初夜
カーテンの隙間から差し込む朝日が
ふんわりと僕ら二人を包み込む。
朝の日の光はあまりに綺麗で、
夜の卑猥さが余計に際立つ・・・
案の定柔らかく包み込むような朝日を受けても
一向に眼を覚まそうとしない愛しい君が少し憎らしい。
独りで昨日の夜を思い出させないで欲しい。
一緒に昨日の夜の出来事を思い返し、
朝日の光と共にあの夜をキラキラと空に昇らせたい。
そしてそのまま永遠にしておきたい・・・
昨日の翼の喉から漏れる声が脳裏にちらつく。
首を反らせ、汗ばんだ身体をくねらせ、
瞼を閉じて、胸を仰け反らす翼は本当にキレイだった。
薄明かりの中時々光る汗の粒が君を一層美しく飾りたてた。
悩ましげにまとわり付く翼の細い腕の感触が
未だに肌の上に残っている・・
柔らかな日差しが、
未だ覚めやらぬ火照った身体を優しく包む。
窓の外を見ようとしてカーテンを捲った滝沢の動きで
目覚めの悪い僕も眠りから呼び覚まされてしまった。
でももう少し、この真っ白なベッドの上に残った
滝沢の体温を感じていたい。
そう思ってまた二人の温みを携えたベッドに潜った。
まだ、この身体に滝沢を感じている・・
「どーぞ♪」と少しふざけて言ったあの後、
滝沢はそっと同じベッドに入り込んできた。
初めての男はあんなふうに男を誘うのだろうか・・?
誘ったわけではなかったけど、
あの言葉に嘘はなかった。
"抱かれたい・・・"とただそれだけを思い、
滝沢を白いベッドに受け入れた。
むしり取ったボタンが護っていた肌が露わになっている。
唇に滝沢のキスの雨を受けている。
細身のパンツに手をかけられ、
ベルトをはずす金属音だけが冷たく部屋に響き渡る。
滝沢はゆっくりと全身にその白い温かい手を這わし、
どこに反応を示すのかじっくり探しているようだった。
触れるか、触れないかのその微妙なタッチに
身体は正直に反応した。
次第に呼吸が同じテンポを保てなくなり、
鼓動が速くなる。
「ふぅ〜・・・ はっ、んっ・・んん・・・」
その淫らな声を聞くたびに滝沢は悦を感じ
肢体が大きく、熱くなるのを感じた・・
徐々に下半身へと向かう滝沢の指が
怪しげな生物のように感じられた。
腹部に達した滝沢の指にためらいを感じる・・
滝沢は僕の予想に反して中心部を弄ることなく
身体の中では比較的やわらかくて、白い太腿に手を滑らせた。
上半身に僅かながらの寂しさを感じている。
「大事な所に手も触れなかった上に唇も胸もほっときっぱなしかよ・・」
快感で意識が遠のく中
"強気にもっと玩ばれたい"と滝沢を求めてみた。
そんな情熱を感じ取ったのか
翼の身体に夢中になっていた滝沢が
腹部から翼の顔を見上げた。
手で撫で回した翼の骨っぽい上半身を
今度は生温かく、濡れた舌先で刺激しつつ
唇を目指して滝沢の舌が這い上がってくる。
相変わらず足元では滝沢の柔らかな手が
身体の快感のポイントをまさぐっている。
全身の神経を滝沢の指先に、
舌先に、集中させる。
滝沢の口元からいやらしい音が響きだした。
"ピチャ・・ペチャ、ンっ・・・チュパチュパ"
艶かしい、卑猥な音階が翼を辱める・・
身体の反応に任せて喘ぎたいが
自分の理性がそうさせない。
こんなに肌が上気しているのにっ・・・
快楽に身を任せてしまえば
きっともっと楽になれるのに・・
そして更にもっと先の悦を知ることが出来るのに・・
自分の攻めに対して頑なに自分自身を解き放とうとしない翼に苛立ちを感じる。
翼のその唇から発せられる快楽への喘ぎ声が聞きたくて
意地になって翼を虐めた。
言葉で、行為で・・
「あぁ・・ぁああ〜、んんっ・・・ンっ」
滝沢の愛撫は優しく、激しい。
必要に応じどちらかを使い分けてくる。
さっきから必死で声を上げないよう唇を固く閉じている。
快感に負けそうになる度に下唇に力を入れた。
ここで声を上げられたらどれほど気持ちが良いだろう・・
いっそのこと滝沢に全てを委ねたい。
翻弄されて、玩ばれて、弄られたい!!
この部屋の外に広がる星空のように
どこまでも永遠の広がりが自分の中にあれば良いのに・・
翼がやっと受け入れる準備が出来た合図が聞こえた。
もうはちきれる寸前の自分に再度右手を添えた。
翼の細くて長い脚を左右に拡げる・・
まだ暗くて見えない翼の奥地、
右手のモノが収まる場所を探し更に脚を拡げた。
身体の硬い翼には少しきつい体制だ。
右手に収まりきらなくなったモノをそっと翼にあてがった。
翼は少し戸惑い腰を引いた。
その腰に左手を回し、ゆっくりと引き戻す。
「・・・こわい」
翼が小さな声で呟いた。
薄暗い室内で表情までは確認出来ない。
さっきの反省もあり滝沢も少しためらいを感じざるを得なかった。
「ゆっくりするから、大丈夫」
いつもよりワンテンポ遅く、
穏やかな口調で翼に語りかけた。
翼を安心させたかった。
翼に愛する人に愛される幸福を知って欲しい。
"愛する人"
それがどうか自分でありますように・・・
腰に添えた手をもう一度上半身に戻す。
翼の汗ばんだ首元、頬、唇を人差し指でなぞる。
その指の動きに合わせて翼は右に左に身体をくねらせる。
耳に手をかけ、翼のさらさらの茶色がかった髪に手を差し入れる。
手からこぼれ落ちた、髪の束が翼の頬に張り付く。
"ふわっ"と香りが周囲に立ち込めた。
右手は翼の緊張を解こうと奥へ、奥へと指を進めた。
ゆっくりと、ゆっくりと翼の身体を押し広げ始めた。
前にあてがった時よりずっと受け入れる準備は出来ていたが、
まだ入り口は小さくとてもこのモノが入りきる雰囲気はなかった。
滝沢は再度右手を自分に添えた。
翼は左手の愛撫に夢中で下で何が行われているのかまだ気づいていない。
"ぐっ"と力を入れ翼の中に一歩を踏み入れた。
「くっ・・・、んああぁ〜〜・・」
翼の叫び声とも取れる喘ぎ声も耳に遠い。
熱で意識が朦朧とする。
今は一つのことにしか頭が働かない。
翼に直進するしかない。
翼とつながったそのモノからゆっくりと翼の熱が伝わってくる・・
徐々に自分を包み込む翼。
奥に進む度に翼は身体をうねらせ、
切ない吐息混じりの声を漏らす。
侵食される・・・
貫かれる痛みは快楽の海に飲み込まれてしまう。
滝沢を包む自分の肌が滝沢の熱を伝える。
強く脈打つ滝沢がもうすぐ極致に到達してしまう。
堪え切れずに声を上げる。
脳が甘く痺れて感覚がない。
熱っぽい吐息を漏らし、侵入する滝沢のみに集中する。
感じるのは滝沢だけ・・・
すっぽりと翼に包み込まれたこの瞬間をなんと翼に伝えよう。
いつもは包み込む方だったのに。
精神的に包み込めても、翼を満足させることが出来ない。
安心を与えてやることは出来ても
快楽は与えられない・・
身体の全てを受け入れて、
これほど俺を満たす事が出来る翼はすごい。
息が上がり、つらそうに眉間にしわを寄せる翼。
「だい・・じょ、ぶ・・?」
こちらも興奮で呼吸が伴わない。
途切れ途切れに翼に話しかけた。
「・・・・・んっ・・」
瞼を伏せたままそう答えた。
長い睫毛が目元に影を落とし、
ぷっくりとした唇を軽く開き不安定な呼吸音を漏らす。
軽く下半身にリズムをつけると
翼はきついのか顔を歪ませた。
その表情を見ている事に
耐えられず動きを止めると
翼は痛みを堪えた微笑で同じ事を要求する。
気を使っているのだろうか?
翼はどう感じるのだろう・・
でも、そんなことを口にするのはとんでもなく卑猥な気がして
咽元まで出掛かって言葉を何度も飲み込んだ。
滝沢の全てを受け入れた・・
痛みより満たされた充足感でいっぱいだった。
愛する人に満たされた自分の身体が愛しくて堪らない。
滝沢もこの身体を愛しいと感じているだろうか。
朝目覚めたら一番に言おう。
"愛する人に愛されたこの喜びを・・"
"愛する人に満たされたこの幸福を・・"
「大丈夫か」と心配してくれる滝沢に
きちんと自分の言葉を伝えられないのが悔しい。
本当はもっと、もっと滝沢を近くで感じたいのに。
興奮と悦楽の頂点まで連れて行って欲しい。
滝沢の動きが激しくなるにつれ
滝沢の側に、もっと近くにいたいと感じ
滝沢の背中に回した腕に力を入れた。
快楽に上る階段を急に駆け上がり
身体が急に軽くなったと感じた・・・
翼の身体を気にしてはいたが、
興奮で自分の動きが次第に速まってしまう。
背中に回された翼の腕に力が入る。
さっきまでの細くて華奢な腕とは思えない力だ。
速まる動きに何もかもが耐えられなくなってくる。
翼の身体の奥に突き当たり、
翼が最期の大きな声を上げた瞬間、
翼と一緒に快楽の空に解き放たれた。
どのくらい経っただろう・・
朽ち果てたお互いの身体は未だに熱を帯びていた。
まだ翼とはつながったままだった・・
倒れこむように翼の上で気を失っていた。
翼はまだ戻ってきてはいない。
そっと翼から身体を離した。
翼の腹部に快楽の片鱗が残っている。
ミルクを舐める猫のように
上手に舌を使い翼の腹部をきれいにした。
そして、その薄い身体に口付けをし
いくつもの薔薇の花を咲かせた。
"翼には赤が良く似合う"
そう思い最後に一番好きな
翼の赤い唇にそっと口付けをした。
窓を見ればもう夜明けが近づいている。
白み始めた空は太陽が上がるのを待ち受ける準備をしている。
もう一眠りしよう・・
今度は翼と一緒に窓の外を見よう。
そして初めての朝日を一緒に迎えよう。
これからも何度も君と一緒に朝を迎えられることを祈って・・・
Fin...
■コメント■ 『柔らかな夜』の続編です。
ラリ様に「情事が読んでみたい」とリクエストされた事と
自分自身が"情事を書きたい!!"という強い欲求に掻き立てられた事が
この小説の誕生につながりました。
"書くなら絶対に初夜だっ!!"と決めていましたので
この作品を書き上げた後は満足感で滝翼同様碧も満たされました。
(小説を書いて見たら?と言われてから「初夜」まで3日間でした・・苦笑)
滝サイド、翼サイドと時間の流れを全く無視し、
読者の方々は読みにくかったかと思われます。
大変申し訳ありませんでした・・
これも碧の文章構成能力の問題です・・
このような小説でも少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。