「慕 恋」
第一話
(4)
室内はすでに暮色に包まれ、ベッドサイドの灯りが眩しく感じられた。
私は永遠に彼女の「中」にいたいと思った。動かずにじっと・・・・・。
しかしそれは嫉妬というべきか、その瞬時瞬時に彼女に快感を−彼女の部分が夫との行為のときに感じるであろう妖しい感覚−それ以上の快感を感じさせて彼女の脳の記憶の襞(ひだ)に塗り込むように覚えさせようとする本能によりかき消された。私は考えられる筋肉を全て使い、彼女がストレートに自分のものを受け入れられるように腰を両手で掴まえ思い切り持ち上げ彼女の両足を自分の腰に巻きつかせ、その限界まで欲情の全てで彼女の身体ごと寄せては返す早波のように動き続けた。
私の汗はやがて自分の肩から胸、腹部まで満ちて彼女の足が絡むあたりで彼女の身体に浸透してゆく。
やがて最初の大波が砕ける時がきた。私が直接彼女の子宮に快感の迸り(ほとばしり)を向けようとしている事実を容認していることを病理学者が顕微鏡を覗き込むかのような観察眼で私は確認していた。その刹那に私は伝えた。
「全部、奥に出してしまうよ。」
彼女は目を閉じて心なしか笑みをも含んだ表情で少し頷いた。そして口走った。
「ちがう、いままでとは・・ちがう」
その瞬間に空白のしかも「蒼い時」が螺旋状に降りてきた。
彼女はそれまでとは全く別な女性に変貌した。自らの纏った布きれは全て自分の手で剥ぎ取っていった。しかも笑みを含んだその表情は菩薩のように清らかなものとなり、自分の全てをその瞬間のために研ぎ澄ますべく身体のすべての力を抜いていった。
ほの白い雪色の彼女の肌は、妖しくうごめき私の身体から全ての疑い、欺瞞、欲を奪っていった。薄く蒼い時のようだった。何も言葉はなく全て未知の瞬間のために抵抗と言う名の鎖は禁断という名の光線にすべて千切られ粉々にベッドの上に落ちていった。
荒々しい呼吸と共に自分の身体から全ての憂いが吐き出されたかのような、快感と感動に酔いしれる時が来ていた。
これまでの彼女の気持ちに対する不安と僅かな疑い。
本当に自分に抱かれるのか・・・・本当に信頼してくれているのか・・・・
彼女は自分の身体で答えてくれたのだ。
男の肉体が目的なら自分なんかよりもっと若い男と接する機会はあるはずなのだ。
自らの放出を忘れていた私はじっとして動かない彼女の下腹部に手をあてた。
何年間も夫からの深淵までの放出を経験していない彼女は、それが逆流しシーツに流れ出ることを全く予想さえしていないようだった。それは逆に私には新鮮であった。
私は全ての処理を自分の手で行った。彼女はまるで入院患者が看護婦に身を任せるかのような視線で薄暗さの中から見据えていた。
「ごめんね、腰が・・動かない・・」
そう言って彼女は身体を少し起こそうとした。
その時なぜか彼女のその部分に
ぴたりと私の手が挟まってしまった。それはまるで吸い付けられたような感触だった。
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