「慕 恋」
第一話
(5)
彼女は簡単に、微睡み(まどろみ)のなかの呻き声を漏らした。
「・・・そういうのでもう・・・へんになる・・・」
私はこの時、少しも彼女の状態を理解していなかった。
彼女は見知らぬ快感の波の中にいて、全ての呪縛から解き放たれ、何年間も閉ざされた空間にいた鳥が森に放たれた・・・その瞬間にいたのだ。
「さっきみたいに・・・指で・・して・・・」
私は驚きを隠せなかった。今や時計は二人の交合が2時間に及んだことを示している。
「時間、大丈夫?」
彼女はそれには答えなかった。
「さっきね、なにかに・・・あたった・・」
私は自分の身体を彼女の横にずらしてその行為が取りやすい体勢にした。
彼女には何かまだ、見つけたいものがあるのか。もうすぐ見つかりそうなのか。
さきほどの行為により中がどうなっているのかは想像していた。しかし彼女の要求がこれまでにない大胆さだったことに、自分の心はかき乱されていた。
そこは狭い空間だった。驚くほどのうごめきと締め付けの連続。何がそうさせているのか、彼女は一切動いていない。何もしていない。別な生き物がそこを支配していた。
「すごいよ・・・なぜ・・・」
「・・・わからない・・・でも・・・あたる・・・」
彼女の控えめな喘ぎの誘導により、もっと深淵な空間に私の指は突き進む。
完全に彼女の快楽への指標を掴んだ私の指は1つが2つになり、そこを刺激し始めた。
深く身をよじりながら彼女は飛び立とうとしていた。
男は、自分の行為によって女性が乱れていくのを眺め、身体で感じることこそ最高の至福感を感じるのではないだろうか。
愛がそこにあるのかどうか、お互いに心は固い絆で結ばれているのか、などと自問する必要はない。
言葉ではない。
ただ快楽の結果として自分の下で、あるいは上となって女性が喜悦の表情で乱れているのか、それとも自分と一体になって同時に感覚が高まっていくその瞬間に喜びを感じているのか・・・。
女性の細胞の一つ一つが語りかけながら自分に絡みついてくる瞬間を知っている人は少ないのかもしれない。
言葉はいらない。
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