上っていくサイダーの泡が消えるまで涙がぽろぽろ出てくる理由を考えていたら、

サイダーを一度に飲み干した時の様に自分の眼からまたぽろぽろと丸い粒が
今度は下に下がっていった。

 

 



 

サイダー

 

 

 

コップに注がれた透明の液体は夏の日差しを受けてキラキラと輝く。

机に腕をダラリと伸ばしその上に頭を乗せてグラスを覗く。

キラリと光るガラス越しに夏の空を仰ぎ見て、

映りこんだ白と青のコントラストが今より少し幼かった過去を蘇らせる。

 

 

 

真夏の暑い昼下がり散歩の途中に手渡されたサイダー。

キーンと冷えた缶から乾いた身体に流れ込むサイダーは

口の中でいくつも泡を跳ねさせ、シュワシュワと弾ける炭酸が喉を刺激的する。

飲み干した後のあの爽快感が忘れられなくて

その濃い緑に囲まれた散歩道を歩くと必ず口にするようになった甘いサイダー。

 

一度だけ街のはずれにある喫茶店で2人サイダーを注文した時は、

グラスに細い、曲がらないストローがささっていて、

頬をすぼませ一生懸命口にしたけど、

なんだか気の抜けたサイダーになってしまったようで妙に哀しくて

2人最後まで言葉を口にせずストローを銜えたまま店を後にした。

 

 

 

 

 

 

その後、2人でゴクゴクと飲み干した1本サイダーが最後の君とサイダーの思い出。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見つめ続けるグラスからいくつもの浮き上がる泡たちは

幼い頃に抱いた自分の夢の数と等しくて

ただひたすらに願え続ければいつか叶うと信じていた夢だった。

絶えることなく浮かんでいた未来への期待と希望を思い出し、

“コン”と一度グラスを弾いた。

 

与えられた振動がグラスのふちに張り付いて上りきれなかった

たくさんの夢を不完全なままグラスの表面に運びその姿を消す。

一度に消えた泡の数は今まで諦めてきた色々だった。

 

次々と浮かぶ泡が少しだけその数を減らしてしまい、

時間が経つにつれ期待と希望が次第に薄れていく様は

まるで大人になった今の自分のようだった。

 

 

 

 

 

 

そう、それはあの時背伸びした喫茶店のストローで飲み干したサイダーと同じだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見つめ続けるグラスの中のサイダーはプツプツと泡を生み

それはフワフワと水中を泳いで姿を消していく。

シュワシュワと口の中で弾ける炭酸は視界を上下し

いつまでもグラス越しにしか夏の空を見つめる事が出来ない僕の視界を邪魔し続ける。

 

明るすぎる夏の光と鮮やか過ぎる夏の街はあまりに眩し過ぎて直視出来ない。

あの頃の2人ならそのカラフルな夏の画に収まることが出来たけど、

今の僕はたった1人で同じようには何一つ出来ない。

 

 

 

 

 

 

1人でサイダーを飲み干すことも。

 

 

 

 

 

 

それでも時が経てば少しずつ、溢れる程の未来も希望も薄れていって

サイダーが甘い水に変わった時、視界は晴れて少しだけ歪んだ空が映るだろう。

それは君を思いださせないニセモノの夏空で僕が見ても悲しくない空。

 

炭酸の浮き上がるサイダーは諦める事を知らなかった頃の思い出で、

泡粒一つ一つが君と一緒に夢見た未来と希望で、

僕は涙がぽろぽろとこぼれて止まらない。

 

 

 

 

ぽろぽろと、止まらない。

 

 

 

 

グラスを叩いて消した泡は諦めた君との未来の数。

僕が消した希望は君と描いたこれからの未来の数。

 

 

 

 

 

だから涙が止まらない。

 

 

 

 

 

泡粒が消えた諦めの甘い水が泡粒を作ろうとする僕の瞳から水の粒を落とす。

 

 

 

 

 

だから涙が止まらない。

いつまでも止まらない。

ポロポロと止まらない。

 

 

 

 

 

2人で飲み干したサイダーに浮かぶ泡粒のように涙が止まらない。















あとがき

こんばんはvv碧です。
久々の滝翼です(涙)
皆様お待たせいたしました。
久々なのに名前が出ていないのですが紛れもなく翔翼です。
語り翼、想い人翔。
あぁ・・ステキな2人です♪

今、『涙そうそう』という沖縄の曲がお気に入りです。
この曲の『なだそうそう』の意味は“涙ぽろぽろ”だと聞いて、
すぐに出だしの2行を保存してあった碧は書き上げてしまいました。
なんだか切なくて夏の終わりをしのぶようなそんなお話です(えっ?)
というか、碧は夏が凄く好きで秋が夏の終わりだと思うととても好きにはなれなくて、
いつも夏の影を追いかけてしまう季節に入って感傷的になっています。

「サイダー」はどこから出てきたんだ?!という話ですが、
なんとなくです(苦笑)
サイダーの泡は夏のようです。
刺激的で甘くておいしくて。
でも時期が来ると消えてしまう・・
そんなイメージです。
なので「サイダー」。(説明になっていない。苦笑)

話の全体的なイメージとしては湘南の海です。
翔翼は「素顔2」の湘南というイメージが強くて、あの真っ青な空と綿菓子みたいな雲。
そこに透明なサイダーがきっとよく合うと思って・・
それにあの2人はなんだか透明なサイダーのような関係な気がして・・
いつか消えてしまう甘い液体に・・
時間が2人を別のものに変えてしまう・・そんな所が翔翼を連想させました。

という訳でなぜにこんなに長い解説が必要なのか不明ですが(苦笑)
楽しんでいただければ幸いですvv


              2002/09/04    碧