魔法王女(まじかるぷりんせす) はきゅ〜ん☆りりぃ

2002/9/5

 

 

 

僕の名前は公方院 拓哉(くぼういん たくや)。

通称「キミタク」。(SMPのキムタクは、僕の通称のパクリだ!)

まるで江戸時代の公家のような仰々しい苗字を持っているが、

どうも先祖はたんなる農民だったようだ。

だが、僕にとってそんなことはどうでもいい。

今の「僕自身」が、まさに「高貴」といえる存在だと自認しているのだから。

 

身長は 168cm、体重は85kgのちょっぴりぽっちゃり型。

たまに僕のことを「デブ」という愚か者がいるが、

僕のような存在は「デブ」とは言わない。

かわいらしく、「ぽっちゃり」と呼ぶのが正解だ。

そのあたりわかっていない奴らが多いのが、

この世界の人間どもが、度し難い「バカ」ばっかりということを物語っている。

 

77日の七夕生まれの29歳。

77日には「七夕祭り」という名目で

日本中でお祭り騒ぎが繰り広げられるが、

実際には「七夕祭り」とは、僕の誕生日を祝ってくれる祭りだと思っている。

なにせ、こんなにもすばらしい僕が生まれた日なのだ。

神様も僕を祝福してこんな日に生誕させてくれたのかもしれない。。

 

ただ、残念なことに、僕は現在独身であり、恋人はいない。

これまでの人生において何度もチャンスはあった。

たとえば、高校時代の学年一美少女の恵美子ちゃん。

(彼女が「キミタク」ファンだったのは周知の事実である。

そのことを彼女に確認したときには、恥ずかしがって

「あたしは『キムタク』のファンなの!『キモタク』のくせに…バカじゃない!?」って、

照れてごまかしていたが…かわいいやつだ)

たとえば、喫茶店で目が合った女性。

(彼女はきっと僕に一目惚れしていたはずだ。

なぜなら、僕と目が合った瞬間、恥ずかしがって目を逸らしたのだから)

だが、その誰もが僕の心を射止めることはできなかった。

 

 

しかし、そんな僕のハートを

がっちりとキャッチしてしまった子がいる。

その名は…

 

 

「魔法王女(まじかるぷりんせす) はきゅ〜ん☆りりぃ♪」

という少女アニメに出てくる、

魔法使いの「りりぃ」ちゃんだ。

 

 

りりぃちゃんは、魔法の世界の王女様で、

人々に愛と平和を伝えるために、

この汚らしい人間界に降臨してきた「魔法王女(まじかるぷりんせす)」だった。

 

その心清らかで高尚な心もさることながら、

まるでどんぐりなようにつぶらな瞳と、

天使のようなピンクの髪の毛と、

凍りついた大地をも溶かすような輝く笑顔に、

僕の心は一瞬にして奪われてしまったのだ。

 

「りりぃ」が悪者を退治するときに使う魔法の言葉、

 

 

「はきゅ〜ん、はきゅ〜ん!

そんなあなたの心(はぁと)に天使の矢を♪

愛と平和のはきゅ〜ん☆りりぃ♪

もえもえ〜〜〜、らぶりぃ〜♪」

 

 

も、今では完璧に覚えてしまったほどだった。

 

 

 

 

さて、自己紹介が長くなってしまったが、結局なにが言いたかったかというと…

 

今日はなんと秋葉原で、

僕の大好きな「はきゅ〜ん☆りりぃ♪」のゲームソフトの

イベントつき特別販売会が実施されるというのだ!

これは死んでも行かなければ…

 

 

 

 

ということで、我らが聖地「秋葉原」へやってきた。

 

 

 

 

 

秋葉原は、なんとなく空気がいい。

僕はこの神聖なる場所、神聖なる儀式(イベント)にふさわしく

法衣のような「はきゅ〜ん☆りりぃ♪ Tシャツ」を装着して

意気揚揚と街の中を歩いていった。

 

途中、同士と思しきバンダナをつけ、りりぃのウチワを持った男がいた。

目が合った瞬間、

「ふっ…仲間か」

というような不可思議な感覚に襲われたが、

そんなオタッキーと僕はそもそも存在価値が違う。

ああいうのは無視するに決まっているのだ。

 

 

さて、僕はようやく汗だくになりながら

目的のイベントがある「アニメショップ・もえもえエンジェル」

というお店についた。

ぶふぅーっ、と一息ついて、

くだらないオタッキーで溢れる店内に足を踏み込む。

 

 

店内は「りりぃ」一色だった。

あぁ、まるでここは僕にとって「聖域(サンクチュアリ)」だ。

見渡す限り、りりぃ…りりぃ…りりぃ…

ぶほーー!たまんねー!!

……おっといかん、僕としたことが理性を失いかけてしまった。

 

冷静になった僕は、

目的のりりぃのゲーム「はきゅ〜ん☆りりぃ♪の萌え萌えファンタジー」と

特別100枚限定「りりぃ等身大ポスター」売り場をようやく発見した。

やばい、残り少ない!

僕は邪魔なオタッキーどもを弾き飛ばして

ゲーム販売の列に突っ込んだ。

「うぉぉぉお!どけぇぇえええぇぇ!!」

 

まるで仙人のように髭の生えた男。髪の毛を後ろでおさげにてよだれをたらす男。

ウエストポーチを大事そうに抱えている男。「りりぃ」のバンダナをしている男。

体重100kgはあろうかという、怪しい匂いを放つ「デブ」。

そんな人間のクズどもを弾き飛ばしながら、

僕は最後のひとつの「りりぃ♪等身大ポスター(いたずらしないでにゃん♪)」に飛びついた!

 

 

 

 

そのとき!!!!

 

 

そのポスターを、

まるで鼻毛が進化したかのような髭を備え、

アブラギッシュな顔に落ち武者のような髪型(頭天が禿げている)で、

僕と同じ「聖衣」である「りりぃTシャツ」を着て

(あまりの脂肪ゆえにりりぃの顔が伸びている)

鼻から馬のような息を吐き出す、

まさに「キング=オブ=オタッキー」のような男が

その穢れた手で僕と同時に握り締めたのだ!!

 

 

 

「…!!!」

「…!!!」

 

なんだこいつ、殺すぞ!その汚い手を離せ!!

僕は、神聖なりりぃを汚らわしい手で汚された憎しみを込め

そのキンオタ(キング=オブ=オタッキー)を睨みつけた。

やつも死んだ魚のような目で僕を睨みつける。

こいつめ…ふざけるな…!

 

僕たちは、同じりりぃのポスターを握り締めたまま

一触即発の状態を保ちつづけた。

 

ぶふぅー!

ぶふぅー!!

ぶふぅぅぅーー!!

ぶふふぅぅぅう!!!

 

流れる、沈黙。

 

 

 

 

そのとき、僕の脳裏にすばらしい考えが閃いた。

このキンオタを倒すためには、究極の魔法を使うしかない!

 

 

その考えは、まさに天恵だった。

そして、りりぃのポスターをしっかりと握り締めると、

悪のキンオタを退治するため、

渾身の力で聖なる呪文を唱えた。

 

 

 

 

「はきゅ〜ん、はきゅ〜ん!

そんなあなたの心(はぁと)に天使の矢を♪

愛と平和のはきゅ〜ん☆りりぃ♪

もえもえ〜〜〜、らぶりぃ〜♪」

 

 

 

 

……。

…………。

………。

 

 

長い静寂のあと、

僕はキンオタの体から力が抜けるのを感じた。

 

よし、今がチャンスだ!

 

僕は力いっぱいポスターを引き寄せた。

すると、ヤツの手からポスターが離れ、

僕の胸の中に「りりぃ」が飛び込んできたのだ!

 

 

 

僕はついに「りりぃ等身大ポスター」を手に入れた。

 

 

 

これも、りりぃが僕に教えてくれた魔法の呪文のおかげだった。

さすがはりりぃの究極魔法!

悪の権化なんかイチコロだ!!!

見てみるがいい、キンオタのやつ、

口をだらしなく開けて僕を見たまま呆然としているではないか。

ふん、ざまーみろだ。

 

 

目的のポスターとゲームも無事入手したことに満足した僕は、

周りのボンクラどもの、僕のあまりにもすばらしい「魔法」に対する羨望の眼差しを背に

意気揚揚と「りりぃ」のポスターを抱えて家路につくことにした。

 

 

これで、家でじっくり「等身大のりりぃ」を見つめることができる。

……。チューしたりして……。

ぶほぉーー!!!!!

…うっ、いかん、興奮しすぎた。

僕はまた冷静に戻ると、深呼吸をして危ない空想から脱出することにした。

 

 

 

うむ、今日も世界の平和は保たれた。

僕としては満足な一日だったな…

 

 

 

僕の名前は公方院 拓哉(くぼういん たくや)。

通称「キミタク」。

 

今日も僕は、わが道を行く…

 

 

 

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