ドリー夢小説
帰り道
純白をまとった花嫁の手から放られたブーケが、鮮やかな放物線を描いて私の手の中に
とびこんできた。
「わ・あ・・・・」
感激のあまり、私は受け取ったブーケを掲げて花嫁に叫んだ。
「ありがとう志穂!!幸せになってね!!」
すっごく幸せそうな、親友の笑顔。
大学3年の6月。志穂と守村くんがひっそりと仲間内だけで結婚式をあげた。
一流大学に在学中にまさか2人が結婚するなんて!とねぇやんたちと驚きをわかちあったが、
別に大学を卒業するのを待っていたわけではなかったらしい。
きっかけが、あったのだという。
結婚しよう、と決めたきっかけが。
それがなにかは教えてくれなかったけど・・・・私はちょっと、うらやましかったりする。
「零一さん?志穂、キレイでしたね・・・」
思い起こすだけで、溜め息がでるほどステキだった・・・
懐かしい面々との再会も果たし、2次会もそこそこに帰宅につく。
それは、先生と一緒だから。
あ、今は・・・先生じゃなくて、恋人。零一さん。
時間は11時を回ったところだった。
私も大学3年生になったというのに、恋人と一緒だというのに。
「もう遅い。いつまでここにいる予定だ」
そんなこと言われたら『じゃあ次3次会はカラオケだ〜!!』なんていうねぇやんと姫条くんの
声を背中で聞きながら
「・・・そろそろ、帰りましょうか」
なんていうしかないじゃない!
私も大概・・・・猫かぶってるなあ・・・
「ずいぶん泣いたな。」
心地よい風が私と零一さんの髪をゆらす。
少しだけ飲んだお酒を覚ますようにことさらゆっくりと駐車場まで2人並んで歩く。
「えへへ・・・だってなんか・・・・感動しちゃって」
守村くん。すごく頼もしく見えた。
「そうか・・・ブーケをもらったな」
横を見ると零一さんの笑顔がそこにある。
少し赤いその笑顔。零一さんもお酒、飲んだのかな?でも運転は・・・
「零一さんお酒飲んだんですか?」
「酒?飲むものか。私は運転手だからな。どうした突然」
「いえ・・」
そっか。私だけ、飲んじゃって悪いことしちゃった。
「君は飲んだようだな・・・顔が真っ赤だ。それに・・・先ほどから私の話をあまりよくきいていない
らしい」
「そんなこと・・!」
次の瞬間、そっと頬に触れる零一さんの熱い吐息。
「っれい、いちさん・・ここ、外です・・・」
「今日の花嫁も確かに綺麗だったが・・・君の方が私には魅力的だ。そのドレスも良く似合っている」
耳元でささやかれる甘い声。
零一さん、ほんとに酔ってないですか?
「零一さん、も・・かっこいいです」
志穂ちゃんごめん。守村くんのタキシードかっこよかった。でもね・・・零一さんの黒いスーツのほうが
・・・かっこいい・・
「少し、歩かないか。・・・君の酔いも、覚まさなければな」
私、そんなに酔ってないですよ。
でも・・もうちょっと零一さんと一緒にいたい。まだ、帰りたくない。
「はい」
2次会が行われた眺めのいいレストランから地上におりて、少し歩けばもう海が見える。
あと2ヶ月ほどもすれば花火大会も行われるそこは、こんな時間なのにカップルがちらほら。
「そこに座って少し待っていなさい。飲み物を買ってくる」
はい、と肯いて私はベンチに腰をおろす。結婚なんて、ふわふわとした理想だと思ってた。
今日の志穂を見ていて突然私の胸に現実味を帯びてきた、結婚、の二文字。
私は・・・いつ、誰と結婚するんだろう。
もちろん私は零一さんと結婚したいけど・・・でも。
「また考え事か?」
零一さんが買ってきてくれた紅茶を私の頬にあてる。
冷たくて、気持ち良かった。
「相変わらず君は酒に弱いな。あれだけのカクテルでそこまで酔えるとは」
なにがそんなに楽しいのか、小さな笑い声と共に零一さんが隣に座る。肩を抱く、
大きな手。
私の手の中のブーケの花をいじる。
「次の花嫁、か」
零一さんのつぶやく声。ブーケを受け取った女性は次の花嫁になれる。
そんなこと、零一さんが信じてるなんて思わなかった。
私は・・・信じてる、信じたい、だけど。
「来年君は大学を卒業する。その後の進路はもう決まっているのか」
「はい。私・・・」
教師になりたいんです。
「零一さんの・・・お嫁さんになりたいんです」
え??????い、今私・・・何言ったの?!
「あっあの・・いえ、そうじゃなくて!!教師に・・なりたいんです・・その・・」
あちゃー・・・・やっぱ私、少し酔ってる。
だって・・・口からでた言葉は、思ってた言葉とは全然違って・・・
「」
小さなパニックに陥った私の頭を固定するように零一さんの手が忍び寄る。
「先生・・・あの私・・・」
こんなこというつもりじゃなかったんです・・・・
下を向いて小さくつぶやく言葉は零一さんに届いただろうか。
先生を、困らせるつもりじゃなかったんです。本当です。
その時あごをつかまれ上を向かされると、今度は唇に、熱いものが押しつけられた。
それは零一さんの、唇。
「・・・・・・ん・・」
「酔った君も、悪くない。悪くはないが・・・その言葉は私が用意していた言葉と重複してしまうな」
???
「・・・もう少し先の話になってしまうが・・・・・・結婚、してほしい。私と」
「・・・・・・・・・・・・・・結婚・・・・?」
「いや、か?」
あまりに唐突な・・いや、結婚式の帰りだもの。唐突ということもないのかもしれないけど・・
零一さんの言葉に、思考が停止しそう。
「結婚・・・してくれるんですか?私と・・?」
零一さんが?ほんとに?夢じゃない?
「私が君に申し込んでいるんだ。合意ということでいいな。・・・・君が大学を卒業するのを待ってから
とも思ったのだが・・・今から申し込んでもかまわないな。もちろん手続きや式などは卒業してから
ということになるが」
こほん、という零一さんお得意のせきが聞こえる。
零一さんの顔はもう真っ赤で。
照れた顔もすてきなんですけど。
「・・・私の好みだけで選んでしまった。君が気に入ってくれるといいんだが」
そういってポケットからとりだした箱をあけると、中から指輪を取り出し・・・・・・そっと私の
左手の薬指にはめてくれる。
それは光り輝く・・・
「・・・婚約指輪・・ですか?零一さん!嬉しい!!」
これが、私たちが結婚するって証?約束?!すごく嬉しい・・
「・・・君の親御さんのところにも、ごあいさつに伺わなくてはな」
結婚なんて関係ないと思ってた私に、こんなにも身近になった結婚っていう現実。
なんだかまた胸がしめつけられるようで私は泣いてしまった。
泣き顔を見られたくなくて、なぜ泣いたのか聞かれたくなくて私は零一さんにしがみつく。
「愛している」
零一さんの声にまた私は夢心地にふわふわした気分に酔ってしまう。
「・・私も愛しています・・・零一さん」
私の涙をぬぐおうと伸ばされた零一さんの指にも、同じ指輪が光っていた。
きっかけというならば、これもそうなのだろうか。
ブーケ。
志穂の結婚。
そういうものに左右されたとは思わないけど。
きっかけっていう言い方なら、いいかなって思っちゃう。
ありがとう、志穂。
ほんとに幸せになってね。
あたしも、幸せになるよ。
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