「艶 芯」
-その7-
エレベーター内で振り返った彼女の顔は、物憂げでその視線はすぐに定まらないような、トロンとしていた。
たった今、他の男に抱かれたばかりの女とわかっていて、その行為に及んだ経験など私には無かった。
それは私の頭の中では、何か危険なことのようで辞められるものなら、ここですぐに中止したい気持ちだった。
しかし、身体の何処かで妙な炎が燃えだしていて、官能の入り口がちらちら見えていて私を誘っているのだった。
私は我慢しきれずに彼女に問いかけた。
「まだ、前の人の余韻が残ってるみたいだね?」
「だって、話し込んでいてラスト近くになって始めてなかなかイカないんだもの。」
私は彼女の口から出たその言葉に強い刺激を受けた。(なかなかイカない・・。)
それを彼女がどういう心境で言ったのか、追求したかったが、エレベーターが4階に着き降りてすぐ右側の部屋に通された。
部屋に入るなり、彼女はまるで恋人を自室に迎え入れたような馴れ馴れしさで、私の首に両手を廻し、
「逢いたかったよ。」
と囁いた。
その一言で、それまでのわだかまりは、音もなく消え去り少し肉が付いている彼女の臀部に手を廻し、少し長いキスをした。
まるで恋人同士のような気分に浸ったまま、私はある欲望に憑かれていた。
それは彼女がたった今、帰した客と避妊具を着けて行為に及んだか?を確認することだった。
いつもならば、それぞれが服を脱ぎシャワーを浴びるか湯船の湯を使うか、いずれにしても身体を清めるのが先だった。
しかし私は思いに負けて、彼女をそのまま、押し倒して、右手を下着に潜り込ませるとそのまま脱がせにかかった。
彼女は、その刺激を楽しむかのように、わざとらしい拒否の声を漏らしたがその顔はうっすらと微笑んでいた。
私の目的はひとつだった。彼女の細い両足の太股を押し広げ、思い切り自分の鼻を彼女のその部分に押しつけた。
意外にも石鹸のような臭いがした。彼女のその部分は少し湿りが始まり小さい花弁が光を見せ始めたところだった。
私は自分の指で、思い切りそこを押し広げた。
そして再度、鼻を押しつけていった。
その瞬間に男の残したものの「臭い」がした。決して思いこみではなく、他の男の精液の臭いだった。
頭がそれを理解すると同時に私は軽い「吐き気」を感じた。それが恋愛の相手なら、どうであったろうか・・・。自分の身体の中を血液が逆流するのを感じた。
いきなり、手に取っていた両足を投げ捨てられたような格好になった彼女は、目を覚ましたように起きあがった。
「どうした?」
「いや・・・シャワー浴びよう。」
と言って立ち上がる私の前の方に彼女はすばやく回り込んできた。
「なに?どうかしたの?何か私がヘンなの?」
私は答えるべきかどうか、数分間沈黙した。
それまで、気分が消沈していたのが嘘のように嫉妬心に火がつき始めていた。
前の男の残した「もの」の上から自分が標しを残してやる・・・・。
雄の本能なのか自分が人である以前に、動物であることを感じる。
すでに、快感の余韻から解き放たれた彼女の目にも、雌の本能が間違いなく宿っているはずである。
私は自分の硬くなったものを、やや乱暴に彼女の唇に押しつけていった。<了>
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