shower
shower of tears








ドリー夢小説


「きゃー先生!!雨宿り雨宿り!!」

突然の雨。

君ははしゃぐように笑っていた。

全身に雨が染み渡るように濡れていくさまを見ていた。

どうして俺は君の手を離したのだろう。

雨に濡れたあの日から眩暈を起す事が多くなった。

己の後悔を嘲笑うかのように。




次第に疎遠になっていった。

それだけが理由ではない、と同時にそれが理由でもない。

要は二人の距離を埋める事ができなかった。

過ちを犯したとは思わない。

ただ・・・

君が、頭から、心から、離れない。

いっそ忘れてしまいたい。

心の中の君の面影を、つかんでひきずりだせるものならそうしたかった。

それでも君は、消えない。




「零一・・・顔色悪いぞ。今日は早く帰ったほうがいいんじゃないのか?」


「余計なお世話だ」

なにを八つ当たりしている。

自分でも分かっている。

こいつは俺の心配をしてくれているだけなのに。

「・・・・・ちょっと根詰めて働きすぎじゃないのか?」

「そんなことはない」

仕事に打ち込んで彼女のことを忘れられるなら、大歓迎だ。

「・・・・もう帰れ」

最後通告。

手の中にあった冷たいグラスは、いつのまにかカウンター越しの幼なじみの

手で奪われていた。

「・・・・悪かった」

彼女を失った俺には居場所がない。

家にも、学校にも、眩暈という行為にすら彼女への想いに繋がってしまう。

そうだ。

彼女の面影が、消えるわけがない。

俺の未練が消えないだけだ・・。

「・・・もう店もお開きだから。ウチに泊まっていけよ」

幼なじみの声にようやく俺は立ち上がった。




生活指導と称して街中をさまよう休日。

たまに見かける彼女の後ろ姿。

楽しそうに腕を組むのは彼女の同級生だった男子生徒。

私の生徒だった葉月。

彼女の気づかれず、幾度となくその姿を目に焼き付けた。

もう・・わたしのものではない少女を。

その度に牽制するように突き刺さる葉月の視線。

彼は常に真っ先に気が付く。

私の視線に。










がたまに見せる辛そうな笑顔。

俺は知ってる。

は隠してるみたいだけど。

まだはあいつを想ってる・・・


「珪くん。雨ふっちゃったね。どうしよっか」

さすがに雨の中遊園地はつらいものがある。

「・・・家にいよう。どっか、行きたいとこ、あるか」

を連れて外に出ればいろんな男の視線にさらされる。

彼女の笑顔を、全てを独占したい。

自分だけが彼女を見ていればいいのに。

いつもそう思うのだが・・・かわいい彼女は意外にアウトドア派でじっとしていてはくれない。

「そうだね・・たまにはゆっくりしてようか」

ほら、彼女の笑顔に俺はまた癒されてる。

だから・・・・

彼女すら気が付いてないかもしれない、

彼女の本当の気持ち。

本当に好きな人。

それを知っても俺は・・おまえを離せない。

「ああ・・・お茶、いれてくる」

「あたしも手伝うよ」




「・・ごめん。なんにもない」

冷蔵庫の中は・・・からっぽだった。

そういえば最近食事は外で食べてたから…冷蔵庫を開けたのも久しぶりだ。

「なんにもって・・・なんにも?」

「・・・ああ」

「・・・珪くん、もしかして・・・朝ご飯食べてないの?」

「・・・食べてない」

「駄目じゃない。もー。朝ご飯は一日の活動のエネルギーになるんだからー。

あたしそこのコンビニでなにか買ってくる!」

「俺も行く」

「いいよ。待ってて。雨もひどくなってきたし」

「じゃあおまえ、待ってろ」

「・・・一緒に行こっか」

「ああ・・少し、足伸ばして・・・商店街まで行こう」

「うん!」




「飲み物と、お昼ご飯かわなきゃね。なにがいい?あたし作るよ」

「…」

「珪くん?…先生!」

「・・・こんにちは」

・・不意打ちだった。

氷室先生は卑怯だ。

・・・・彼女の気持ちを知ってるくせに・・

なにも言わない。

「こんな雨の中・・・・乗っていきなさい。家まで送ろう」

「え・」

「いえ。大丈夫です・・傘もあるし」







「え・・珪くん・・・ちょっ・・どうしたの?」

傍目から見ても強引にの手をつかんでひっぱっていこうとする葉月。

痛がる彼女に・・触れてしまった。

「葉月。手を放すんだ」

触れた彼女の柔らかい手から甘い痺れが走る。

同時に、また眩暈。

「!」

葉月の手が離れても・・俺は彼女の手を放す事ができないでいた。

「・・・肩が濡れている。送っていく。乗りなさい」

「・・・・先生。俺、今と付き合ってる」

唐突な葉月の言葉。

・・・唐突、ではないか。

彼は全身で叫んでいたではないか。

彼女に触れるな、彼女は自分のものだと。

「・・・それと雨に濡れる事は関係ないだろう」

「・・・好きな、女と一緒なら・・雨に濡れるのだって・・・楽しいんだ」

そうだよな、とに視線を送る。

「う、うん・・・」

こういうのは世代のギャップとは言わないのだろう。

感性の問題か。

彼女と私の間の壁は・・年齢という壁だけではなかったということか。

「・・・なんで・・」

葉月の言いたい事はわかった。

なぜ声をかけてしまったのか。

・・・俺にも予測不能だった・・

「俺は・・に、先生のこと忘れさせられる自信があった・・・・だから・・

ゆっくり、時間をかけて、付き合っていこうとしてた。なのに・・」

「珪くん・・・」

「なのにどうして」

彼の冷ややかな言葉が突き刺さる。

彼の言う事が正しいからだ。

「・・・君を、忘れられなかった」

「先生・・・そんなこと」

彼女のその言葉が、拒否を表すのか驚愕をあらわすのか、どちらでもよかった。

ただ・・もう口にしてしまった言葉は戻せない。

「今でも愛している。・・・・それを伝えたかった」

たとえ彼女の心を取り戻すには手後れでも、知っておいてほしかった。

愛していなかったから、別れたわけじゃなかったこと。

今でも、君を想っていること。

「・・俺はずっとを見てた。がしたいようにしてほしい」

「・・・珪くん・・あたし」

「俺は・・・を泣かせたりしない。でも・・・に泣かれるほど、想われてるのが俺だったら

いいと、思ってた」

「・・・ごめんね珪くんあたし」

「・・・・いい・・・言わなくて」

彼女は葉月になぜ謝るのか。

眩暈がひどくなる・・・・





「先生!」

なんだ騒がしい。もう少し静かに・・・

「・・・?」

「先生!気が付いた?よかった・・・」

ふわふわとしたその感触は自分のベッド。

「ここは・・」

「先生のお宅です。勝手に開けてごめんなさい。珪くんが先生のこと運んで、車運転して・・」

失ってしまったはずの彼女が自分の家で泣いている。

それなのに・・かける言葉が見つからない。

「先生・・・大丈夫?今からでも病院にいったほうがいいんじゃないですか?」

「いや・・・大丈夫だ」

「あ、まだ起きないほうがいいです。なにか必要ですか?

とってきます」

「それより・・・君はもう帰ったほうがいい。私なら大丈夫だ。ありがとう」

「ほんとに大丈夫ですか?熱はないみたいですけど・・病院に行くなら」

「かまわないでくれ」

…どうしてこうなるんだ。

「・・すまない」

「いえ…ごめんなさい…」

うつむいたまま動こうとしない彼女。

なにか優しい言葉をかけてやりたい。

彼女に逢ったら言いたかった言葉は今、ひとつもでてこない。

「・・先生」

足元のかばんを拾い、立ち上がる彼女が口を開いた。

「…なんだ」

「あたし、まだ先生のこと・・好きみたいなんです」

次の瞬間、私は足早に部屋を出ようとする彼女の腕をつかんでいた。

「・・・・・・・・・・・」

「せんせえっそんなに急に立ち上がったら・・」

「愛している・・

「・・・・・・・・・・・・・うそ」

・・・」

「先生あたしに気ぃ使ってるだけでしょ」

「先ほど言った言葉を・・君は聞いていなかったのか」

彼女の耳には届いていなかったのか?

「…ほんとに?せんせ・・・・」

「君と・・やりなおしたい。本当だ。君が・・俺と同じ気持ちでいてくれたことがとても・・うれしいんだ」

「だって・・・・・・・・・だってせんせぇ・・・」

「だって・・なんだ?」

「あたし・・・ずーっと先生に迷惑ばっかりかけてたから・・それで先生あたしのこと嫌いに」

「違う!違うんだ…言い訳にしかならないが…君を、忘れたことはなかった。

ただ・・忙しさにかまけて・・すまなかったな。君をかまってやれなかったことをすぐに

後悔したよ。君から連絡がこなくなって…正直辛かった」

「せんせぇ・…あたしも淋しかった・・もう離れたくないの…一緒にいてもいいの?」

「ああ。俺も…君と離れたくない、そばにいてほしい」

君の華奢な体をがんじがらめに絡めとる。

押し付けた唇は私を受け入れてくれる。

彼女の笑顔が自分だけに向けられる、幸せ。

「・・もう二度と、離さない」