Don't leave me・・・
・・・・
待って・・・
置いて行かないで・・・
お願いだから僕に気づいて・・
もう一度振り返って・・・
お願い・・・!!!
もう一度だけ・・・
一人にしないで
僕を置いてゆかないで
この手に温もりを・・
ねぇ、お願いだから・・・
この夢を見るようになってどれくらいたつだろう?
最初は"寂しさ"から来る一時的なものだと思っていたけど、
最近のこの夢は激しい妬みと羨みから見るものだと気がついた。
大好きなアノ人の活躍をこんな風にしか思えない。
そんな自分に自己嫌悪を感じてまた落ち込んだ。
「やました・・・」
小さく呟いた。
軋むベッドの上で両腕を使って自分の身体をしっかり抱きとめる。
打ち寄せる不安の波にさらわれてしまわないように。
この場所から流されて誰にも見つけてもらえない場所に行きつかないように・・・
真夜中にふと目を覚ます癖のある僕の身体を抱く山下の腕が
自分の腕に代わったのはいつからだったろう?
真夜中に襲われる焦燥感と不安。
暗闇に増す置き去りにされる寂しさ。
あの力強い腕の温もりに戻りたい。
蓄えられた山下の温もりがベッドの上から消えたのはだいぶ前。
ぬるいベッドの上で見る夢は僕を余計に苦しめる。
その頃からあの夢を見るんだ・・・
知らぬ間に山下は仕事が増えた。
知らないところで山下は新しい仕事を始めた。
知っているのは気持ちの通わないブラウン管の中で
知らない男を演じる僕の知らない山下と、
冷たい雑誌の中で静止して知らない誰かに笑いかける僕の嫌いな山下。
人気が高まるにつれ増える山下の周りの人だかり。
露出が増えるに従って堅くなる山下の身辺。
高く大きく頑丈な壁に囲われる山下。
僕を守ってくれたその細いながらも逞しい腕は
今はもう山下自身すらも守りきれない。
山下から引き剥がされているのはファンなんかではなく、
本当は僕自身なのかもしれない。
離されていく感覚に襲われる事すらない程急速に山下は僕の元から・・
いや・・・"Jr"という枠から抜け出していった。
僕の大好きだった翼君と同じように・・・
それはとても凄い事で喜ぶべき事で嬉しい事だけど、
無邪気な振りして喜ばなくてはいけない自分を演じられるほど僕の心に余裕なんてない。
山下の・・
山下が羨ましい。
山下が妬ましい。
自分の中でまるで詰まった排水溝のように黒い醜い感情が噴出す。
異臭を放ち、滑る汚水が身体中に流れている。
自分自身が醜い生き物のような気がして強い吐き気に襲われる。
置いてきぼりにされた自分とどんどん前に進んでいく山下。
山下に何が劣ってる?!
ダンス? 歌? トーク?
どれも負けてなんかないだろう?
年だって・・キャリアだって・・・
"何がっ!!"
拳を強くスプリングのきいたベッドにぶつける。
怒りを込めた感情が跳ね返ってくるのが堪らなくて、
何度も何度も拳を叩き込んだ。
"何が山下にあって僕にないんだよっ・・・"
力なくした最後の拳をベッドに打ちつける頃には
堪えていた哀しみの感情が爆発する寸前だった。
ねぇ?山下・・
一緒に頑張ろうって言ったじゃない?
ねぇ?山下・・
隣は僕だけって言ったじゃない?
ねぇ?山下、どうして?
ねぇ!!!山下・・・答えてよ・・・
お願・・いだから・・
違う。
山下が悪いんじゃない。
山下は誰かに生活を束縛されてるんだ。
こんな風にしたのは誰・・
僕から山下を連れ去っていったのは誰・・・?
「僕に山下を返してよぉ・・」
搾り出すように声を出してベッドの上で泣き崩れる。
グレーのスエットにいくつものシミが出来て色が変わる。
それでも足りなくてベッドカバーにいくつもの涙の証が広がっては消えていく。
そうだ。
山下は悪くない。
悪いのは・・・
ワルイノハ・・・?
ふっと残っていた汚水の匂いが漂ったような気がした。
翌日の仕事は久々に山下と一緒だった。
目覚めた自分の瞼は赤くはれていたけれど、
今の山下はそんな事は気づかない。
自分を守る事すらも出来なくなってしまった山下自身に
僕のこんな小さな変化なんて気づくはずもない。
何かが吹っ切れたかのように明るくはしゃぐ。
きっとそれも気づかない・・
気づいてよ・・
今ならまだ間に合うから。
ねぇ?山下。
お願いだから、気づいてよ。
パンツのポケットに忍ばされた冷たい金属が
僕の身体に溢れるヘドロを含んだ水を刺激する。
山下の腕はもう僕を守ってくれない。
山下の腕はもう自分すらも守れない。
そっとパンツに手を伸ばし、ゆっくりと自然に山下の側に忍び寄る。
山下はまだ気づかない。
あと3歩・・・
大人に混じって打ち合わせをする山下は
その他大勢でくくられる僕の視線すらも感じない。
あと2歩・・・
明るい照明を当てられている山下は
一段落ちる照明が当てられる僕が分からない。
あと1歩・・・
山下は僕を忘れた。
それなら山下の腕なんてもういらない!!
振りかざした鈍く光る鋭い刃先が山下の細くも逞しい僕の大好きだった腕に食い込んで、
弾力のある山下の肉をしっかりと切り裂き、生ぬるい赤い液体を滴らせる。
あたり一面にはさびた鉄の血生臭い匂いが広がる。
それに混じってかすかに排水溝から漏れるあの独特の匂いが薄く漂う。
これで今日からこの匂いに悩まされる事もないだろう。
大事にしていた飼い犬に手を咬まれる気分はどんな気分?
山下・・・?
だからやめればよかったんだ・・
僕を守り続けるだけで良かったのに。
それ以上なんて僕は望んでなんていなかったんだから。
僕はずっと山下の腕の中で守られているときからこうする事を考えていたんだよ・・
だって僕の中に溜まっていく泥水は山下のその細くも逞しい腕から流れてきたものなんだから・・
あとがき
そろそろ新作ラッシュに飽きてきましたね?(うなずいて・・)
もうそろそろ碧も書きたくないような・・(笑)
ちょっと気分的にダークなんでしょうかね?
これ。斗真ちゃんファンの方申し訳ないです。
最近受け反乱が多くて困りますね(苦笑)
管理がなってませんで申し訳ございません。
実はこれ本当はタイトル通り「置いていかないで・・山下」と切ない話だったのです。
しかし、ラリ様が最近斗真ちゃんの事を"斗魔"なんて呼ぶから!!
鬼のような斗魔ちゃんを書いてしまいました・・(本当に申し訳ないです・・)
これは時間が出来て、気分も変わったら必ず結末違い書きますので。
本当にお約束いたします。
あぁ・・こんな斗真ちゃん見たくないぃ〜!!!(涙)
2002/3/21 碧