「艶 芯」

-その2-



ドアのガラスには目隠しでバスタオルが架けてあったが、その隙間からかろうじて一筋のほのかな光線が廊下越しに差し込んでいる。
しかし、彼女の表情は見えない。
私はまだベッドに腰掛けたままの彼女を軽く後ろに押し倒した。
その瞬間に彼女は右手を折り曲げ自分のうなじに充てるようにして、背中まである髪を跳ね上げようとした。
私はその手に重ねて、自分の手を彼女の首の下に持っていき、彼女の頭が枕に接する寸前に彼女の長い髪を全て上方に跳ね上げた。
 「優しいんだ。」
彼女の声が少し震えたような気がした。
 暗がりのなかで彼女の腰のあたりにあった手を順に下腹部や背中とゆっくり移動させる。 彼女はすでに私を受け入れる体勢になりつつあるのか、私の腕をかなりの強さで自分の方へ引き寄せようとする。
一瞬、唇をつけるのかどうか迷った私だが、彼女の引き寄せる力に素直に従うと、二つの唇は吸い寄せられたように重なった。
 私は少しだけ唇を押しつけたのだが、彼女の方から角度を変えて、かなりの吸引力で私の舌は、彼女の口の中に吸い寄せられた。
私は驚いて、すっかり手の感触や身体の向きを忘れてしまっていた。
気がつくと、私は両方の手を彼女の細いウェストに回し、さらに両の手を組んで、その身体をきつく締め上げていた。

 頭の中では、行為に及ぶ前の、いわゆる前戯をどうするか、彼女のその部分に口をつけるのか舌を使うのかなどと考えていたと思う。
現実には心に余裕はなかった。こういう時はそれまでの経験のほうが優先される。
ただ、右手をはずして彼女のその部分に指をすべりこませた。その部分を探すことなく、指は吸い込まれるように落ちて行った。
その瞬間に私は自分の身体を彼女の足の間に割り込ませ、一度彼女の肩を両手で掴み、思い切り自分の方向に近づけた。
何も考えていなかった。
唇をつけ合ったその数分後に二人はこれ以上不可能なほどの強さで、密着していた
。  動きは、緩やかだった。ただ、彼女の唇から信じられないような嗚咽のような声が漏れた。
「感じる・・・すごく」
 暗がりの中で、私と彼女はじっとその感触を確かめるように静止していた。
私は動こうとした。
しかし、お互いの腰の動きが完全に同化してしまい、私の動きは彼女の腰のそれと同じになってしまうのだった。




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