最近、同じ夢ばかり見る。しかも・・・嫌悪な夢だ。
君が私に何かを言って、大粒の涙を流しながら泣いている。
その涙の理由が聞こえない!分からない!!そのおかげで、私は寝不足だ。
解決しない問題に私はイライラしていた。
そこへ、上機嫌な声で私の名を呼ぶ君の姿があった。
「氷室せんせー!おはようございまーす!!」
と言って、私の顔をのぞき込む。私は軽く「おはよう。」と返事を返した。
「最近どーしたんですか?顔色悪いですよ?」
原因が君だということを知らず、何もお構いなしに聞いてくる。
しかし、私もこのことを君に言うことは出来なかった。
言われた本人も困ってしまうだろう・・・。そう思ったからだ。
「問題ない。大丈夫だ・・・。それより、明日の予定は空いているか?」
「明日は親達が親戚の結婚式に出席するから家にいないんで、留守番してようと思ったんですが、
どうしてですか?」
「あっ、いや・・・無理ならよろしい。」
「大丈夫です。尽がいますから。」
「そうか・・・。いや・・・その・・・コホン・・・私の家に来ないか?」
「れっ・・・氷室先生のお家にですか!?」
「あぁ・・・いつもドライブばかりだからな。たまにはその・・・家でゆっくりしようと思ったのだが・・・。」
「はい!是非、行かせて下さい!!」
「了解した。明日9:00に迎えに行く。ちゃんと支度をして待っているように。」
「はい!零一さんのお家か〜えへへ。」
「コラ!その呼び方で学校では呼ぶなと・・・。」
「あっ、すいません。うれしくなっちゃって、つい・・・。」
「以後、気を付けなさい。」
「はい。それじゃ明日、楽しみにしてます!!」
と言うと手を振り、私の側を去っていった。君と会うこと・・・原因解決に繋がる道。
今はこれしか・・・ない。
次の日、私は時間通りに彼女を迎えに行った。昨晩も結局、眠れなかった。早く解決しなければ・・・
そんな気持ちでいっぱいだった。君はまだ支度が出来てないようで、弟の尽が出てきた。
「あっ、氷室先生。おはようございます。ねぇちゃん、もうちょっとで来ますから・・・。」
「うむ・・・了解した。」
そう言うと、尽は私の顔をじろじろ見ながら言ってきた。
「先生、顔色悪いよ?大丈夫?もしかして、ねぇちゃんが原因じゃないよね?」
何でこの子はこんなに鋭いのだろう。姉とはまるで『月とすっぽん』だ。
「いや、大丈夫だ。心配しなくてよろしい。」
「そう?あまり無理しないでくださいよ〜。」
「ごめんなさ〜い。遅くなりました〜〜〜。」
そこへ君がバタバタと階段を下りてやってきた。
「遅い!しかし、そんなに急がなくてよろしい。けがの原因になる。」
「はい・・・すいません。」
「よろしい。では出発する。尽君、姉さんをお借りする。」
「どうぞどうぞ。何なら泊まってきてもいいぜ。連休だし〜。ひっひっひっ・・・。」
その言葉に鼓動が早くなり、顔が熱くなる。それは私だけではなかったようだ。
「尽〜〜〜!!」
君が顔を赤らめてそう叫んでいた。それを聞いて、尽は逃げるように階段を上がっていった。
「まったく、尽ったら〜・・・。」
そう言うと、私を見て恥ずかしながらも笑ってくれた。それを見た私も、知らぬ間に笑みを返していた。
私は君が車に乗り込むのを確認すると、車を発進させた。
「おっじゃましまーす。」
君はうれしそうに私の家へと上がると、キョロキョロと探索を始める。何年ぶりだろう?
自分の家に人を中に招き入れたのは・・・。
「あっ、すご〜い。グランドピアノだ〜〜〜。」
君は防音施設の中にある物を見てびっくりしていた。私は心の乱れを感じたとき、いつもピアノへと向かっていた。
いわゆる、精神安定剤だ。今回も何度か弾いてみたが、解決はされなかった。
「弾いてみるか?」
「えっ、そんな、無理ですよ。」
「楽譜ならたくさんあるぞ。」
「無理ですって!先生が弾いてくださ〜い。」
「なぜ私が弾かないといけないんだ?」
「先生の・・・零一さんのピアノが聞きたいからです。」
「まったく君は・・・そういう時だけ、名前で呼ぶんだな。」
君は『えへっ』と言って、かわいく舌を出す・・・。
「仕方がない。1曲だけだぞ・・・。」
「ありがとうございます。零一さん。」
「何を弾いて欲しいんだ?」
「あまり曲とか知らないから、あの・・・その・・・。」
「はっきりしなさい。弾かないぞ。」
「分かりました。・・・私にあった曲を弾いてください」
それを聞いたとき一瞬びっくりしたが、その後笑いがこみ上げてきた。
「あっ、笑ったー。ひどい!真剣に言ったのに!!」
「くくく・・・すまない。君らしいと思って・・・。」
「うーーー!もういいですっ!!」
君は頬をちょっと膨らませ、そっぽを向いて部屋から出て行ってしまった。ちょっと笑いすぎたか?
でも、そんな君もかわいらしい。
「すまない・・・笑いすぎたようだ。戻ってきてくれないか?」
返事はなかった。足音も聞こえなかった。まだ怒っているみたいだ。私は鍵盤の上に指を置き、
深呼吸を1つするとゆっくり弾き始めた。何故だろう?心が安らいでいくのが分かる・・・。
1人の時に弾いても、こんなに安らぐことはない。今まで感じたことのない、何とも言えない感覚に陥っていた。
曲を弾き終え、1つ息を吐きその場から立ち上がると、私の体に異変が起きた。目の前が歪んでいく・・・。
足下がふらつく・・・。何だこれは・・・?倒れそうになる私。いつからそこにいたのか?
君は私を一生懸命支えてくれた。
「零一さん!大丈夫ですか!?」
「ああ・・・すまない。大丈夫だ・・・。」
「大丈夫じゃないですよ!最近どうしたんですか?すごく顔色悪いです。
何かあったんですか?」
そう言いながら私を膝枕してくれる。しかし、あんな事言える訳がない・・・。
「何でもない・・・大丈夫だ。」
「うそっ!先生、何か無理してる。みんなには分からなくても、私には分かります。ちゃんと言って下さい!!」
君はとても真剣な面もちで私を見ていた。もう君に何を隠しても無駄だと思い、私は目を閉じながら全てを話し出した。
「すまない・・・その、毎晩同じ夢を見るんだ。嫌悪な夢だ・・・。」
「嫌な夢ですか?どんな夢です?」
「君が私に何か言いながら泣いてる夢だ・・・。それを見る度、悲しくて、心が痛くてたまらなかった・・・。
眠ることなどできなかった。しかしそんな事、君に言えなかった。」
「そんな事なんかじゃありません!!」
突然した大きな声に驚き、私は目を開けた。そこには、泣いている君がいた。大きな滴が私の顔へ次々と落ちてくる。
「なっ・・・!?」
君は私の顔を見下ろしながら、強い口調で話し出した。
「何でそんな事なんかになるんですか?何で一言、言ってくれないんですか?お互いの悩みを聞きあうのが、恋人じゃないんですか?」
ボロボロと次から次へとこぼれてくる涙・・・。ふと気付いた。これは・・・。そう・・・
夢で見たものと同じだったのだ。『正夢』・・・正しくそれだった。私が君に話さずにいた事は、
余計に君を苦しませてしまった。あの夢はこれを気付かせる為のモノだったのだ。しかし気付かなかった。
なぜ、今まで気付かなかったんだろう。本当に私は馬鹿だ・・・。そう思いながら、
ゆっくりと自分の手を彼女の顔へと持っていった。
「すまなかった。これからは言うようにする。だから、どうかもう泣かないでくれ・・・。」
「零一・・・さん。」
私を見つめる君の熱い眼差し。段々と鼓動が早くなっていくのが分かった。顔も多分赤いだろう。
「ありがとう。」
私は感謝の気持ちを込めて、自分に出来る最高の笑みを君に見せた。次の瞬間、それは空から降ってきた。
君のとても優しい唇だった。唇はすぐに離れ、君も私に笑顔を見せてくれた。
時間はまだ昼前、しかし問題が解決した私は、途端に睡魔に襲われる。
「すまない・・・こんな事になってしまって。」
「いいんですよ。気にしないで眠って下さい。」
既にベッドで横たわってる私に優しく声を掛けてくれる。
「私、起きるまでずっと待ってますから。」
「いや・・・その・・・頼みがあるのだが。」
「えっ、なんですか?」
私は言うのが恥ずかしくて口ごもってしまう。そんな私とは反対に君はストレートに言ってくる。
「ちゃんと言ってくれなきゃしませんからね!」
「あぁ・・・分かった。しっかり言う。」
今回ばかりは君のペースだった。心の決断をし、私はゆっくりと君に言った。
「隣に・・・側にいて欲しい。君と一緒に眠りたい。」
「よろしい。」
君は私の真似をしてにっこり笑うと、寝ていた私の隣へと来てくれた。今まで感じたことのない暖かなそのぬくもり。
それは今日、ピアノを弾いたあのときのような感覚だった。お互い見つめ合い、軽く唇を合わせた。
しばらくすると君が私に問いかけてきた。
「零一さん、さっき弾いてくれた曲、何ですか。」
「・・・秘密だ。」
「あっ・・・ずるい。教えてくださいよ〜?」
「起きたら・・・な。」
そう軽く流しておいた。やっぱり私の方が上手か?そう思いながら静かに瞳を閉じた。
♪Fin♪
以上で終わりなんですが、多分、続き書くと思います。ちょっと危ない方向に行きそうなのですが・・・・・。
皆様がこんなヘッポコでも「よろしい」と言って下されば、またお送りしたいと思います。お返事お待ちしてます。
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