直線上に配置
 不思議と…
 気持ちと同じくらい、道に迷いもなく、一目「エルの花嫁」を見ようとあふれかえった人々の中、まるで、わざわざ道をあけてもらっているように、駆け抜けることが出来る。
(アルカが言っていた「能力」なのか?)
 そうなのかもしれない。
 しかし、タトには自分の能力というよりも、まるで、誰かに…神に…導かれているように感じた。
 これが、おまえの進むべき道だと。
「アルカ!!」
 橋の上を、何台かの大きな馬車と、それを取り囲むように大聖堂の衛兵たちが長い行列をなしていた。その中の、列の中ほどの白く光る馬車のカーテンの向こうに、先ほどの白い布をまとっただけのような服装とは異なり、ゆったりとした美しい布に身を包まれ、その上に聖職者の証である赤と白の外套を羽織って、まっすぐ前を向いて座る、アルカの姿があった。
「アルカー!!」
「…タト?」
 小さく唇が動き、アルカは馬車の外に身を乗り出す。
「タト!?タト!!」
「やめなさい!アルカ!!」
「いや…!タト!」
 ルアーナがアルカを抑えようと奥のほうから立ち上がる。
「アルカ!おいで!!」
 剣をぐいっと腰にさし、両手を広げた。
「受け止める!!」
「タ…ト……」
「誰か!あの者を捕らえて!!」
 ハッとアルカはルアーナを見た。
 衛兵の一部が列の後ろから外れ、橋の下のほうへと向かおうとしている。
「さ、アルカ、馬鹿な真似はよしなさい。今日はあなたの大事な日なのよ」
 ルアーナが身を乗り出して下の様子を見つめるアルカの肩に触れて、馬車の中に引き戻そうとした。
 アルカは振り向き、首を振った。
「ごめんなさい…ルアーナ」
 震える手を握り締め、ぐっと体を起こす。
「タト!!!」
 白と赤の外套が、青空に広がる。風に乗って、馬車の上をすり抜け、鮮やかに舞い上がった。
 その外套をするりと放し、白い羽のように、アルカがふわっと飛び出す。
 ルアーナがアルカの身体を捕らえようと手を伸ばすが、すでにアルカはタトの腕の中へと飛び込んでいた。
「行こう、アルカ。旅に出よう」
 受け止めたアルカを地面に降ろし、手を取る。
「ええ…!」
 握り締められた手を、ぎゅっと握り返し、走り出した。
「通してくれ!」
 再び、タトが進み始めると、道が開け始めた。

 これが、二人の進むべき道だという、神の啓示のように。

直線上に配置
BACK
TOP