insomniac night






ドリー夢小説

「本日付でTERRA配属となったです。よろしくおねがいします」

「功刀だ。君には諜報部第1諜報課で活動してもらう。よろしく」

「よろしくおねがいします」

「亘理。よろしく」

「よろしくおねがいします」

眼帯している優しそうなおじさん・・じゃなくて長官と、

眉間に皺がよってる司令官、

童顔の副司令官と、線が細い研究員チーフか。

なんて覚えやすそうなメンバーなんだろう。

みんな同じ顔してた連合とは大違いだ。


下がっていいと言われ指令センターに向かいロビーにでる。

「あれ?新しい人?」

自販機に向かっていた少年が振り向いた。

「本日よりTERRA配属となりました少尉です。

よろしくおねがいします」

「よろしく。ぼくは神名綾人」

はにかんで差し出された手は意外に大きい。

「神名さん・・・ラーゼフォンのパイロットですね」

「え?どうして知ってるの?」

彼女が連合からの異動ということは管理者だけが知っていることだった。

TERRAは連合の配下に位置するとはいえ、お世辞にもいい関係とはいえなかったから。

「勉強してきましたから。よろしくおねがいします」

ラーゼフォンのパイロットって・・・こんなに若い子だったんだ・・・

なんだかちょっとショックだった。

「あ、遥さん」

その彼が元諜報部だというあたしの直属の女上司を呼びとめた。



「綾人くん」

呼ばれた紫東大尉は嬉しそうに駆け寄ってきた。

「あら。えーと・・さん、だったわよね」

「はい。紫東大尉」

「あら?五味くんは?」

紫東大尉がきょろきょろしても、ロビーにはあたしたち3人しかいない。

「・・五味さん、ですか?」

「遥さん。五味さんなら今勤務中だと思うよ。指令センターにいたから」

「え?あら。あたしじゃあ連絡するの忘れてたのかしら。さんの

案内を頼もうと思ってたのに」

有能そうなこの上司も、少しぬけてるところがあるらしい。

なんだか憎めない感じだ。

「じゃあぼくが案内しようか?もう結構慣れてきたし、訓練は午後からだから」

「あ、ああ・綾人くんが?」

「うん」

紫東大尉・・一人で慌ててる。



「おや。みんなおそろいでちょうどいい」

「亘理長官!」

両手に紙袋をもってふらっと現れた黒ずくめの長官。

「こんにちわ」

「やあ。こんにちわ。綾人くん元気そうだね」

「はい。亘理さんも」

「亘理長官、今回はどこに行かれたんです?」

「今回は京都に行ってきたんだ。はい、おみやげ」

「・・・八つ橋、ですか」

亘理長官の紙袋から次々と薄い箱がでてくる。

「そーう。ええと綾人くんにチョコ味。紫東大尉にはシナモン。

おお、くんもいたか。じゃあ君には・・・あんこだな」

「亘理長官、あんこって全部あんこじゃないですか」

綾人くんがの手元を見て笑う。

「え?そうなの?」

「チョコ味って皮がチョコじゃなかったっけ?」

「おや、そうだったかね。嫌いじゃないかな?」

表情だけ不安そうにして、に尋ねた。

「好きです。ありがとうございます」

「ところでくんの案内の話をしていたね」

「はい。私の手違いで・・」

「私は今日はあと帰るだけなんだ。よければ私が案内しよう」

「長官が?!」




「ああ。構わないだろう」

「は、はい。でも・・いいんですか?出張から戻られたばかりじゃ」

遥さんの心配もなんのその。

「いいんだよ。家に帰って女房子供が待っているわけじゃないしね。さ、じゃあ行こうか」

あたしの肩を軽くたたくと、指令センターに向かって歩き出した。

「は、はい。それでは失礼します」

頭をさげたあたしの向こうで綾人くんが手をふった。

「またね」





「君は綾人くんと年も近そうだね」

「は、はい」

「・・そんなに緊張しなくても大丈夫。ここは半分以上が君くらいの年の人間ばかりだ」

「はい」

「さっきの2人はできてるみたいだからね」

「ああ・・それで紫東大尉は綾人くんが私の案内をすることに消極的だったんですね」

できてるみたい、だって。

なんてフランクな長官だろう。

「君は京都に行った事はあるかい?」

「はい。学校行事で行きました」

「ほほう。修学旅行かね」

「はい」

「どうだった」

「そうですね・・・枕投げをしました」

その答えに亘理長官は隠れていないほうの目を丸くして、笑い出した。

「あっはっはっは・・・・枕投げか」

「町並みがどうだったか・・あまりよく覚えてなくて。金閣寺がきれいだったとか、奈良公園

の鹿に追い回されたとか、つまらないことしか思い出せなくって」

「つまらなかったのかい?」

「・・・いえ。つまらないことしか言えないってことです」

「いやいや。つまらなくなんかないよ。私なんかホテルで会議してホテルでお土産を買った

だけだ。観光もできなかったよ」

「お忙しいんですね。案内なんてしていただいてよろしいんでしょうか」

「迷惑だったかな」

「迷惑なんてとんでもないです」

偉い人なのに、一緒にいるとなんだか安心できる気がする。

「それならこの話はもう終わりだ。いいね」

「はい」

黒い手袋に覆われた人差し指が、長官の眼前にいちをたてた。

おちゃめな人だなあ・・



「最初に会った部屋が司令官室。ロビーにでるまでに2つ部屋があったね。あれは

来賓室だ。わたしの部屋はここにはないから、大抵顔を出すとしたらあそこの

2部屋のどちらかにいる。気楽に尋ねてもらってかまわないよ」

「はい」

「で、ここが指令センター。これはモニター」

副司令官やオペレーターにあいさつしながら、全体を一望できる2階へ。

ここには大きな立体モニターが3つ。連合で使っているものと同機種らしい。

緑も多いし、オペレータ同士の感覚が広い。

清潔感がある白い、空間。

その中央にあるあれはなんだろう。

「あのレリーフはなんですか」

「ラーゼフォンに乗り込む時の転送装置らしいね。私は実際見た事はないんだが」

「転送装置・・ですか」

あそこから・・・ラーゼフォンに乗り込むってことかな。

「さあ、次行ってみよう」



「モノレールで下に行こう」

モノレールは陽が入るしすごく景色がよかった。

「ここは主に職員が生活するフロアだな」

「はい」

メディカルルームに入ると、予想していた消毒液などににおいはしなくて、見たことのない

青い花が飾られている。

「誰もいないね。如月博士、さっき紹介されたね。彼に会う時はここか、もしくはあとで案内

するネリヤ神殿にいるはずだ。体調が悪くなった時はここにくるといい」

「はい」

亘理長官が少し目を細めて誰もいないベッドを見た。

笑顔ではなく、悲しく、なにかを諦めた表情だった。



「ここはリフレッシュルーム。奥のバーカウンターでお酒が飲める。

君は未成年だったっけ」

「いえ。23です」

「そうか。それと簡単な軽食も扱っている。なかなかうまいよ」



さらにモノレールを乗り継いでネリヤ神殿に入る。

「ああ、いたいた。如月博士」

「長官。ああそれと・・さん。だったね」

「はい。如月博士。よろしくおねがいします」


彼は一人で巨大な神を見ていた。


「どうしたんですか?」

「ああ、今彼女を案内して回っているところでね」

「それはよかったですね。ここに来たってことはもう大体は見て回ったんですね」

「ああ。ここが最後だ。どうだ。感動ものだろう」

両手を前に結んでその巨神を見上げた。

緊張してなのか感動してなのか・・・体が震えた。

あたしはこれを見る為に、TERRAにやってきたのだ。





「ありがとうございました。亘理長官」

「いやいや。楽しかったよ。こちらこそありがとう」

「お土産も、ありがとうございます。帰ったら頂きます」

「それじゃ」



杖なんてほんとはいらないんじゃないかと思う足取りで、駐車場に向かう亘理長官を見届

けてから指令センターに戻った。










「お帰りなさい。どうだった?以外と広いでしょう」

「はい」

「ネリヤ神殿は案内してもらった?」

「はい・・・・感動しました」

あれが・・・戦う巨神。

その姿を間近に見たい、と思っていた。

綾人くんに会うまでは。

あんなに若い彼に・・・人の命を背負わすのはどうかと思う。

彼にしか扱えないっていうのはしょうがないとは思うんだけど・・

「そう。それじゃあ早速だけど解析を手伝ってくれるかな」















「こんにちわ。亘理さん」

「おお。くん。どうだい。ここの仕事は」

「毎日充実しています。秘密の仕事って楽しいですね」

「あはは。そうだろう」

「昨日まで台湾に行ってたんです。おみやげです」

「おみやげ?嬉しいなあ。ありがとう。なにかな」

「飲茶です。好きですか?」

「飲茶は大好きなんだよ。ありがとう」

「それでは、失礼します」

そんな会話が楽しみで、あたしは出張のたびに、亘理長官にお土産を買って帰った。

亘理長官は艦内にいることがすごく少なくて、3回に1度、会える程度だった。

しかもお土産もってうろうろうろうろしてるもんだから、大人しく来賓室にいたことなんて

数える程度しかない。

最近では亘理さんに渡すお土産を持ってうろうろしてるあたしに、みんながあそこで見た

ここで見たって声をかけてくれたりする。

ありがたい。

「あ、今日は亘理さん来てたのか」

「はい。残念でした」

「こないだのサバ寿司うまかった。ありがとう」

「どういたしまして」

3回に2回の亘理長官へのおみやげは、五味さんや四方田さん、キムたちオペレーターで

一緒にあけたりした。

年代が近いって楽しいなあ。





「亘理さん・・・お疲れみたいですね。大丈夫ですか?」

「いやなに、平気だよ。はい、おみやげ」

「ありがとうございます。いつも楽しみなんです」

「私もだよ。最近おみやげを配っていても君が出張中だと妙に寂しくてね」

「わたしもです。亘理さん」

「そうか」

「はい。それじゃあ・・失礼します。ありがとうございました」

「はいはい」

今度は司令センターからでてきた八雲大佐にかけよってお土産を渡している。

亘理さんがいつか気づいてくれたらうれしいんだけどなあ。

あたしが亘理さんにだけお土産買ってきてること。

まあ、そんなこと言わなきゃわかんないよね。

ちゃんどうしたの?なに飲むか迷ってるの?」

「あ、五味さん」

いえいえ。考え事です。

「なにがおすすめですか?」

五味さんはコーヒーは目が覚めるよ、といってまた本に目をおとした。

「外は暑そうですね」

「そうだね。最近熱帯夜が続いて眠れなくて困るよ。君も?」

「ええ」

それだけじゃないけど・・・眠れなくて困ってます。







・・・・・・・・どうしてもどうしても眠れない。

羊をいっくら数えても眠れない。

クーラーをつけてもだめ。

・・・海の、波の音が気になってどうしようもない。



「!・・・こんばんわ・・・亘理さん。六道博士」

くん。どうしたんだね。こんな時間に」

「眠れなくて・・・」

海が月を反射して、海辺がすごく明るかった。

そこに2つの黒い影。

「こんばんわ。君も海の音を聞きに来たのかい」

そっか。あたし海の、波の音が気になってたのは・・海に呼ばれてたのかな。

「・はい・・・お二人も?」

「ああ。・・・・そうだよ」

二人の話に入っていってはいけない気がして、少し後ずさる。

でもあたしが来るまでの会話は途切れてしまった。

深刻そうだった。

タイミングが悪かったな。

そう思ってあたしはは海に近づく。

サンダルが、素足が水に触れた。

冷たくて気持ち良くて、さらに足を進める。

「危ないよ」

肩に手をおかれるまで側にきたことに気づかなかった。

「わっ!」


「驚かせてしまったね」

優しく私の腕をひく。

どさくさに紛れて亘理長官に軽くもたれると、力強く暖かい。

「六道博士は・・どちらに?」

「彼は帰ったよ。姪御さんたちが心配するから、とね」

「そうですか」

「なにか用事があったのかな」

「いいえ・・・ありません。亘理さんももう帰られるんですか?」

「君は帰らないのかい」

亘理長官ともっと一緒にいたい。

そんなこと口にするわけにも行かず、黙って立っていた。

いつのまにかあたしは亘理長官の胸の前、両腕にはまっている。

聞こえるのは海の音だけ。



亘理長官はあたしが帰るって言い出すのを待ってるのかな。

でも、こんな風に・・・亘理長官が後ろから抱きしめてくれるならあたしはいつまでも帰れない。



亘理さんは大人だから気がついてない振りをしてるのかな。



・・・って呼んでもかまわないかな」

「はい」

クルーの仲間たちはそう呼んでいた。

まだ一番の新人とはいえ連合での実績もあり、TERRAに所属されてから半年がたとうとし

ている。

「同じ母音が続くと発音しづらくてね」

亘理長官の言い訳。

「職場には慣れたようだね」

「はい。皆さん親切だし、優秀ですし。学ぶ事がたくさんあります」

「そうかそうか。・・・最近ネリヤ神殿によく足を運んでいるそうじゃないか」

「はい」

一般職員がこんなに簡単に研究中の遺跡に、しかも最重要機密兵器に近づけていいのか、って

いつも思ってた。

やっぱり注意されるんだろうなあ。

「誰がお目当てなのかな」

冗談めかした亘理長官の台詞。怒られるんじゃないのかな?

「・・・ラーゼフォンです」

「・・・・・」

「亘理さん?」

あっはっは・・・

片手であたしを抱いたまま、もう片方の手で前髪をかきあげながら亘理長官が笑う。

「どうしたんですか?」

「そうか。もしかして連合からTERRAへの移動を希望したのは・・」

「ラーゼフォンを間近で見たかったからです」

亘理長官の笑いはとまらない。

「・・どうだい?感想は」

「ぞくぞくしました。それと・・・戦っている姿を見たいとも思ってたけど・・・・今はそうでもないです」

「綾人くんと会ったから、かな?」

「はい」

人だろうが人じゃなかろうが、命を奪うために戦うには若すぎる、と思った。

「彼を気に入ったかい?」

「綾人くんですか?いい人ですね・・・亘理長官に似てる」

「・・・息子だからね」

「・・・」

「知ってたんだろうね。君は。連合でも優秀な諜報部員だったそうだから」

「・・はい」

「私は少し息子に嫉妬したんだよ」

「!」

「馬鹿な親だ。親らしいこともしてやれずに」

「・・・綾人くんは知らないんですか・・」

「知っているのは六道博士と如月くん、それと功刀くんぐらいかな」

「もし・・私が知らなかったら、亘理さん、大変な発言になっちゃいますよ」

「牽制したつもりなんだよ」

「・・・・・・牽制、ですか」

「この年になってね・・・自分でも驚いてしまうよ」

「亘理さん?」

それって・それって・・・

「・・・仕事も順調なようだね」

「はい」

「君が私から逃げないのは上司だからかな?」

今更ながら亘理さんの体を感じて緊張する。

体が強張ったのが伝わってしまったかもしれない。

恐いんじゃないんです。

上司だから、逃げないわけでもないんです。

「亘理長官」

「なんだい」

つられて亘理長官も身を硬くした。

なにかを宣告される事を怖がるように・・・まさか・・そんなことはないよね。

「私、亘理長官のこと好きです。綾人くんが遥大尉を好きなのと同じ、好きです」

牽制、嫉妬。

亘理長官なりに・・・好意をもってくれていることを示してくれたという想いが

あたしの背中を思いっきり後押しする。

「もちろん、仕事に支障をきたしたりしませんし・・亘理さんになにかを望んだりもしませんけど・・

ただ・・伝えときたくて」

またも訪れる沈黙に、つい謝ってしまう。

「・・ご迷惑でしたね。申し訳ありませんでした」

まわされた腕に力がこもった。

「この手を放したくないと思ってしまう僕を大人げないと思うかい」

「・・・いいえ」

そんなこと思うわけない。

できれば放さないでほしい。

「あれ?亘理さん?」

波の音に誘われたのか、また一人近づいて・・・って知ってる人に見られたらまずいんじゃ・・

「綾人くん。こんな時間にどうしたんだい」

あ・綾人くん?!

「あれ・・・、さん?」

あたしの顔を覗き込んで確認した綾人くんと目があうと・・・お互い音が聞こえるかもしれないって

くらいに赤くなった。

亘理長官はそれを見ても腕をとこうとはしないからあたしも逃げない。

こういうのも年の功というのか亘理長官の表情だけが読めない。

「あの僕・・六道のおじさんを探しにきたんですけど・・こっちじゃないみたいですね」

「さっきまでいらしたんだが・・・もしかして」

綾人くんと一緒に亘理長官が視線を巡らすと、ゆっくりとこちらに歩いてくる六道博士の姿を見える。

「おじさん」

「先生」

両手を後に組み、ゆっくり近づいてきた六道博士は、しまった!という表情をしていた。

「先生。帰ったんじゃなかったんですな」

「いやなに。ちょっと心配になったもんでな」

「・・心配って」

綾人くんとあたしの声が重なった。

「亘理がこっぴどくふられたら、なぐさめてやろうかと思ったんだが・・杞憂だったようだな。

よかったよかった」

!!!

「よかったって・・・と・・・亘理さん?」

信じられない、という綾人くんを六道博士がせかす。

「さあじゃあ安心したところで帰ろうか。綾人は明日も朝から出勤だろう」

「僕がおじさんを探しに来たのに」

「ありがとう綾人。じゃあな、邪魔したな」

「おやすみなさい、六道博士」

「おやすみなさい」





じきにあたしたちは黙ったまま歩き出した。

いつまでも二人とも帰ろうとは言い出さず、かといっていつまでも海辺にいるわけにいかないことも

わかってたから。

二人の帰り道の分岐点までくると、自然に足が止まる。

「おやすみ。

そういって亘理さんが額にキスをくれた。

「亘理さん・・おやすみなさい」

なごり惜しげに離れた亘理さんの体温を逃したくなくて、あたしはおでこに手をあてて、振りかえった。

少し離れたところで、同じタイミングで亘理さんも振り返っていて、手を振ってくれた。

早く帰りなさい、とでもいうように。

あたしも手を振った。

早く帰って、って。

そうじゃないとあたし・・いつまでもここに立って亘理さんの背中見ちゃうから。










「おはようございます。亘理長官」

「ああおはよう。。隈ができてるね」

亘理さんの指があたしの目の縁をなぞった。

・・・心臓が破裂しそうなくらい、ドキドキ。

「・・・お疲れじゃないですか?」

「ああ・・・あ〜あ・・・」

亘理があくびをするとあたしにもうつる。

横を向いてかみしめていると、側にきた遙さんと綾人くんにも伝染した。

「ふあ・・あっ!亘理さん・・と・・」

「おはようございます・・夕べも熱帯夜でしたね」

「おはよう。寝苦しい夜が続くようだね」

「ですね」

「さてと。わたしはこれから会議だ。失礼するよ」

一瞬だったけど亘理さんが視線を投げかけてくれた。

二人の間が縮まった錯覚を感じてしまうような。

錯覚じゃないといいんだけどな。

亘理さんの背中がシャッターに消えるまで、あたしは夕べのことを思い出して額を押さえながら

見送った。

「さてと・・・遙さん。昨日の資料作りの続きやります」

「え、ええ。そうね。気合はいってるわね」

「はい」





今晩もまた・・・眠れなかったら海に行ってみようかな。