1番目と2番目

 

 

 

「キスさせて」

 

 

少し前を歩いている斗真が「ねぇ?」って振り返った瞬間とか

気持ちよさそうに眠ってる時にする不意のキスなんかよりずっと

今この瞬間に“キス”をしたかった。

 

そんなオレに向かって斗真は両手でバッテンを描くように口を塞ぐ。

左腕で腰をしっかり抱いて、

斗真がぼやけるギリギリの視界にまで近寄って言う。

 

「コレ、ジャマ」

 

斗真は右手で手首を掴んで引き剥がそうとすると必死に抵抗する。

“んー!!”と首を振る。

 

手を添えたまま「なんで?」って聞いて、

首を振って塞いだ口から声にならない声がイラだたせる。

このままじゃ埒が明かないから斗真の根気に負けてやって

身体を自由にしてやって降参のイミも含めて両手を挙げる。

 

「分かったっ。しない。だから理由言えよ」

斗真はホッとした表情を見せてから

オレとの距離をとって口元の手をはずして大きく息をついた。

そんな些細な事でオレが左の胸をキリキリと痛ませているなんてコイツは絶対に知らない。

 

あの黒目がちの大きな眼で上目遣いをしてオレを仰ぎ見て言った。

「2番目の人じゃないとダメなんだって言われたんだもん」

 

話が全く見えなかったけど、どうやら誰かに吹き込まれたらしいキスの出来ない訳。

前髪を一つかき上げて斗真から視線を逸らす。

“コイツ、すぐ人の話鵜呑みにする・・”

呆れて一つため息を隠して張本人を訪ねる。

 

「すばる」

 

“ふーん、また会ったんだ”

なんて言葉は今は必要じゃない。

斗真は聞かれた事以上の事を答える様子がない。

 

「で?2番目って誰?」

「んー・・松潤に、ヨコに、ヒナに・・翼君っ!!」

 

全部年上。

全部斗真の好きな人。

全部斗真を甘やかしてる人。

全部オレの嫌いな人。

 

「で?どうすんの?そんなにいっぱいいて?」

そろそろ限界近いオレの気持ち。

ウムを言わせず今すぐキスしたい。

どーでもいいからオレだけにしたい。

 

「んー・・ヨコは普通にほっぺにちゅーしてくれるし、

松潤は頭撫でてくれるし、ヒナは遊んでくれるし、

翼君は何でもしてくれる!!だから2番目の人と一緒にいる」

いちいち考えて答えるのがムカツク。

大して考えてないくせに。

オレのキスには考える前に身体が防御してた。

そんなにダメかよっ、オレ。

 

「で?オレは?」

一応聞いてみる。

多分このままじゃ一生斗真の口からオレの名前は出てこない。

 

「山下はね、我侭言う」

「違うっ!何番目かって!?」

オレだって斗真の面倒くらいみてるだろ?

年下だからそー見えてるだけじゃねーのかよ。

くっそ!!

 

「1番好きな人とはうまくいかないんだって。」

 

 

「好き過ぎてダメなんだって。

好きで、好きで、好きで、好きで。

それだけになっちゃって苦しくて呼吸困難になっちゃうんだって。」

 

「山下は好きだよ。“好きだなぁ〜”って思うよ。

好きすぎるくらい好きなんだけど、でも・・・

そんなに苦しくないし辛くないの。

すばるが言ってたみたく追い詰められてないの。

でも多分すばるの言ってた“好きすぎ”と山下への今の“好き”は同じだと思うよ。

好きが胸にパンパンで気持ちいいよ。

お腹いっぱいで眠くなるみたく気持ちいい。

それって1番じゃないってことかな?ねぇ?山下?」

 

コイツ反則。

こんな事言われたら無理やりキスしたかったこと謝りたいけど、

今すぐキスしたい気持ちにさせられる。

あーもー!!

いっつもコイツに振り回されっぱなし。

それでも何かイイって思ってるオレはキライだけどスキだ。

分かんねーけど、スキだ。

そんな事分かってるけど。

 

オレに聞くなよっ!

 

1番好きかどうかなんて自分で分かれよっ。

眼の前にいんだろ?

オレは2番目はいないし、

キスしたいのも、抱きしめたいのも、

今眼の前にいる斗真だけなんだからなっ。

 

あー・・

これ全部斗真に言えたら話早いんだろうけど、

すぐ抱きしめてキス出来るんだろうけど、

言えねー・・

 

「オレは斗真が1番だよっ!だからキスしたい!」

 

コレが精一杯。

オレに言わせんなよっ!!

あーもー・・

斗真のヤツきょとんとした顔しやがって、

意味分かんねーのかよっ?!

 

あ、赤くなった。

分かった訳ね。

ってか、最初に言っただろーが。

“キスさせて”って。

今更赤くなんなよっ。

 

「で?どーすんの?」

今日何度目だろう。

同じ言葉を斗真に振る。

 

 

黙って眼を閉じ唇を向ける。

 

 

“あーあ、最初からこんだけ素直ならいいんだけど。”

って、悪態つきつつとろけそうな顔でキスしてんだろーな、オレ。

あー・・・幸せ。

 

唇を離したら斗真に教えないと。

「キスは一番好きな人とするもんだって。」

 

 

で、“斗真の一番はオレだ”ってそう言ってやらないとね。

 

 


 
あとがき
 
未発表作2つめです。
これは・・・なんで書いたんだっけ・・?
そうそう、集中講義の時に山下さんの最初のセリフ
「キスさせて」が思いついたからです。(笑)
コレ、実は伏線です。
すばると斗真ちゃんの話書きたいのです。
たきすば。
今更(笑)
山斗はらぶらぶなのに、関連の滝すばはダークで。
(碧得意ですね、ギャグからダークへの華麗なる転換。笑)
 
最後の「あー・・幸せ」ってのがお気に入りです。
その周辺の山下さんの1人心中告白も好きです。
こーゆー山下さん好きだなー。
 
 
                      2002/8/3  碧