ドリー夢小説
「先生!今日は朝からちょっとがんばってみたんですよ」
黒い革張りのソファの上でもってきたかばんを漁り出す。
隣では英語でびっしりのサイエンス雑誌を片手に零一が何事かと視線をよこした。
「じゃーん!手作りクッキー・・・」
です。
の声にかぶせるように聞こえてくる携帯の着信音。
シンプルな機械音。
の携帯の着信音はダウンロードした着メロしか設定していない。
零一の携帯であることはすぐに分かったのだが・・・・
無言で零一の視線がクッキーからテーブルの上に移り、それを手に取った。
零一の携帯がと一緒の休日に鳴るのはさして珍しいことではない。
学校の同僚からだったり、理事長からだったり。あとはバーのマスターからかかってきたこともある。
でもメールがきたのがはじめてだった。
零一は携帯を片手に、親指でせわしなく文字を入力しているようだった。
からのメールの着信音はが設定した。自分の携帯電話でも使っているお気に入りのメロディ
だった。
だから・・・・今鳴ったのは以外の誰かからのメールの着信。
『今先生が返信してるのは・・・あたし以外の、誰か・・
・・・・誰、なんだろう・・・・。』
「・・・、」
「はっはい!!」
「・・・どうした、先ほどから考え事か?」
零一の呼びかけにワンテンポ遅れて応ずるのとぼけた声。
「いえ・・・すみませんなんでしたっけ・・」
「なにか心配事でも?」
先ほどの零一あてのメールが気になってクッキーを手にしたまま固まっていたに、零一が眉根を
よせて顔を覗きこんだ。
「なっなんでもありません。あの・・・」
「ほう・・・おいしそうだな。朝から作ったのか?」
しどろもどろになったの手からかわいくラッピングされた袋がふわりと浮いた。
零一の触れた人差し指の部分が熱い。
先生と生徒という関係ではなく、恋人、という関係を手に入れてから大分経つというのに、
今もなおの全身が零一を愛してると叫ぶような、恋をしている。
「はい。甘さ控えめにしてみました。食べてみてください!」
だから、零一が学校で女子生徒に人気があったことも。
今零一の生活の大部分が、自分のいない学校という職場で過ごしているということも。
いつもいつも心のどこかにひっかっかっていて。
『・・・・・・でも聞けない』
嫌われるかもしれない。
先生のプライベートだもん。
「きゃっ!!」
零一の手がの肩を抱き、引き寄せる。
「どうしたんだ。・・・・・・退屈か?」
「たったっ・・退屈なんてしてませんよ」
零一の腕の中から逃れようともがくが、の力ではびくともしない。
「それではなにか悩み事でもあるんじゃないのか」
心配そうな口調だった零一の物言いが、少しずつ、問い詰めるそれにかわる。
「・・・私には言えないことか」
「そんなんじゃ・・・ないです」
「それではなんだ」
零一の目が細められ、つりあがるのを見ながらの声が小さくなる。
「・・・・・・あの・・・さっきの先生の・・・着信・・・」
「ああ、携帯がなったな。それがどうした」
「えっと・・・・・き、聞いたことない着信音だったなーと思って・・・」
零一は歯切れの悪いに焦れている。
今、聞いてしまえ、と思うのに・・・聞けない。
「そうだったか?」
「はい」
・・・・・・・こわい沈黙。
「私の携帯電話が気になるのか」
「いえ」
「はっきりしなさい。。今日はずっとこのままでいる気か」
「・・・さっきのメール誰から、だったんですか?」
とうとう聞いてしまった!どうしよう。
関係ないなんて言われたら・・・・・
「・・・なぜそんなことが気になる?」
!!!!
「だって!!だって・・・先生がメールしてるなんて、はじめて・・・見たから」
「・・・なにか勘違いしているようだな」
クックッ、と聞こえてくるのは零一の笑い声。
「なっなにが勘違いなんですか!!」
からかわれているのかと思わせる零一のおもしろがる声にが声を荒げた。
「先ほどきたメールは・・・」
メールは?!
「・・・間違いメールだったようだな。見るか?」
意地をはって首を横にふるの目の前につきつけられた小さなディスプレイ。
そこには『おかえりなさい和君。おやつは冷蔵庫に入ってるから、手を洗って食べててね。』
「・・・どこかの母親が子供に送るはずのメールを間違えたようだな」
「そっそれで・・・」
「アドレスを間違えていると返信した」
まだからかいたりない、笑い足りないといった零一の顔がゆっくりと近づきのおでこに、
頬に、まぶたにキスをおとしていく。
「・・・嫉妬したのか?姿も見えない相手に」
姿が見えないから、不安なんです。焦るんです。
『って先生!あたしがやきもきしてたの・・・気づいてたんですかー!!』
その心の叫びも、零一の着信音への不安だってみんな顔にでてしまっていたのに、まだ意地をはる。
「嫉妬なんて・・・してません」
零一の手が、恥ずかしくてそっぽを向くの後ろ髪を撫で上げ、今度はうなじに口付けた。
うなじから首筋へ、首筋のゆったりしたシャツをずらし・・・
「せん、せ・・・・」
「嫉妬なんて、する必要はないだろう」
「だって」
「君だけだ。・・・これまでも、これからも。君だけを愛している」
焦らすように、試すように零一のキスがのカラダを蹂躪してゆく。
二人の時間が少なくて、すれ違うこともあるけど、
愛してるから。
だから、
たくさん話して。たくさん愛して。
不安にならないように。不安をとりのぞくように。