オメー、ツメ伸びてんだろ。」
言われて、自分の指先を見てみると確かに伸びている。
「んー、ちょっと長いかな・・・。なんでわかった?」
そう聞くと、寝転がってタバコを咥えたまま不機嫌そうに眉根を寄せた。
「イテーんだよ。見ろよコレ。あーあー赤くなってるし。」
目の前に突き出された筋肉質の腕に、くっきりと赤く、爪の痕。
さっき、知らない間に爪を立ててしまったらしい。行為に夢中で自分では気が付かなかった。
「ごめん。爪切るの、苦手なんだよね・・・。」
「切ってやろうか?」
得意だぞ、と言ってくれたけど。
確かに風呂上りの今なら切りやすいんだろうけど。
「今は、駄目。」
「なんでー。」
「夜に爪切ると、親の死に目に会えないんだよ。」
「あ?」
馬鹿にされたかな、と思ったけど。
「ふーん。」
反応はこれだけだった。
「んじゃ、明日の朝な。」
「え?」
その言葉の本意を捉えかねる。いつもなら、あと30分もすればこの部屋には自分一人になるのに。
「今日は、帰んないの?」
ごろん、と寝返りをうって、こっちへ寄ってくる。
「んー、たまには良いべ?」
一人で夜を明かさなくても良いのが嬉しくはあるけど、あんまりにも珍しい展開に、明日は雪かも、なんて思ってしまったりもする。
そんなことを考えていたら、ふいに引っ張られてベッドに逆戻りした。
ほのかにタバコの匂いをさせる口が、意地悪げに笑って言いやがった。
「今度は、ツメ立てんなよ?」