これはK大学に通う友人Fの先輩が体験した実話である。 ある夏の深夜、彼は友達と共に十和田湖へドライブに行った。 十和田湖は、青森県を秋田県の県境にある湖で、その周囲が織り成す四季折々の景色が美しいため、毎年多くの観光客でにぎわう名観光地だ。 しかし…。地元の人々の間では、「青森県屈指の心霊スポットだ」…と言っているのも事実である。 そう、彼は肝試しに行ったのである。 さて、十和田湖の玄関口に差し掛かった所、濃霧が急激に周囲を被った。 このような濃霧は、青森県ではよくある光景なので、さほど気にせずに車を進めた。 しかし、異変は起きた。つい先程、満タンを示していたガソリンのメーターが激減し、なくなりかけたのである。それも、わずか数分間で。 事態の異変を察知した彼は、あわてて引き返した。 十和田湖を離れ奥入瀬渓流に差し掛かったころには、霧はすっかり晴れ、なくなりかけていたはずのガソリンのメーターが元に戻っていたのだそうだ…。 しかし、彼の恐怖はまだ終わっていなかった。 家に戻り、何気なく車体に視線を向けた彼は、恐るべき光景に驚愕した。 まるで、指で強く押し付けたような奇妙な窪みが5つ、車体にあったのである。 この窪みの主は一体誰であろうか? 十和田湖で自殺した亡霊か、はたまた、すぐ近くにある「八甲田山」で行われた雪中行軍で無念のうちに亡くなった兵隊の霊によるものか…。 今でも、憶測は飛び交っている。 この話は、管理人の父が体験した(怖いと言うよりむしろ)切ない体験談である。 父には先輩がいた。大学の先輩で、卒業と同時に父に自分が借りてたアパートの部屋を紹介し、使っていた家具を父に渡す程、頼りになる先輩だったそうだ。 父は言葉に甘えて、先輩が使っていたアパートに引っ越した。 先輩は、婚約していた女性がいた。結婚式の招待状も配り終わり、あとは、披露宴の日を待つだけ…。まさに、幸せ絶好調の時に「事件」は起きた。 高速道路で起こったトラック衝突事故…。その事故で下半身がグチャグチャにされた先輩は、命を落としてしまったのである。 このような不幸が起こった間もないある日、アパ−トの部屋の掃除をしていた父は、水道の方から水をパシャパシャ立てている音を耳にした。 窓から小鳥が入って来たのだろうか?…と思い、水道の方へ行ってみると、霧状のモヤモヤした何かが蠢いていたそうだ。 霧状のそれは、呆然としていた父の横を通り過ぎ、掛け布団をモコモコとさせて布団の中に入った。 あまりにもリアルな形で、浮遊霊が現れたのである。 先輩は、自分の死を自覚しないまま死んでしまったゆえに現れたのか…。幸福から一気に突き落とされた深い悲しみゆえに、現れたのか…。 彼は父に何かを伝えたかったのかも知れない。 |