設定資料



近日中に入荷予定の小説の資料が届きましたので
一足先にご紹介させて頂きます。



タイトル・・・「未定」


登場人物


名前・・・ユウヤ

年齢・・・14才

性別・・・男

「桜川精神病院」に入院する中学2年生。
性格はおとなしく、いたって健康な少年であった彼だが、
中学に入ってまもなく「夢遊病」と診断され、入院。
現在、1年近くになる病院生活を、半ばあきらめた様子で過ごしている。
この物語の主人公。


名前・・・シオリ

年齢・・・?

性別・・・女

主人公と同じく、「桜川精神病院」に入院している少女。
いつも屋上で、一日中海を眺めている。
病院生活は長いようだが、詳しい事は一切不明。


名前・・・桜川 響子

年齢・・・2?才

性別・・・女

職業・・・精神科医

「桜川精神病院」の医師。主人公の主治医。
某超一流大学で、心理学・精神医学を修めたエリートカウンセラー。
しかし、まわりの人に与える印象はその欠片すら感じさせない。
・・それが、カウンセラーとしての力なのか、
それともただの「地」なのかは謎である。
父は院長。


名前・・・後藤 竜司

年齢・・・34才

性別・・・男

職業・・・無職

主人公と相部屋の男。
末期のアルコール依存症で、
自分は酒を飲まなければ死ぬと信じきっており、
入院中にも拘らずベッドの下にウイスキーを隠し持っている。
(・・1週間に1回は必ず見つかる)
年の離れた主人公にも屈託無く接してくれ、
主人公の良き話し相手になってくれている。
元、興信所所員




プロローグ



 ・・・ワイパーの音がやけに耳に刺さる。
それまで夢の世界を満喫していた僕は、その刺激音によって、現実の世界へと引き戻された。

 「・・いま何時?」

僕は眠い眼を擦りながら、隣でハンドルを切るかあさんに聞いた。

 「いま話し掛けないで!」

見るとかあさんは、半ば前のめりになりながら迫り来るカーブ達と戦っていた。
道は急なカーブが右へ左へと複雑に繋がっている。まわりの景色も、さっきまで僕が見ていた景色とは違い、
緑の木々が鬱葱と茂っている。

(・・大丈夫かなあ)

・・山道、・・雨、・・かあさんの運転、
最悪の結果を招く材料は全て揃ってると言える。
僕は再び眠る勇気は持てず、ただ、かあさんの運転を見守っていた。
車内のデジタル時計は8:43を示していた。



・・・永遠とも思える時間が過ぎた頃、雨の向こうに白い建物が見えた。

「桜川精神病院」

今日から僕はここで暮らす。
実感は無いが、僕はどうやら「夢遊病」らしいのだ。
「夢遊病」というのは、夜、寝てる間に眠ったまま家の中を歩いたり、
時には家の外まで出て歩いたり、そのまま誰かと会話してたり、と、
かなり気味の悪い病気なのだ。
家の中で歩き出した時には、とうさんやかあさんが気付いてくれるのだが、
外へ出てしまうと、もう誰にも止められない。・・いや、一度か二度、警察に保護された。(・・らしい)
やがて、両親が僕を病院へ連れて行き、程なくして入院となってしまった。

ここへ来た経緯はごくありふれているのだが、この病院はありふれている訳じゃなかった。
建物自体はごく普通の病院で、地上3階建て、地下も1階ある。
病棟は2階が女性患者、3階が男性患者となっており、
各階に6人部屋が2部屋、4人部屋が2部屋、個室が10部屋、と、そんなに巨大な病院では無い。
問題は建っている場所だった。
都心から車で2時間、コンビニのある場所まででも、車で20分はかかった。
周りには、山、森、山、山・・・、
・・幸い建物は山の斜面に建っており、麓の方を向いていた。
おかげで遠くに街を見ることはできた。・・・が、

(そんなところへ入院・・・)

・・考えただけで「隔離施設」の4文字が浮かんだ。

僕は車を降りると建物を見上げた。
真っ白な壁が病院らしさを感じさせた。
壁はツルリとしたガラスの様なさわり心地で、学校等の壁や、ブロック塀のようなザラザラした感触ではなかった。

目線をずうーっと上に登らせる。
首の角度が地面と平行になりかけた頃、屋上辺りにたどり着いた。

 「・・あれ?」

思わず声に出してしまった。
誰かが屋上にいたのだ。
・・いや、屋上に人がいてもおかしくは無いのだが、今は雨が降っている。
現に、限界近くまで首を曲げている僕の顔にも、雨は容赦無く当たってくる。

 「・・なにしてるんだろう」

僕の疑問は膨らみつつあったが、次の一言で僕は現実へと帰ることになった。

 「ユウヤ!風邪引くわよ、早くいらっしゃい!」







 「・・じゃあ、何かありましたらナースコールで呼んでくださいね」

簡単な説明を終えると、看護婦は部屋を後にした。
僕達は手続きを済ませると、看護婦に4人部屋へと案内された。
当初は個室を希望していたらしいが、空きが全く無いというので4人部屋で納得したらしい。
・・ちなみに4人部屋といっても僕一人、相部屋の人は今は誰もいない。

 「・・かあさんももういいよ。仕事・・、あるんでしょ?」

 「でも・・、大丈夫なの?」

 「・・大丈夫だよ。別に病気とか怪我とかじゃないんだから。
  僕にとってはいつもと何も変わらないよ」

 「・・わかったわ。じゃ、かあさん行くけど、何かあったら携帯に電話するのよ。
  仕事が終ったらまた来るからね!」

(・・いいよ来なくて)

僕はその言葉は出さずに、ただ、かあさんの後ろ姿を見送った。


僕はベッドに横になると、先ほど屋上にいた人影に着いて考えた。

 「・・なにしてたんだろう」

・・雨の中、傘も差さずに屋上で・・・?
一度かき消された疑問が再び湧き上がってきた。

 「・・行ってみよう!」

この結論はすぐに出た。
僕はベッドを降りるとドアノブに手をかけた。

 ガチャリ・・。

 「よ〜、ユウヤぁ!!元気かぁ!?
  ・・あん?どしたー、鼻なんか押さえて」

ドアの前には白衣の女性が立っていた。
歳は27〜8才。女性にしては長身で173cmもある。
僕がドアをあけると同時にこの女性が入ってきた為、
僕はドアに思いっきりキスしてしまう形になった。・・この部屋のドアはこちらからは引くようになっていた。



 「・・いやぁ、悪かったねぇ〜!まさかドアのまん前にいるなんて思わないからさぁ・・」

白衣の女性は僕の鼻にバンソウコウを貼りながら、自分なりに精一杯の謝罪の言葉を発していた。
この女性は「桜川 響子」、アメリカのH大卒のエリートで、僕の主治医だ。
言葉遣いが多少荒っぽいが、これが僕はけっこう気に入っている。
変に敬語を使われるよりもずっといい、って。

 「・・気にしないでください。そんなに痛くないですから・・」

 「ホントに・・?でも、ホントにゴメンね!」

 「・・いいですよ。それより・・・?」

 「あ、わすれてた!軽くカウンセリングしにきたの!
  ・・・どう?私のパパの病院は、居心地良い?」

 「・・そうですねー、・・まだよく分かりませんけど、街から遠くないですか?」

 「・・そぉね〜、ちょっと遠いけど慣れればけっこういいかな!
  空気はおいしいし、の〜んびりした気分になるし!」


・・その後、10分ほどのカウンセリングを終え、響子先生は部屋を後にした。
響子先生に”疑問”について聞こうかと思ったが、やめておいた。
下手に話して止められでもしたら厄介だし・・。

僕は今度こそ邪魔が入らない事を祈りつつ、屋上へと急いだ。


少し重い扉を開けると、そこには雨上がりの冷たい風と、水滴の付いた物干し竿が、
僕を迎えてくれた。

 「・・寒い」

雨上がりの屋上は思ったよりも寒く体が震えた。
僕は正面玄関の辺りへと進んでみた。
・・ところが僕はあることに気が付いた。
この屋上は山側の面、つまり正面玄関の反対側の一角だけが物干しのスペースとなっており、
正面の側へは途中にフェンスがあり、行く事ができなかった。

 「????」

僕の疑問はますます膨れ上がった。
外は雨、傘も差さずに、フェンスもある。
・・にも拘らず人がいた。
僕は見間違いだと思い直し、部屋へ戻ろうと思った。

 「・・だいたい、雨の中で下から屋上に人がいるなんてわかる訳がないんだよ・・」

そうぼやきながらドアへ歩き出した時だった。

 ふわり

何かが僕の前を横切った。
あわてて眼で追うと、白い何かが宙を舞っている。
・・ほどなくその「何か」は地に落ちた。
僕はゆっくりと歩み寄り、それを拾い上げた。

 「・・羽?」

・・それは募金をした時なんかにくれるような、小さな羽だった。
ただ、その羽は赤や緑ではなく真っ白だった。



・・・白い羽。
その意味は僕にはまだ分からなかった。



・・どこか遠くで、誰かに呼ばれたような気がした。


つづく




from
yuki tachibana





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