私は「お約束」が好きだ。

 「来る!来る!」と分かっていながら実際それが来ると大爆笑してしまう。もうだめ。例えばネタ的なものではコージー富田の『タモリ』がそう。さらにそのネタがその人の唯一の芸であったりすると笑いの要素はかなり満たされる。春一番の『1、2、3、ダーッ』、林家ペーの『芸能人の誕生日覚え』なんて最高だ。

 かく言う私もそのような必殺の「持ち芸」が欲しく、幼少のころから開発に勤しんできた。尻を振りながら「は・ひ・ふ・へ・ほ」とやってみたり、手袋を足の甲に履かせてキャッキャッとやる「猿」等、試作を試みたが一部熱狂的ファンは付きつつも一般的には受け入れられず、長続きはしなかった。

 人間、なにかが1つあれば一生モノだ。実際、春一番は猪木のモノマネで食っているし、彼がブラウン管に出てくるともう笑う準備は整ってしまう。あとはいつもどおりダーッとやれば終わり。自動的に茶の間は和んでいる。

 

 ところが笑いとは奥が深い。

 

「お約束」で取る笑いもあればその場の機転で取る笑いもまた、笑いだ。

 これに関してはそれぞれの人間(笑わせる側)がその場の流れの中で咄嗟に判断し口から出た言葉で人を笑わせるという頭脳を使ったものだ。例えばトーク番組なんかの司会者がこれに当たる。天然ボケパネラーが言う一言一言に瞬時に反応し突っ込みをしたり、笑いを取ったり。「恋のから騒ぎ」の明石家さんまや「新婚さん、いらっしゃい」の桂三枝がそう。まあ三枝師匠の場合、『いっらっしゃ〜い』も立派なお約束ネタなので一括りにすることは出来ないが。

 

 今までのことをおさらいしよう。笑いには「お約束」と「機転」の2つがある。

 

 しかし最高の笑いとは上記の2つのどれにも当てはまらない。もう一つのものだ。

 

 それは「天然」。

 

 もうこれは止められない。本人が意識せずやってるのだから。本当に笑うしかない。

それでも若い女の子が天然するのは可愛らしく微笑ましい笑いだが、知恵遅れの方がそれをやると時に殺人的な笑いを取る。それでは私の経験談を語って今回はお開きといたしましょう。

 

 中学1年生の時、同じクラスにつポイ君(仮名)という少々知恵遅れの子がおり私達と同じ学級で勉学を共にしていた。といってもつポイ君はたまにパンツを脱いで踊ったり、奇声を上げたりするくらいで普通の生活に支障は無かった。ある保健体育の時間。健康についての学習だったと思う。先生が人間ドックとはどういうことか質問した。クラスの半数ほどが耳にしたことはあるけれども良く分からなかったと思われるその質問はつポイ君に向けられた。つポイ君は瞬時にそして自信満々でこう答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「人面犬です。」

 

 もう教室中大爆笑。私も人生の中で最も笑った10指の一つに入るくらい笑った。当の本人は照れるでもなく、真顔で淡々と股間を掻いている。これは勝てない。レベルが違っていた。私が一芸の研究を辞めたのはその時からだった。ちなみにつポイ君と私はとても仲良しでペットのように可愛がっていた。彼を馬鹿にしている趣旨ではないので、その辺のご理解をお願いします。

 

 


 

金太の多事争論