ちいさなおはなし

まっしろな朝、ちいさな花が一輪咲きました。
ちいさな花はとても誇らしげでした。

ちいさな花は精一杯背伸びして待っていました。
犬が通りかかりました。犬は花に気づかずに通りすぎました。

花はもっと背伸びしました。
男の人が足早に通り過ぎました。
もちろん花をちらっとも見ませんでした。

花はいよいよ背伸びして、はなびらを精一杯開きました。
子供達が歩いていきました。
花に気づくどころか、危うく花は踏みつぶされるところでした。

花は取り残されてとても悲しくなりました。
一体わたしに誰が気づいてくれるのでしょう。
せっかく咲いたのに、花開いた自分を誰がみてくれるでしょう・・・?
花はとても自分に自信があったのです。
でも今はただ、ただ悲しくてしょんぼりしていました。

そのうち陽は高く上りあたりは次第にいろづいてきました。
鳥が一羽飛んできました。
鳥は花に気づきそばに降りました。
鳥はしばらく花を眺めてそれからまた飛び立ちました。

花はもう悲しくありませんでした。
今朝一番に咲いたとき、自分はとても綺麗な花だと思っていたのですが、誰にも見てもらわなければそれは意味のないことでした。ただ自分を気にとめてくれるものがいる。たったそれだけのことでよかったのです。

花は満足して散っていきました。
後には鳥がちいさく鳴いていました。

By Ritsuko



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