nayami
悩み相談



ドリー夢小説




「今日はずいぶんおとなしいな」

久しぶりに先生と帰れるっていうのになんだかいつもみたいにはしゃげない。

なるべく、明るく振舞うようにはしてたんだけど・・・先生にはかなわない。

「・・・どうかしたのか?その・・・最近、あまり調子がよくないように見えるが」

「先生、心配してくれるんですか?」

先生、冷たいって言われてるけどほんとは人一倍、生徒のこと見てますよね。

でも・・・あたしはその生徒たちの一人、じゃイヤなんです。

「今日の授業中も半分は上の空だったろう。君らしくない」

ごめんなさい。でもちゃんと先生の指されたときには答えられましたよね。

ひやひやしましたけど。

「・・・そんなことないですよ。大丈夫です。いつもと変わりませんよ」

「私の目をごまかせると思っているのか。目が赤い。ろくに睡眠もとっていないのではないか?」

先生の細められた目。

そんな表情すら今のあたしには直視できません。先生。

「先生の好きなタイプって、どんな子ですか?」

「・・・・・」

「・・・。君には関係ない」

先生のため息だって、あたしを呼ぶ声だって・・・一見冷たそうな言葉だって。

・・・こんなにどきどきしちゃうんです。

「でっでも、ものすごく気になって授業が手につかないんです」

ふざけて聞けば、少しでも教えてくれるかしら。

先生に好かれるにはどうしたらいいのか、ヒントだけでもいい。

知りたい。

「まったく君は・・・もう少し有意義な質問はないのか」

「ありません!」

「私が答えれば君は今夜から十分な睡眠をとることができ、明日からの授業にも集中できるんだな」

「も、もちろんです!」

多分・・

「好きなタイプは・・・」

「好きなタイプは?」

「・・・つまらない質問などせず予習復習を怠らない向学心旺盛な女子生徒だ」

「・・・・それって先生として、生徒がかわいいってことじゃないですか。好きなタイプっていうのは・・」

「恋愛対象として、ということだろう。先ほどの答えは・・・限りなく特定したつもりだが」

・・・?

「わかりません」

と答えたあたしの顔を数秒凝視した先生が小さくため息をつく。

え?え?今の答えってなにかヒントだったの?

聞いても教えてくれないのはわかってる。

でも聞きたいことは他にも山ほどあるんです。先生。

「あの・・どうして人を好きになると、その人のことしか考えられなくなっちゃうんですか」

もうすぐ、信号が青になる。ずーっと赤で、ずーっと一緒にいられたいいのに。

「恋愛というのは脳内物質のいたずらだという話をしたと思うが」

なんでそんな穏やかな顔してそんなこと言うんですか。

あたしが子供だから?

恋をするのも、胸が痛むのも、子供だからですか?

もしかして脳内物質のいたずらっていう話も、しつこいあたしに閉口して・・・いやいや、先生はそんなことで

適当なこと言う人じゃないよね。

「好きな人のこと考えて、ちゃんと勉強して、バイトして、食事して、寝て、空いた時間に好きな人のこと考えるだけじゃ

だめなんです。あたし・・・おかしいのかも」

なっちんに相談したら、それが恋ってもんよ、なんて簡単に言ってくれたけど・・・

でもあたしは好きな人に振り向いてもらうには勉強ができなくちゃいけないのよ。

「どうしたら・・・いいんですか」

先生が恋したときは、そんなことなかったんですか?

どうしたら・・・勉強にも身が入って、恋をしつづけられますか?

もう・・・好きでいるの、やめることできないんです。

学校から家につくまでの2つ目の信号。

ここでも信号待ち。

あたしの想いが通じたのかしら。

「先生は、どうでしたか?恋をしたとき」

「そうだな・・・」

先生は思案するように口篭もり、あたしの頬に触れた。

頬が熱い。

触れられたところからあたしの気持ちが知られてしまうんじゃないかと思うくらいに。

こんな気持ちも、大人になると消えちゃうんですか?

あたしももう少ししたら・・・忘れちゃうんですか?先生のこと・・・こんなに好きな気持ち。

「大人になれば、自分を制御することができるようになる」

あたしは自分のこと大人だって、思ってた。

自分の行動に自信がなくて、自分の想いさえもてあます。

「・・・大人に、なったら?」

あたしはいつ、大人になるの?

大人になったら先生につりあうような女になれる?




「先生っ」

突如、さえぎられた視線。

唇におしつけられた温かくやわらかい感触。

次の瞬間信号が青になり、先生の視線は前方へとうつる。

「・・・これで少しは、安心したか」

安心なんて・・

「・・・もっと・・・どきどきしました・・・」

それはもう、心臓がひっくり返りそうなくらい。

「君の悩みのうちのひとつくらいは解決したか」

「・・・・・・・・・先生・・・あたし・・先生に好かれてるって、思っても・・思っても、先生、困りませんか?」

「私にもたまには悩み、眠れない夜くらいある。・・・君の話を聞いて私の悩みも少し軽くなった。

なぜだかわかるか?」

それって・・・

「・・・・まさか、先生もたまにはあたしのこと思って眠れなかったり・・・・するわけないですよね」

あーあ、口に出していわなきゃよかった。恥ずかしい。

「どうしてそう思う」

え?

「ほんとに・・・?」

「さあ。ついた。帰って今日の復習と明日の予習だな?明日からまたいつもの君に会えるな?

赤い目をして元気のない君ではなく」

気が付けばもう家の前。

どうしてこう楽しいときは過ぎていくのが早いんだろう。

「あ、ありがとうございました。先生。今日はぐっすり眠れると思います。明日から、またがんばります」

「ああ。期待している。・・・その、誤解のないように言っておくが」

君は鋭いほうではないからな。と独り言のように続ける先生。

「先ほどの・・・あれは、だ」

「あれ?」

「・・・君にした・・・キスは、誰にでもするものではない。私の生徒だから、したわけでもない。それだけだ」

「先生・・・」

「失礼する。気をつけて帰りなさい。それではな」

先生・・・気をつけて帰るもなにも・・・家の前です。

「さようなら、先生。ありがとうございました」

先生はあたしの言葉に1度振り返ってから、すべるように車を発進させた。



先生ごめんなさい。きっと今夜もどきどきして眠れません。