第3新東京市立中学校校長 碇ゲンドウ
present by ちひろ
私の名は碇ゲンドウ。
第三新東京市立中学校の校長をやっておる。
私の日常業務は多岐に渡る。
全生徒の校内外生活の安全管理は無論の事、校内施設の維持管理、教師陣の要望要求の検討と実現、そして、PTAのご機嫌取りから果てはペンギン小屋の掃除等々・・・
しなければいけない事が山ほどある。
然るに、校長業務は幅が広いのだ。
毎日が時間に追われ、私専属の秘書をつけたいくらいだ。
が・・・・・・
実際は、このほとんどを教頭である冬月が処理しておる。
最近は私の決済が必要な書類でも冬月が勝手に判断を下している始末だ。
私に残っているのはペンギン小屋の掃除くらいなものだ。
ほ〜〜らペンペン、池のお水を取替えに来ましたよ〜。
グワッグワッ!
おぉ、コラコラ、そんなにすがり付くな。
掃除が出来んではないか。
そうかそうか、池が綺麗になるのがそんなに嬉しいのか?
ハハハハ、可愛いやつめ。
よいしょっと・・・ホ〜〜ラ、ペンペン、高い高ぁ〜い!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・ハッ!
わ、私は一体何をやっておるのだ?
これでは、まるで動物園の飼育係ではないか!
ぬぬぬっ、いかん!
遺憾!
これではイカンのだ!
校長としての面目丸つぶれだ!
大体、この中学校のボスは誰だ?
私だ!
つまり、私が最高責任者であり一番エライ人間なのだ。
それはつまり、教頭冬月ではなく、私、碇ゲンドウなのだ。
ゲンドウ、ファイトだ!
気をしっかり持て!
オマエに出来る事は、ペンギン小屋の掃除だけではないはずだ!
こうなれば、このヒマな・・・いやいや、空いた時間を有効に活用して、我が校の生徒たちの授業というものに積極的に参加して私をアピールしていこうじゃないか。
そうだ、生徒と直に接する校長として私を売り込むのだ。
いいぞ、いい感じになってきた。
・・・・・・しかしなぁ〜〜〜。
この前のこともあるしなぁ〜・・・。
私は突然思い出した。
あの苦渋の出来事を!
実は先日、ペンギン小屋の掃除が終わってやる事がなくなってしまった私は、どこからともなく漂ってくるいい匂いに気が付いた。
自らの鼻を頼りにその元を辿って行くとそこは家庭科室だったのだ。
私は閃いた。
先週、それを息子のシンジに食わせたら美味かったと言っていた“雷こんにゃく”をもう一度作って生徒たちに食べさせてやってはどうかと!
校長先生美味しいよ!校長先生ステキー!トレビア〜ン!云々という絶賛を浴び、私は生徒思いの良き校長として好調な印象を持たれ、歴代校長中トップの支持率でこの中学校を支配し、二宮金次郎の銅像の横に碇ゲンドウの黄金像を建て・・・・・・いやいや、それは置いといて。
和やかな雰囲気の授業風景。
生徒教師ともども和気藹々と楽しそうだ。
さすがは伊吹先生、生徒たちの人気ランキング常に1位を獲るだけのことはある。
敵としては申し分ない。
だが、それも今日までだ。
ふふふ、その座はこの碇ゲンドウがいただく。
学校にアイドルは1人でいい!
気がつけば、私は、その家庭科の授業にゲストとして強引に登場し、仕切っていたのだ。
しかぁ〜〜し!
ブーイングの嵐だった。
オーマイガッ!
なんてこったい!
せっかく私が腕によりをかけて可愛い生徒たちのために、アドリブの効いたカミナリこんにゃくを食べさせてやろうと思ったのに!
あぁ・・・
私はここに居てもいいのか?
だれか私を必要としている人はいないのか?
私は嘆いた。
まさか、生徒たちからあのような非難を浴びようとわ!
家庭科室を飛び出し、廊下のど真ん中で感嘆に暮れた。
通り過ぎる生徒たちの通行を思いっきり邪魔をした。
グワッグワッ!
おぉ、ペンペンよ。
なんだ、どうした?
グワグワワッ!
ひょっとして・・・・・・私を励ましてくれているのか?
ググワッグワッグワワッ!! ←池の水が溢れて小屋まで水が入ってきてるのを必死で訴えてるペンペン
そんなに必死になって私の事を応援してくれるなんて・・・・・・
ジ〜〜ン ←感動してるゲンドウ
し、失敬 ←ペンペンに涙を見せまいと後ろ向きで涙を拭っているゲンドウ
チ〜〜〜〜ン ←ついでに鼻をかんでるゲンドウ
フッ、私は何を呆けていたのだ。
そうだな、私はひとりぼっちじゃない。
ガッツだゲンドウ。
オマエは歴代校長ナンバーワン(予定)になる男。
そして二ノ宮金次郎の銅像の脇に・・・おっと、それは置いといて。
とにかくもうへこたれんぞ。
よし!今度は雷こんにゃくではなく、ヤング(死語)に今一番ナウイ(死語)激辛ニンニクラーメンチャーシュー抜きを作ろうではないか!
暑い日はこれに限る。
ありがとうペンペンよ。
私はオマエのお陰で立ち直る事が出来た。
そうだな。
今度の生徒会予算会議の議案に、3LDK冷暖房完備ロフト付きのペンギン小屋の設置を提案しようではないか。
グワグワッ!! ←早く池の水を止めろと訴えているペンペン
フッ、礼には及ばん。
グッワッ!
んっ?どうした?
おぉ、すまんすまん肝心な事を忘れる所だった。
・・・・・・
温泉も付けておこうではないか。お前は温泉ペンギンだったからな。
グギャッ!?
よし、思い立ったが吉日!
善は急げだ。
行くぞゲンドウ!
新たな希望と共に走り出すヒゲの校長。
グワッ〜〜!! ←最後の雄たけび
後に残された憐れなペンギンが一匹。
そして・・・
数分後、静かな校内にオヤジの雄叫びが上がる。
今日は休日だった。
合掌。
終劇