『満月』
2002/8/28 作者:くらぴか

私が悲しい時、空を見上げると月が綺麗な夜空だった。
どんなに嫌な事があっても優しく包みこんでくれた、あの月。
私は月を見上げるのが好きになった。
毎日姿を変える月に嫉妬をしたりもした、
いつまでも変わっていないと思っている自分がいた。
過去を引きずり、新しい一歩が踏み出せない私。
自分への苛立ちと、後悔が深く胸に突き刺さったままであった。
雲に隠れた日もあった、欠けた姿に悲しむ日もあった。
あの月を何度一人で見上げたのだろうか。
暖かい輝きが、乾いた私に潤いを与えてくれていた。
月の見えない日でも、心の中では月が輝き、
私に勇気と元気をくれた。
そして、月の姿の変化と共に月日は流れていった。
いつの日か、あの人と出会い私は恋をしていた。
いつまでも側にいたいような存在だった、
まるで月の様に暖かく、輝いている人だった。
そして、いつしか私は月を見上げなくなっていた。
幸せをあの月に見守っていて欲しかった。
『今度は私の番だよ』と、心の中で思いながら…。
私は、変わっていく自分に満足だった。
昔、月に向かって想っていた事は、
懐かしい思い出と変わっていた。
あの人と一緒にいるだけで幸せだった、
言葉には言い表せない温もりを感じていた。
この幸せがいつまでも続くと信じていた。
私もあの人を照らす、輝く月になれたと思っていた。
生活が変わり、環境も変わり、空も変わり。
『きっと月も一緒に変わっているんだろうな』と、思っていた。
私があの人の異変に気付いたときには、終わりは近かった。
頻繁に鳴るあの人の携帯電話、どこか違う横顔。
大事な話があると呼び出されたあの日、、、
沈黙が続く中、あの人の口から言葉が飛び出した。
「前の恋人が忘れられない、また付き合おうと思っている、だから別れよう…。」
どこかで理解していない自分、認めたくない自分…。
本当に一瞬だった、ほんの一瞬で崩れ去る幸せ。
あの人の幸せを祈る天使と、あの人を恨む悪魔。
表向きでは強がって天使を選んだ私の心。
そして、心の中で蝕む悪魔の叫び。
私の中に残ったのは、
心に残る思い出ばかり。
あの人と一緒に過ごした自分、
あの人の為に一生懸命覚えたあの歌、
捨てきれない写真、
お互いに送った手紙、
消す事ができない携帯番号、
そして、心に負った傷…。
私は、また一人になった
未練を残し、スタートラインに立った私。
苦しい思い出や、悲しい思い出や、楽しい思い出と共に
また、新しい世界が広がっていく未来へと進むのだった。
あの日、ふと見上げた空には、
綺麗な満月が星空の中に優しく輝いていた。