電話だよん |
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数年前、僕は兄と同居していました。 兄は真面目な昼型人間、一方僕は当時から筋金入りの不真面目完全夜型人間 でしたので、休日などは兄の方が朝早くから活動し、僕は 昼過ぎにのそのそ起き出す、という生活スタイルでした。 コトが起きたのは、そんなある日曜日のことです。 いつものように前日夜遅く帰宅し、昼近くまで爆睡していた 僕は、兄の「おい、友達から電話ぞ」という声で起こされまし た。 「あぁそうか、今日はK君と約束があったんだっけ。 急いで準備しなきゃ」と未だにぼんやりした頭で考えながら、 隣の部屋から電話の子機を持ってきてベッドの端に 腰掛けました。 「もしもし、K君?」受話器に向かって言います。 しかし、K君は無言のままです。 あれ、聞こえなかったのかな? 僕はまた呼びかけます。 「もしもし?K君?」 しかしやはり電話の向こうにいるはずのK君は黙ったままです 。あれー?回線切れてるのかなー? そういえば、電話特有のノイズすらまったく聞こえないんです 。 「もしもし?もしもーし!?」 僕は子機のボタンを何度も押しながら、少し声を大きくして 呼びかけてみました。でも、やっぱり無言、無音・・・。 と、そこへ兄が勢いよくふすまをあけて現われました。 「おい、何ばしよっとか。電話っち言いよるやろうが。」 (は?だから、こうやって電話してるじゃn・・・) (・・・あれぇ?) (これって電話、だよねぇ?) (あれ?これって電話か?) (電話ってどんなだっけか?) 手に握ったものを凝視する僕。 ・・・その手に握られた目覚し時計。 完全に寝ぼけた僕は、隣の部屋に行って目覚まし時計を持って自分の部屋に帰り、ベルをチンチン連打しながら 必死に話し掛けていたのでした。 |