だが、俺の考えはいとも簡単に否定された。
弾丸は貫いたりなどしなかった。
それどころか、どこへともなく消えてしまった。
奴の手に当たった瞬間に、だ。
俺は驚きを隠せなかった。
「な....。」
「これが俺の<Force>だ。」
そう言って奴は右手を握ったり開いたりしている。
「<Force>...だと?」
「そうさ、おまえと違ってな。能力名は<decomposition(分解)>。」
「分解...?」
「その通りだ。化学結合に関与し多原子分子は単体に分解する。
 そして、すべてを分子の単位にまでバラバラにできる力だ。
 これを超越するものが存在しない最強の<Force>だ。」
「馬鹿な...村を出てから覚醒したのか?」
「そうだ。この力で、ルクス、おまえを殺してやる。」
少しだけシースが笑う。
そして、走り寄ってきた。
右手を少し引きぎみにしている。(速い!)
俺はとっさに下がった。
が、そこには木が立っていた。
背中から木にぶつかって多少の衝撃が走る。(つっ..。)
目を閉じていたほんの少しの間で目の前には
奴の右手が迫ってきていた。
「くっ..。」
すんでのところで頭を右に倒す。
何とかかわすことが出来た。
奴の手が木に当たり、木が粉になる。
そこには、手の形に穴が開いていた。
ちょうど型を抜いたときのように。
(こんな<Force>をまともに食らったらひとたまりもない。
 どうすればいい。..ぐっ..。)
腹の辺りに鈍い衝撃が走る。
見れば奴の右足が俺の左の腹をとらえていた。
奴が右足を力任せに振り抜く。
それは俺が吹っ飛ぶのには申し分ないものだった。
そのまま抗うこともできずに飛んでいく俺。
地面が動いているかのような錯覚に襲われる。
そして、地面で数十p滑った。
「はぁ..はぁ..。」
痛みでかなり辛い。
左腹が燃えるように疼く。
(くそっ..痛みは忘れろ。此処は戦場だ。)
痛みを堪え奴の方を向く。
こっちに向かう奴が見えた。
左腹を左手で抑えながら、右手で奴に銃向を向ける。
そして、勢いに任せて数発の弾丸を発射した。
だが、奴は立ち止まって手を動かすだけ。
それだけで、一発の弾丸さえも奴にかすりもしない。
そして、奴はまたこっちへと向だした。
「銃なんか当たらないぜ。」
(それはいえてる。<decomposition>があるからな。)
「くそっ...。」
何とか飛び起きて奴と距離を取る。
左腹がかなり痛む。
急所にぴったりと入ったらしい。
視界が揺れる。
身体にいま一つ力が入らない。
「はぁ..はぁ...。」
「かなり辛そうだな。待ってろ。すぐに殺してやる。」
「ちっ..死んでたまるか!」
当たらないことは重々承知している。
でも、これしかできない。
また銃を構えて、引き金を引く。
心臓以外は狙わない。
ドン!ドン!ドン!ドン!.....ガチャ!
そんな音がしてスライドストップがかかった。
つまり弾切れだ。
(ちっ...どうしたものか..。)
奴はと言えば顔色一つ変えずに立っている。
奴の手には数発の弾丸が握られているはず...だった。
でも、奴の手からこぼれ落ちたのは粉だった。
金属が粉砕された..粉。
その粒が風に乗ってどこへともなく消えていく。
(これが...<decomposition>の力....。)