「忘れてんだろっ?」
って山下に言われて、ちょっとだけムッとした。
だからポケットにこっそり忍ばせておいた
目の前のコイツに渡すのを楽しみにして選んだ
チョコレートの存在をポケットに突っ込んだ右手からなくした。
ついでにもう一つ"今日"って日も忘れてやった。
February 14
Present by 碧
あれは3日前の午後。
仕事が予定よりも早めに上がったから、
近づく女の子の一大イベントを後押しする街に出てみた。
春を目の前に凍える街はピンクに染められて、
オブジェのハートマークと同じだけ街に女の子の心が、愛が溢れてる。
歩いているだけでなんだかウキウキして、
街に漂う甘い香りに誘われてガラスケースに並べられた
宝石のようにキラキラ光り輝くチョコレートに釘付けになった。
"抱える想いと実る想い"
抱く想いが全て実れば誰も悲しい想いなんてしないで済むのに・・・
"伝えられる想いと留まる想い"
伝える勇気がほんの少しあれば実る想いもあるだろうに・・・
みんなちょっとずつ自分が可愛くて、
傷つく事から逃げようと必死になってしまうんだ。
でもね、ちょっとだけ頑張った自分に神様が与えてくれるご褒美は
ほんとに温かくて幸せなんだよ。
僕が山下に「好きだよ」ってちゃんと自分から伝えたのは、一年前のVDだった。
告白は山下からで、
びっくりと嬉しさで声を失った僕を
腕に抱いた山下にきちんと返事が出来なかったから、
背中に回した腕に少しだけ力を込めたのが山下の告白への返事になっていた。
それから一緒に夏の青空の下はしゃぎまくって、
秋の夜長に語り合って、冬の寒さにお互いを暖めあって過ごした日々に
山下への想いがどんどん大きくなって、
去年のVDにちゃんと「好きだよ」って言葉にして伝えたのだ。
山下は今よりずっと優しい笑顔で
嬉しそうに「知ってたよ」って言ってくれた。
そんな目の前のチョコレート達より
甘〜い山下との思い出を思い出しながら何時間もかけて
山下にチョコレートを選んだんだから忘れてる訳ないだろっ!!
ソレを何が「忘れてんだろっ?」だっ!!!
山下の方こそ『忘れてんだろっ?』
あの日の思い出も、初恋の淡い甘さも、
去年のチョコレートの味もっ!!!
"今日って言う今日こそ絶対に許してやんないっ!!"
って決心した僕の目の前に突然山下が手を差し出した。
手のひらの上には一枚の板チョコが乗っていた。
「早く受け取れよっ!」
ちょっとイラつき気味なのか、
照れているのか口調がきつい。
「えっ?ど、して・・?」
目の前で起こった突然の出来事に
戸惑いを口にすると直ぐに
「忘れたのかよ?去年お前がくれたヤツだろ?」
と、山下はそっけなく答えた。
そう。
確かに去年のバレンタインデーに僕が山下にあげたものと同じもの。
どーしても女の子に紛れて綺麗で、
おいしそうなチョコレートを買うのが恥ずかしくて、
コンビニで最初に目に付いた板チョコを買ったんだった。
バレンタイン用に特別に綺麗にラッピングがしてあるわけでもなく、
中身のチョコレートと同じ色の紙で銀紙に包まれたチョコレートを覆っている。
そんなチョコ。
そっと手を伸ばして山下の手のひらに乗った板チョコを受け取る。
山下はすぐに「さみー・・」なんて言ってジャケットに手を突っ込んで
そっぽを向いたまま僕の次の言葉を待っているようだった。
『どーして?』とかそんなこと聞いても答えてくれないと思ったから、
「よく覚えてたね」って山下に言ったら、
引っ込めたはずの手をゲンコツにして頭を小突かれた。
「テッ!!」
「バ〜カ。忘れるはずがないってのっ!
アレ、そーと嬉しかったんですけどぉ。
と〜ま君は忘れちゃってるみたいですけどね。」
と、山下はふてくされてまくし立てた。
「えっ?!」
「『えっ?!』じゃないってのっ!!生田君がそ〜んな冷たいとは思わなかった。」
「ちょっ・・」
「大体ね、こんな大事な日忘れるなんて山下的にナシですぅ〜」
「ちょっ・・山下・・」
「あのね、ウソはダメですよ。『ちゃんと覚えてたってぇ〜』なんて今さら言っても遅いですぅ〜。」
「だから、山下、ちょっと待っ・・」
「も〜・・往生際が悪いなぁ。素直に認めちゃいなよ。『忘れてました』って」
「待ってってばっ!!!!山下!!!!」
話す隙を与えない山下をやっと黙らせて、
ポケットに勢いよく手を突っ込んで、
大事に忍ばせておいた忘れたはずのチョコレートをそっと差し出した。
「・・・・」
「『忘れてない』ってば・・・」
それを伝えるのが精一杯だった。
去年と同じように・・・
山下は少し驚いて、でも嬉しそうに、大事そうに、
僕の手から今年は綺麗にラッピングされている小箱をさらった。
同じように今年の僕の心も一緒に連れて行った。
「好きだよ」って囁いたその気持ちでいっぱいの僕に
「オレも」って今年の山下は答えた。
僕があげたチョコを口に放り込んだ山下は
お礼にとろけるチョコより甘いキスを贈ってくれた・・・
end.....
あとがき
お久しぶりです〜vv碧です。
またまた山斗をあげてしまいました。
碧からのバレンタインプレゼントってコトで楽しんでください!!
皆様にご心配とご迷惑をおかけしたささやかなお詫びとお礼です。
支えてくださった皆様本当にありがとうございます。
ふつつかものですがこれからも日々精進いたしますので
どうぞ見放さないでやってくださいまし。
激アマの二人もついでに見放さないでやってください(涙)
滝翼は書けない記録更新中ですぅ〜(号泣)
2002/2/14 碧