待ち合わせ









ドリー夢小説 「先生・・・」

待ちに待った昼休み。

あたしはこっそりと音楽室の戸をたたく。

今日は4時間目も5時間目も音楽室を使うクラスはないって知ってる。

だから・・


「早かったな。

中から鍵を開けて迎えてくれたのは氷室先生。

「走ってきました!」

いけないいけない。大きな声出して誰かに見られたら、せっかくの先生との待ちあわせがもったいない。

「入りなさい」

先生、機嫌いいみたい。

「おじゃましまーす」

廊下に人気がないことを確認してあたしは音楽室にはいって鍵をしめた。


「今日の4時間目はマラソンだったんですよ。もうお腹ぺこぺこです」

女子は2.5キロの校舎の周りのコースを走る。

駅前にあるうちの高校は、平日の昼間も人通りがたえない。

コース上にあるファーストフード店からはいいにおいがしてくるし、最近できたばかりの

雑貨屋さんの店頭ではサンタクロースが踊っていた。

もう冬だというのに走ったあとのからだはぽかぽか。

「ああ。校外を走ったのか」

「そうです。こんなに寒いのに汗たくさんかいちゃいました。先生は4時間目授業あったんですか?」

先生の座った椅子の正面に椅子をもってきて座る。

「ああ」

本当は知ってる。先生が何曜日の何時間目はどこのクラスを教えてて、何時間目は空き時間なのかって。

先生に答えてもらいたくてそんなことを聞いてる自分が子供だなあ、っておもう。

あたしはまた少し落ち込みながらお弁当を開いた。

先生の机の上にはライ麦パンとサラダ。

「先生?あたしこんなの作ってみたんですけど・・・食べてみてくれませんか?」

毎日決まった先生の食事。

ライ麦パン、チーズ、グレープフルーツ、セロリ、牛乳、ビタミン剤。

健康にいいっていうのもわかるし先生らしいと思います。でもね。

ちょっとだけでいいから・・あたしの手料理を食べてもらいたい、って思っちゃうんです。

「・・卵焼きか?」

先生の言葉が疑問系なのは、卵やきのなかに黒いものが交じってるから、だと思う。

「のりが中にはいってます。やきのりをまきこんでやいてみました。あの・・味見しました。ちゃんと」

「ああ。いただこう」

先生のお弁当はパンだからおはしはない。

それを確認してあたしは卵焼きをはしでつまんで先生の口元に持っていく。

「・・・どうぞ」

はずかしいけど、先生の反応にドキドキで先生の顔を凝視してしまう。

先生の目が一瞬泳いで、

「・・・いただきます」


ちょっと照れた顔の先生があたしの卵焼きを食べてくれた。

「どう・・ですか?」

砂糖も少な目で、甘くはないと思うんだけど・・

「おいしい」

先生の少ない言葉を補ってなお余りあるような優しい笑顔。

よかった。

「えへへ。先生が喜んでくれるともっとがんばろうって、思えます」

勉強だって、スポーツだって、お料理だってそう。

「君の前向きの姿勢は見ていて清々しい。私も君の努力に少なからず手を貸したいと思っている。

忘れないでくれ。いつも君の側にいる」

いつも、あたしのこと見ててください。

先生が見てくれる限りずっとずっと努力しつづけてみせます。

5階から見える外の景色に目を移すと、どこからきたのかシャボン玉が下から浮いてくる。

「先生、シャボン玉ですよー!」

いろんな色でゆらゆらゆれて、目の前で弾けて消えていく。

次々と現れるシャボン玉が気になって、あたしはお弁当をたいらげると窓際に駆け寄った。


ちなみに先生はあたしがたいらげる少し前に昼食を終えてました。

君は食事中も落ち着かないのか、とかたしかにきれいだな、とかいいながら。

「どっからくるんでしょうね」

背後に移動してくる先生の気配を感じてあたしは振りかえる。

そこには思ったよりも近くに、っていうか先生、近すぎ・・・

びっくりして少しのけぞったあたしのあごをそっと上に向かせた先生が、キスをくれる。

目を見ながら触れるようなキス。


それから、

あたしの唇をくすぐるようになんども角度をかえては先生の唇がだんだん強くおしつけられる。

「んっ・・・」

器用な舌が入りこんで口の中を蹂躪してきて・・・


からだの中心がうずくようにぞわっと鳥肌がたって、あたしはうめくような声をだしてしまう。

・・」

先生の呼びかけに応えようと口を開くとまたとめどない口付けで埋め尽くされる。

あたしは暖かい先生の背中に手を回してスーツをしわにならないように気をつけて、つかむ。

ぼーっとしてくる。

息ができないから?先生のことが好き過ぎて苦しいから?それとも先生のキスが・・・気持ちいいから・・

先生は窓を背にしているあたしの顔の横についていた手をあたしの髪に、頬に、首にすべらせる。

あたしはぞくぞくして、先生の手がもっと先まで、もっと中まで触れてほしいって思ってしまう。

「せん・・・・・」



キーンコーンカーンコーン・・・・・・



・・・・・・

チャイムが恨めしい。

先生との時間はあっという間に過ぎて行く。

ぼーっとしてたあたしの意識があっという間に戻ってきて、先生の唇がゆっくりと離れていく。

その緩慢な仕種。

先生も離れたくない、って・・思ってくれてるのかな。

「・・続きは、次回までお預けだ」

先生の顔にうっとりしてたあたしの唇を長い人差し指でひと撫ですると、先生はてきぱきと昼食の片づけを

はじめた。

。次の授業に遅れないように」

まだお弁当を包んでるあたしに、先生が振りかえる。

「はいっ!先生・・先、行っててください。一緒に出て行くの見られたらまずいですもんね」

本当はみんなに先生のこと好きだって叫びたい。愛してるって公言したい。

あたしの気持ちは自慢したいし、先生のこと好きな女の子たちに先生に近づかないでって言いたい。

でもやっぱりあたしと先生は生徒と先生なんですよね。

どうしようもないんだけど・・・もっと、早く生まれてたら、なんて。

考えたらきりがないんですよね。

「どうした」

「・・先生かっこいい」

せめて先生がこんなにかっこよくなかったらなー。

先生に近づく女の子も減るんだろうけど。

そんなことを考えながらつい口をでた言葉を、先生は一つため息をついただけで流しちゃう。

「・・。今日も部活動終了後駐車場で待っていなさい。いいな」

もう一度あたしの側まで戻ってきてあたしの頭を撫でたあと、先生は嬉しい約束をして音楽室を出ていった。

・・後ろ姿もかっこいい・・・

先生、あたし先生に特別扱いしてもらってるよね。

あたしの、思い込みとかじゃないですよね。

先生がキスする相手は・・・あたしだけだと思って、いいですか。

「さてと」

早く教室に戻らないと。


今日は先生と一緒にお昼ご飯食べれた。

先生があたしの手料理食べてくれた。

放課後は一緒に帰れる。

先生と生徒でも。

人目を忍ぶ恋でもいい。

先生と一緒にいられるなら・・・幸せ。