虜 〜滝沢編〜





括れたラインを視線でなぞり

その細い腰に手を回す。

ここが翼の身体で一番好きなところ。





触れた手に反応して少しだけ身体を離そうとする。

腰の動きに合わせて顔を右に背けた。

上目使いで下から綺麗な整った顔を見つめる。

躊躇いと、恥じらいが入り混じった表情がなんとも色っぽい。

伏せられた睫が作る影が翼の眼の奥を覗かせない。



黒目がちで大きな丸い眼。

くっきりとした二重に切り込みの入った目頭。

捨てられた事に気づかない子犬のように

眼の前にいる人間を信じて疑わない無邪気な瞳。



それとは対照的に時折見せる

愛想のない黒猫のような疑い深い目。

いつまで経っても飼い主になつかない気まぐれな猫のような瞳。

これが翼の顔で一番好きなところ。





身体を指先でなぞって、優しく甘い言葉を囁く。

愛撫を受けるたびに光り輝く身体。

身体の内部から溢れくる絶え間ない欲望と

押さえつけることが出来ない若さが

見えない力となって肌に現れる。

その光りの増す身体に僕は獲りつかれる。





魅力的で仕方ない。

何度抱いてもまだ身体は欲する。

欲望は貪欲でとどまることを知らない。

それどころかどこまでも、どこまでも広がっていくかのようだ。

そして更に強くなる。

次に翼を欲しいと思う時は、

明らかに今以上に翼を欲しいと思っているはずだ。





そんな自分の欲が怖くて仕方ない。

いつかこの欲望が波のように自分を飲み込んで

理性のかけらを奪ってゆく・・・



理性を失った俺は確実に欲望の波と共に翼に襲い掛かるのだ。

自分すらも己の欲望に勝つことが出来ない。

欲望のみに支配されるこの身体に。



その時の自分が怖い。

翼に手をかける事になるであろうこの手が

明らかに今翼に触れているこの手と全く異なるものになるのだから。



その時のこの手はきっと翼を傷つける。

今は理性でこの暴れそうな欲望をやっと抑えている状態だ。

罪を犯した囚人が監獄から解放される時のように、

戦争で苦しんでいた人々が久々の自由を手に入れた時のように、

ほんの小さな壁が、囲いが、縄が、規制が、意識が崩れた時、

開放や自由という名の下に

全てをメチャクチャにするんだ・・・



自分が翼を傷つけえるなんて・・・

否定する思いとは裏腹に、汚い言葉で罵って、

翼を陵辱する自分が容易に想像できるのが苦しい。



翼を辱め、翼の自由を奪うことはどんなに気持ちがいいだろう。

翼の意思を奪うことはどんなに興奮するだろう。

翼から全てを略奪する事はどんなに美しいだろう。





愛と憎しみは紙一重。

愛するがゆえに憎いと感じる。

深い愛は束縛。

濃い愛は独占。

誰のものでもあって欲しくない。

たとえ彼自身であっても。



そして愛は憎しみに変わる。

呼吸すら奪いたいと思うほど相手のことを想う憎しみと言う名の愛。

憎しみから生まれた愛。





気が狂いそうな妄想と幻想。

そしていつか、確実に訪れるであろう現実。





今この腕の中で抱かれる翼にどこまで伝えたらよいのだろう。

この手で触れるたびに綺麗になる翼。

まじかでマジックを見ているかのようにあからさまに肌を変える。

艶をまとい、光を増し、光沢を蓄える。

パールの輝きを放つキメの整った細かな肌はそれだけで行為を誘う。



抱かれるたびに君は美しくなる。

そして喘ぐたびに妖艶になる。

乱れた姿が色っぽいと感じさせる。

抱かれるたびに艶かしい艶をまとう。

この口でキスするたびに唇はしっとりと濡れ、唇が高揚し紅く染まる。





全てをこのまま奪いたい。

誰のものにもしたくない。

翼のものでもなくしたい。

ただ、その身体は俺のために。



そう、耳元で甘くため息を吐いて・・

全身に鳥肌が立つような色のある声で。

背中に震えが走るようなエロチックな吐息を贈って・・

その言葉も声も吐息も全て俺のもの。

呼吸すら誰にも譲らない。



ほころぶ直前の花のつぼみのような柔らかな唇。

その唇に誰も触れられないように永遠のキスをする。

優しく、甘い、とろけるようなキスに始まり、

時々激しく、荒い、己の欲望に忠実なキスを。

永久にその唇を奪い、キスを禁じる。



虚ろう君の瞳に映すことが出来るのは俺だけ。

視線を動かすことも許さない。

他の誰も見ることなく一生を終えればいい。

他のものなんて何もない。

この世界は二人だけ・・・



身体の自由は俺のもの。

一人で昂ることも、昇華することも、

欲望を満たすことも出来なくしてやる。

俺がいないと何も出来ない、そんな風にしてやりたい。



俺の知らないところで恥じらいを覚えないで。

恥らうのはベッドの中で。

俺の目の前だけで十分だ。



俺の知らないところで裏切りを身につけないで。

裏切るのは俺から、翼からは許さない。



俺の知らないところで嘘を覚えないで。

嘘は最大の罪。





何もかもを奪ってやって最後に残るのは器(からだ)だけになればいい。

ソレを俺が支配する。

翼の意思など要らない。

性感と性欲さえあればいい。

その機能は俺以外のほかの誰にも発情しないように

たっぷりと教え込ませよう。






翼の全ては俺。

俺の全ては翼。



全てを委ねて、身を任せればいい。

そして全てが俺のものになればいい・・・





この身体に囚われればいい。













あとがき


遅くなりました。
翼君の20歳の誕生日小説の片割れです。
誕生日とは全く関係ないんですけどね。
初めての誕生日なので、
どんなものを書いてよいのか分からなかったという事で多めに見てください。
誕生日なのにこんなダークなのを書いてしまうところが碧らしさということで(笑)
単にいちゃらぶがかけないだけですが・・
それでは、今回はこれが全てです。
多くは語りません。
読んでくださってありがとうございました。


         2001/10/18   碧