禁じられた遊び







禁じられた遊びを君としよう。

世界中から後ろ指をさされても僕は構わない・・・







真っ暗な闇の中、腕の痛みと背中に感じた冷たさで目が覚めた。

身体中にけだるさを感じる。

重いまぶたを持ち上げても眼に映る景色は全く変わることはなかった。



『暗い・・・』



ここはどこなんだろう?

そしてどうして僕はここにいるんだろう?

確か昨日は、仕事の帰りに滝沢の家に行って・・・



そのまま眠ってしまったんだ。

自分の耳が聞きなれた滝沢の声をかすかに記憶している。

でも、これは昨日の余韻なのだろうか?

日常の惰性なのではないだろうか?

もう彼の口から何度も耳にした事のある単語。



"つばさ"



この言葉をこの耳がかすかに記憶している。





この暗闇に眼が慣れてきても、一向に景色は変わらない。

ここはいったいどこなんだろう?

暗闇の静けさと、恐怖が僕の身体を飲み込もうとしている。

突然恐ろしくなって身体を動かそうとした。



「?!!」



手足にかせがつけられている。

動かそうとしても微動だにしない自分の身体がもどかしい。

懸命に手足を動かし、この暗闇の恐怖から逃げ出そうとするが

抵抗もむなしく動かせるのは頭くらいだった。



またゆっくりと昨日の夜まで記憶を辿ってゆく。

昨日は珍しく滝沢から家に誘ってくれて・・・

雑誌の撮影を早めに切り上げてもらうように頼み込んで・・

いつもどおりに滝沢の家に向かったんだ。

玄関で迎えてくれた滝沢はいつもどおりだったし、

いつもと何かが違うなんてこれっぽっちも感じなかった。



食卓にしたくされた滝沢の手料理を平らげて・・・

そういえば珍しく滝沢は風呂に入っているところに乱入してこなかった。

でも、そんなことは大した事じゃないよな。

風呂から上がった僕に冷たいミネラルウォーターを差し出してくれて・・



そこから記憶がない。

その後は?

どうしたんだ?

いつもどおりなら滝沢に怒られながら髪の毛を一緒に乾かして、

そうこうしているうちにじゃれ合って、もつれて自然とベッドに連れて行かれるんだ。

でも、昨日の晩の記憶がない。

滝沢・・・



どんなに頭の中を探し回っても昨日の夜の甘い出来事は思い出せない。

きっと疲れてたんだ。

それにしても、滝沢がここに連れてきてこんなことしたのか?

チラッと自分の右腕に視線をやる。

『いくら滝沢がいたずら好きでもここまでしねーよな・・』



小さな頭の中が混乱している。

今ある自分の現状に。

昨日の夜の滝沢に。



どのくらい経っただろう?

考えているうちに空が白み始めていた。

うっすらと差し込む朝の光に眼の前の視界が開けてきた。

翼は自分の足元に目線をやった。



眼に飛び込んできたのは微笑を口元に携えた聖母マリア。

夜の闇を追い払うように優しい微笑を返してくれる。

いや、もしかしたらこれから始まる出来事を眼の前に

朝の光と彼女の微笑に安心している僕をあざ笑っていたのかもしれない。



「ここは・・教会か。」



小さく呟く。

誰もいない教会に自分の呟いた声が響く。



「じゃぁ、ここって・・・」



自分の足元から伸びる赤いじゅうたん。

目の前に規則正しく並ぶ長いす。



「祭壇?」



じゃぁ・・・

ここは・・・





さっきも試したのにパニックになりあわててここから降りようとする。

腕にきつくかせが食い込む。

腕に赤い血がにじんだ。



「くっ・・・」



翼は思い通りにならない身体を恨めしく思った。

早くここから逃げ出したい。

滝沢に・・・会いたい。

どうしてこうなってしまったのか説明して欲しい。



もしかしたら滝沢もどこかで・・・?

独り暗闇と戦っているのだろうか?



助けに来てくれるかもしれないと思っていた滝沢の存在すらも

曖昧になり余計に不安が増す。

一体いつになったらここから抜け出せるのだろうか?



「滝沢・・・」





「なに・・?つばさ。」







聞きなれたこの世で一番安心する声が翼に降ってきた。



「滝沢!?滝沢!!どこにいるの?」



不意に聞こえてきた滝沢の声に慌てて翼は答えた。

それと同時に滝沢は無事だったんだと翼は安心した。



「くっくっくっ・・・そんなに慌てなくても大丈夫だよ。

                  逃げたりなんかしないから。」





ゆっくりとした口調で、でもしっかりとした語調。

うつむいたままで着実に一歩一歩

赤いじゅうたんの上を歩いて翼に向かってまっすぐ歩いて行く。



「た、きざわ・・?」





翼はやっといつもと様子の違う滝沢にやっときづいた。

ゆっくりと祭壇の前の階段を上り翼の足元に近づく。

眼の前で足を止め、滝沢は顔を上げた。



「翼、きれいだよ・・やっぱりここに翼を連れてきて良かった。」

「な、何言ってんだよ?!たきざわ・・・おまえがここに?」

「そうだよ。」

「何落ち着き払ってんだよっ!!早くはずせよっ!」

「それは出来ないなぁ・・翼すんごく似合ってんだもん。

               ずーっとこのまま眺めてたいな・・」

「・・・なに、言ってん・・・」



途中まで言いかけたところで滝沢は司祭台に足をかけて翼に近づいた。

翼の眼の前には滝沢の顔がある。

強引に滝沢は翼の唇を奪った。

力強く、激しく、強引に・・



「?!」



唇に鋭い痛みを感じる。

滝沢が自分から遠ざかってゆく。

滝沢の顔は笑みをも浮かべず、

ただ軽蔑するような、憎らしいような眼で僕を見つめる。

じっと滝沢の瞳を見つめて視線をずらせない。

滝沢の眼を覗き込み、その奥を探るが何も見えてこない。



滝沢はガッと翼の顎を手で捕らえ、親指で翼の唇をなぞった。



「やっぱり翼は赤が似合うね・・・

ルージュよりも鮮血の赤のほうがいっそう君を引き立てるよ」



さっきの痛みは滝沢が唇に歯を立てた時のものだった。

血が唇に滲み、ふっくらとした唇が滝沢の指で血に彩られる。

滝沢は自分の親指についた翼の生きる証を口にくわえた。

まるで赤ん坊のように親指にしゃぶりつき

きれいに舐めとる姿を翼は眼の前で見るしかなかった。

いやらしい滝沢の口元を、その眼を、直視する以外なかった。

覆う手は身体からもっとも遠い所にあり、

閉じるはずの瞼は驚きでその機能を忘れてしまっていた。



指を口から引き抜くと滝沢はニヤリと厭らしく笑い、

燃えるような赤い翼の唇に再びキスをした。

舌を絡ませ、唾液を流し込み、

深く長いキスを繰り返し、繰り返し翼の唇に与えた。

憎しみと愛しさとが入り交ざる切なく甘いキスを・・・



別れを惜しむように滝沢は翼の唇から離れて行った。

滝沢の唇も翼の赤いルージュで飾られ、

その口の周りに厭らしく赤みが付着している。

滝沢はゆっくりと自分の唇に舌を這わしそれを舐めとった。



「翼、口の周り、汚れてる・・」



翼の口の周りについた汚れを舌で拭う。

少しずつ、丁寧に、時間をかけて、何度も・・



「きれーになった。」

「たきざわ・・はずせよ。」



声のトーン・口調も暗く、静かに、怒りを押し殺したようなものに変わっていた。



「ふふふ・・教会でこんなことするなんてタブーだろうなぁ。

  キリスト様をすり替えて、男同士でキスするなんて。なぁ、翼、どう思う?」

「・・・」

「ふぅ〜ん・・無視するんだ。別にいいけどね。まだまだこれからなんだし。」



翼は楽しそうに語りかける滝沢の神経が全く理解できなかった。

言いようのない気持ちで身体中が支配される。



しばらくして滝沢は翼の髪に優しく手を入れた。

さらっとした感覚が手に残る。

目線を合わせないように眼を伏せたままの翼に優しく語りかけながら

何度も何度も髪を愛でる。

いつものように甘い言葉で"愛してる"と呟いて、

切なく濡れた瞳でまっすぐ見つめて愛を乞う。

堪らなくなって滝沢に視線を上げた。



「たきざー・・」



微笑を返す滝沢に安堵の表情を返してしまう。

滝沢は優しく撫でていた手を止め、髪を一束握りしめた。

そしてそれを思いっ切り後ろに引いた。



「くっ・・・いた、っ」

「そんな顔すんじゃねーよっ!」



滝沢は吐き捨てるように言い放つ。

口調は強く眼の奥は氷のように冷たい。

口元には薄ら笑いを浮かべ、翼に軽蔑の眼差しを向ける。

一瞬にして翼の表情が凍りつく。

恐怖と嫌悪と愛情と微量の快感・・・



「それでいいんだよ・・翼。もっとおびえて、もっと恐怖に顔を歪めて、

憎しみと裏切りへの怒りを露にして、俺を見つめればいい・・」



そっと後ろに引いていた髪を離すと再び髪を愛で始めた。

翼の頭は混乱していた。

この眼の前にいる見慣れた顔を持つ男は一体誰なんだろう?

未だに信じられず、未だにどの感情を持ってこの男に接してよいのか分からない。



滝沢はおもむろに自分のポケットから小さなはさみを取り出し翼の身体にあてた。

翼は更なる恐怖にさいなまれた。

滝沢はゆっくりと翼の上着にはさみを入れだした。

腹に胸に金属の冷たい感触が走る。

布を切り裂く音がいっそうの恐怖をあおる。

上半身が露になると滝沢はすぐに胸の突起に吸い付いた。

さっきのキスのように激しく、厭らしくむしゃぶりついた。



翼は恐怖と快感と罪の意識に苛まれ興奮せざるを得なかった。

今までにない状況、男同士の恋愛をタブーとする教会という空間で滝沢に弄ばれ、

二重も三重もの禁忌が興奮に輪をかけ、

いつもと違う欲望と憎しみに満ちた滝沢によりいっそう感じた。



十分時期を見計らい滝沢は下半身にもはさみを入れだした。

左脚の裾からゆっくりと上へ、上へと金属が向かってくる。

その恐怖に翼の背中には汗が流れた・・

開かれた隙間から滝沢は左手を這わせる。

金属の冷たい感触を滝沢の温かい手の温もりが癒してゆく。

無残に切り刻まれた布キレをきれいに剥ぎ取り

滝沢は腰についている最後の一枚に手をかけた。



もうすでにこれから行われる事をわかっているかのように

翼のものは準備が出来ていた。

しかし、翼の顔には恐怖の色が残っている。

そっとはさみを入れると敏感な部分なだけに

翼ははさみの冷たさに耐えられず身体を動かそうとする。



「動くと危ないよ・・・」



そっと、ゆっくり翼を傷つけないようにはさみを入れる。

窮屈そうにしていたものが開放され滝沢を乞う。

司祭台から降り赤いじゅうたんを辿って歩く。

すでに高く昇った太陽の光を背に受け後光が射しているかのように見える。

身体は若く生命に満ち溢れ、しなやかな肢体が光に形作られる。

髪は光で薄い茶色に透けている。

あまりの美しさに感嘆の声も忘れてしまう。



じっくりと翼の美しい身体を舐めるように眺める。

翼の身体の中心部だけがこの神聖で荘厳な教会に似合わないほど

厭らしく、欲望に満ち溢れていた・・・



再び翼に近づきその美しい身体に手をかける。

全身を手で撫で回し、大きく膨らんだ翼に近づいた。

そっと触れると翼は小さな吐息を漏らした。



「感じてるね・・淫乱な奴だな。こんな所でも喘げるなんて。」



意地悪い口調で翼をなじる滝沢に更に感じてしまう。

頬が高揚し、耳まで赤くなる。

滝沢から目線を外し、うつむき自分の髪で眼を隠す。



滝沢はそれに気づき前髪を左手で引っつかみ顔を上げさせる。

恥ずかしさと恐怖で滝沢を直視出来ない。



「おい!こっち見ろよ。その顔ちゃんと見せてろよ!!」



声を荒げる滝沢に再び注目する。



「そうだよ・・その眼・・たまんねーな。」



そう翼に投げつけて右手を下半身に手を伸ばした。

至近距離で顔を突き合わせ、下半身を弄くられる・・・

眼は攻撃的なのに、下の手は優しい・・

堪らず滝沢の眼の前で再び快楽の声を上げる。

潤んだ瞳、紅く染まる頬、熱い吐息・・・

厭らしく微笑む滝沢の顔がちらちらと視界に入る。



滝沢は恐怖の中で快楽を感じる翼自身に激しい憎しみを感じていた。

でも、その翼に自分も今たまらなく感じている。

どんなに汚い言葉を投げつけても、

どんなにいたぶっても、弄んでも翼は綺麗だ・・・

それが分かっているからこそやりきれなさが込み上げる。

翼をメチャメチャに汚してやりたい・・



滝沢はおもむろに自分の服を脱ぎ捨て

翼のものに手をあて自分の入り口にあてがった。



「やめろよっ!!」



翼が激しく叫ぶ。



「どうして?」

「『どうして』って・・・何か違うだろ?それって。」

「何が?いつも翼はこうされてるだろ?オレにだけど。くくく・・・」

「とにかく止めろよ!!」

「ヤダヨ・・怒った顔もいいねぇー。ますます興奮してきちゃったなぁ。」



何も出来ない翼をよそに自分の中に翼を招き入れた。

「ん・・くっ・・・」

痛みに耐える滝沢の声が翼にいつもの痛みを呼び起こす。

「たきざわ!!たきざわ!!!」

涙に濡れた頬を左右に振り滝沢の名前を繰り返し呼び続けた。



「んあぁ〜・・・あん・・」

独り快楽の階段を駆け上る滝沢。

翼は初めて人を貫いてしまった罪悪感に苛まれた。

滝沢は動けない翼の変わりに自分が身体を動かし何度も、何度も自分を貫いた。



一人で極みに達した滝沢は自分の欲望を外に吐き出し、

疲れ果て、痛みを顔に残したまま翼に寄りかかっていた。

翼は快楽を得られぬまま、滝沢の中にとどまっていた。



「滝沢・・・」



貫く痛みがこんなに辛いとは知らなかった。

いつも滝沢はこんな思いでいたなんて。



貫かれる痛みは身体の痛み。

貫く痛みは心の痛み。



朽ち果てた滝沢を胸で支え、滝沢の顔を優しく眺める。

愛しい想いで胸がいっぱいだった・・・

滝沢は苦しんでいたに違いない。

愛する人を貫くこの心の痛みに・・・



今度はもっと分かり合える。

お互いの痛みを知った今なら・・







禁じられた遊びが僕らを誘う。

抜け出せない迷路に迷い込んだ僕たちに罪と罰はいつ下るのだろう?







あとがき

皆様お待たせいたしました。(待ってないですね?/笑)
何度もぼやきでお話させていただきましたあおいあかね様のキリリクです。
テーマは"背徳"(絶対嘘ですね・・)
このテーマを頂いた時にかなり悩みました(笑)
すぐに思いついたのが「教会」って事だけでしたから・・・
で、滝様を教会に連れて行ったらアレ、まぁ?(ぽっ)と。
滝翼サイトに邪道なモノを持ち込みましてすいません・・・
苦情は全て碧に言いつけてください。
何よりあおいあかね様!!!
滝翼モノなはずがなぜか翼滝になってるあたりがなんとも言い訳できません・・
本当に申し訳ないです・・
でも、碧はこれ結構気に入ってます♪(お前だけだ・・)
特に滝様が唇噛み切るところとかぁ〜
はさみ入れるところとか〜
遠くで翼の身体を眺めるところとかぁ〜
全部自分でやってみたいことです(変態です)
って事でもっと深く書きたかったのですが最後がまたしてもうまくいかず・・・
何で翼君ってばそんなに落ち着いてんの?(笑)
本当に申し訳ありません・・・
こんな駄作を読んで頂きありがとうございました。