序章


風に揺れて髪がなびいている。
少しうつむき加減の寝顔が心地よい風に吹かれている様は、なんて無防備なんだろうと思う。
あれが、さっきまで興奮していた奈津美とは思えない。

髪はストレートで肩に軽くかかっている。軽く化粧はされているが、それは端正な顔立ちをより際立たせて見せるだけで、彼女自身にはそんなに意味がないようだった。
華奢に見える細い手首も、引き締まった脚も、今は疲れのためか力を失っている。
奈津美の静かな寝息を聞いていると、そのまま時が止まってしまったかのようだ。

起きたら確かめたい事が山ほどある。
まだ時間はある。
問題は彼女がそれを望むかどうかだが、そんな事を考えていたら自分の身が危ない。なんとしてでも聞き出さなければ。
「ソレ」が奈津美でなくてもだ・・・。


プロローグ


彼女に会ったのは、底冷えのする1月の寒い夜だった。
駅へ向かう途中にあるコンビニに、雑誌と夜食を買いに行った。
彼女は後ろ向きに立っていて、可愛い女の子向けの雑誌を読んでいる最中だった。
ベージュのコットン生地のセーターに、洗いざらしのシーンズ。すらりと長身でいて、しかも細い。
飲み物を買うために横を通った時、そっと横顔を覗いた。

誰かに似ている。
それが誰だったのか思い出せない。
だが、なんとなくイメージのようなものがおぼろげながらある。
暗い、冷たいイメージだ。それが何だったか思い出せそうな時、彼女が振り向いた。
大きな目がまっすぐこっちを向いた。
その瞬間思い出した。
あの少年だ! この間の少年に似ているんだ。
名は何ていっただろうか・・・。   確か「リュウ」だった。


つづき