トラブル☆メイカー

                                                                                                     2004/4/10

 

 

 

 

あたしの名前は江藤あゆみ。

花の高校『新』1年生。

そして今日は、どきどきわくわくの入学式!

うーん、緊張しちゃうわっ♪

 

いつもより早起きして、念入りにオシャレ☆

鏡に映るセーラー服姿の自分を眺ながらポーズを取ってみる。

ポニーテールをふりふり。最高のスマイル。

ウン、オッケー♪ 似合ってる!

 

「あゆー!早くしないと入学式早々遅刻しちゃうぞー!」

 

いっけなーい!

ヨーコママのいつもの怒鳴り声に

あたしはあわてて階段を駆け下りる。

 

どたどたどた。つるっ。

 

おーっと!

あわてすぎて思わず階段で足を滑らせちゃった。

あゆちゃん、大ピーンチ!

 

 

・・・なーんてね。

空中でひっくり返りそうになりながら

あたしは心の奥できゅっと念じた。

 

すると、あたしのからだは空中でくるりと一回転して

そのまま無事1階の廊下に着地!

えへへっ、不思議でしょう?

 

「・・・あゆみ、学校で『それ』やるんじゃないぞ」

 

洗面所で歯を磨きながら、

ツヨシパパが困ったような顔であたしにお小言。

「はーい、わかってますよーだ!」

「あ・・・それとな、あゆみ」

「んもぅ、なぁにパパ?」

「・・・パンツ、まるみえだぞ」

「きゃあっ!パパのえっちぃ!」

まったく、朝から出血大サービスだわ。

 

 

食卓に着くと、いつものように

食器やパンが宙を(文字通り)『舞って』いた。

 

誰もいないのにすたすたとテーブルの上に

綺麗に並んでいく食器たち。

そのうちコーヒーが湯気を出しながら

こぽこぽとカップに勝手に注がれていく。

ヨーコママはその間、タバコをふかしながら

朝のニュースのイケメンアナウンサーに釘付け。

 

・・・見慣れた、いつもどおりの朝の風景。

 

 

ここで、あたしがこれまでの不思議の謎解きをしちゃいます!

 

なんと・・・あたしたち一家は人間ではないのです!えへっ♪

 

実は、ツヨシパパは元魔界の王様(つまり魔王・・・きゃー!)で、

ヨーコママはその魔界でNo.1の魔女だったんだ!

 

それで、ママがパパに一目ぼれしちゃって

ふたりで結婚を賭けて魔法対決をしたんだって。

その結果、見事にヨーコママが勝って、そのまま人間界に降りてきて

結婚しちゃったのよ。

んーなんだかロマンチック♪

 

でも、今のツヨシパパを見る限り、元・魔王の威厳なんて

まーったく感じなんだなぁ。これが。

なんとなく、ママのほうが強いって感じ?

(えへっ。パパとママにはナイショだよ)

 

っとまぁ、そんなわけで、

あたしも立派に魔王と魔女の血を引いてるわけで

・・・つまり、魔法も使えちゃったりするのよね☆

もちろん、普段は絶対秘密だよ!

 

 

おーっといけない。

おっとりしている間にもうこんな時間!

あたしはあわててパンとコーヒーをのどに押し込むと

パパとママと一緒に玄関を飛び出して行った。

 

ママはお勤め先の病院へ(魔女なのに看護婦なんだよ!)

パパはいつもの会社に(魔王なのにサラリーマンって・・・あぅ)

そしてあたしは、今日が初登校となる

私立出目金高校へ Let’s Go

 

 

 

・・・あたしが学校に向かってポニーテールをふりふりしながら

意気揚々と歩いていると、ふいにぽんっと肩を叩かれた。

「あゆちゃん、おはよー!セーラー服似合ってるね!」

「あっ、真由おねーちゃん、おはよー!」

真由おねえちゃんこと、佐藤真由は

近所に住んでいる23歳の綺麗なおねえさま。

うちとは家族ぐるみの付き合いで、うちの『秘密』を知る

数少ない関係者の一人。

・・・というより、実は真由おねーちゃんも「魔界の人」

だったりするんだけどね。あはははっ。

ショートカットでボーイッシュ。

薄手のパーカーにジーンズというラフなカッコウなのに

朝日がとっても似合ってて、なんだか大人の魅力を感じてしまうわ。

 

ちなみに、真由おねーちゃんはあたしが通うことになる

出目金高校の英語の先生なのだ!(新任だけどね)

 

「あゆちゃん、このままだと入学式にギリギリだよ」

「うんうん。それじゃふたりでダッシュしよっか?」

「いいよ!ふたりでかけっこなんて久しぶりね」

「えへへっ。それじゃ、ヨーイドン!」

「あっ、ずるいぞこいつめー!」

 

桜舞い散る春の歩道を、猛ダッシュで駆け抜ける。

んー風が気持ちいい♪

 

 

ゴールの校門まであと500m。

若さだけなら負けてないけど(言ったら殺されるなぁ)、

真由おねーちゃんは学生時代バレーボールの選手だっただけあって

ぴったりと追走してくる。

こうなったらちょっと距離はあるけどラストスパートだ!

あたしはちらりと後ろを振り返っておねーちゃんの位置を確認すると

一気に突き放すためにふたたび前に向き直った。

 

そのとき!

あたしの目の前に3人の学生服の男の人たちが現れたのだ!

3人はお話に夢中であたしに気付いている様子は無い。

 

あわてて急ブレーキをかけようとしたら、

今度は石か何かにつまずいてつんのめってちゃう!

 

驚いた表情の3人組。

 

「あぶなーい!」

 

そのど真ん中の、一番背の高い男の人に向かって

あたしは思いっきり突っ込んでいった。

 

『魔法』を使うか。

あたしはほんの一瞬だけそんなことを考えたけど

魔法を使う暇なんてあったものではない。

「きゃーー!!」

 

 

どっしーーん。

 

 

 

 

強烈な衝撃を覚悟していたあたしを待っていたのは

予想以上にやわらかい感覚だった。

まるで・・・ふかふかのマットにでも突っ込んだような。

それでいて、あたたかいような・・・

 

「・・・大丈夫?」

 

まっくらになりかけたあたしの意識が

両肩に乗せられた大きな手の感覚で

すぐに現実に引き戻された。

 

はっとして顔を上げると、

そこにはびっくりするほど整った顔立ちの

カッコイイ男の人が、あたしのことをじっとみつめていた。

 

風になびくさらさらヘアーは少し茶色がかっていてまるで外人のよう。

切れ長の瞳の色も神秘的な茶色で、優しげな雰囲気を醸し出している。

その表情は、驚いたような、困ったような色を浮かべていた。

全体的にやさしそうで、それでいてクールで・・・

 

なんだか・・・素敵☆

 

 

「あ・・・あの・・・」

「怪我は無い?」

「あ・・・はい。だ、大丈夫です」

「そしたらさ・・・俺からどいてもらえるかな?」

「えっ?あっ!きゃあっ!!」

あたしはそのときになって、

その男の人に思いっきり乗っかっていることに気付いた。

いやーん!

あまりの恥ずかしさにまっかになって飛びのいてしまう。

 

「ご・・・ごめんなさい、あたし・・・」

「あゆー!大丈夫?」

真由おねーちゃんがあわてた表情で

あたしたちのところに駆け寄ってきた。

 

座り込んだままの男の人は「はっ!」と気合を入れると

1動作でそのまま立ち上がった。

うーん、なんだか男らしくてカッコイイ!

そして、服に付いたほこりをぱんぱんと手ではたくと、

まっかになったままその場に座り込んだ

あたしにそっと手を差し出してきた。

 

「新入生かな?あんまりあわてんじゃねーぞ」

 

その手を軽く握り締めると、

あたしはぐいっと引っ張られてそのまま一気に立ち上がった。

 

真由おねーちゃんがあたしのスカートのすそをはたきながら

「ふたりとも、怪我はない?」

と心配そうに問いかけてくる。

 

でも、あたしはもうその声も耳に入っていなくて

そのままカッコイイ男の人のことをじーっと見つめてしまっていた。

 

男の人はばつの悪そうな表情を浮かべると

「おい、いくぞ」

と、ニヤニヤしたままの友人二人

(一人は小太り、もう一人はめがねをかけたインテリ風)に声をかけて

そのまま学校に向かって歩いていった。

「おい、おめー役得だなぁ。新学期早々女の子と・・・」

「ばかいうなよオマエ・・・」

「いやいや、今の子けっこうカワイかったぞ・・・」

 

 

 

「あゆ?あゆみちゃん?」

真由おねーちゃんに両肩を揺さぶられて、

あたしはようやく自分を取り戻した。

「あっ!真由おねーちゃん・・・」

「どうしたの?ぼーっとして。変なところで打った?」

「えっ?あ、ううん、大丈夫。大丈夫だけど・・・」

 

どうしたんだろう。

あたしの胸はドキドキして、なかなか落ち着いてくれない。

さっきの男の人が目に焼きついて、離れてくれない。

 

「でも、あれだけの激突をして怪我ひとつ無いなんて・・・

あゆ、もしかして『力』使った?」

その声に、あたしははっとあの衝撃を思い出した。

やわらかい、ふかふかな・・・

 

「ううん、あたしはなんにもやってないよ。

真由おねーちゃんこそ助けてくれなかった?」

「ううん。ああっ!って思ったらもう激突してたからさ。

それどころじゃなくて・・・って、どうして?」

「それがね・・・」

あたしはさっき感じた不思議な感覚について説明した。

まじめな顔で頷きながら黙って聞いていた真由おねーちゃんは

すべての話を聞き終わるとゆっくりとその口を開いた。

 

「もしかしたら・・・あの3人の中に、あたしたちと同じ力を持った

『魔界人』がいるのかもね」

 

 

「えっ、ええーーっ!?」

 

 

あたしは思わず驚きの声を上げてしまった。

だけど、冷静に考えると、それは決してありえない話じゃない。

現に、あたしたちがそうなのだから。

 

でも、もしそうであるならば・・・

あの素敵な男の人だったらいいな。

 

そんなことを考えてると、また顔が熱くなってくるのを感じる。

胸もドキドキ。

あぁ、なんだろう、この感覚☆

 

「あ、いけない!あゆ!このままだと遅刻だよ!」

「はっ!うそー!?」

あわてて時計を確認すると、9時5分前。

 

あたしたちは顔を見合わせると、

二人そろってもう一度一気に走り出した。

 

今度は、もう誰にもぶつからないように・・・

 

 

こうして、あたしの

素敵な恋と、トラブルだらけの

高校生活が始まったのだった・・・

 

 

 

 

END