パン屋のはなし

その国はとても貧しく
どの人もとてもおなかをすかせていました。
みんなパンを買うお金もなかったのです。
この国にたいそううぬぼれ屋のパン屋がいました。
自分の焼くパンは一番すばらしいと思っていました。
でも誰もパンを買ってくれないし、また、パンを焼くこともできない有様でした。

パン屋はある時空っぽの釜をのぞきながら、ため息まじりに言いました。
「国中のひとが私のパンを食べて私を国一番のパン屋と褒め称えてくれるなら、私は悪魔に魂だってくれてやるのに・・・」
するとその時、釜に炎がともり、真っ赤な顔が浮かび上がりました。
「お前の願い聞き入れよう。お前がパンと手をたたけば、その願いはかなえらえるだろう」
声がやむと、炎は消えていました。
パン屋は悪魔を恐れはしたものの、欲望には勝てず、早速パンと手をたたいてみました。
するとどうでしょう、目の前の釜がなんと大きな焼きたてのパンに変わったのです。
パン屋にはすぐにわかりました。魔法の手を手に入れたことが。 
パン屋は早速、外へ出ていきみんなの持ち物をパンに変えていきました。
もちろんみんなは大喜びです。みな口をそろえてパン屋を褒め称えました。
パン屋はとても満足でした。

こうして国中の人が飢えることはなくなったのですが・・・
そのうち困ったことがおこりました。
なんでもパンに変わっていくので、国中の物がなくなっていきました。
それはどんどん目に見えてなくなっていき、パンに変えるものがなくなっていくと、このパン屋はとうとう我慢できなくなり、人までパンに変えていきました。
そうして、しばらくすると、いくらパン屋がパンを作っても食べてくれる人は誰もいなくなってしまいました。
しかたなく、パン屋は最後に自分に手をたたき、そして、この国にはパンを食べる人は全くいなくなってしまいました。

パンとたたくとパンになるパン屋のはなしはこれでおしまい


BACK