「う〜ん・・・」
首と胸を圧迫されたような感覚・・・・・・
耳元で、かすかに聞こえる息遣い・・・・・・
くすぐったい・・・・・・
でも、全身を縛られたように身動きする事ができない・・・・・・
何かが、僕の上に乗りかかっている・・・・・・
あっ、両腕は軽い・・・・・・
動かせる・・・・・・
どうしよう・・・・・・
このまま、ずっとこうしていたい気も・・・・・・
とってもいい香り・・・・・・
なんていう香りだろう・・・・・・
なんか、なつかしい・・・・・・
どこかで、憶えのある香り・・・・・・
そう・・・・・・
これは、母さんの・・・・・・
母さん・・・・・・
ムニュッ
「あんっ、碇君たらダイタンなんだからっ!」
「へっ?」
新妻 レイ
present by ちひろ
「なななな、なんで綾波がここに!?」
「おはよう、碇くんっ!」
「あっ、おはよう・・・じゃなくて、」
シンジの首に両腕を滑り込ませ、彼に覆い被さっているレイ。
傍から見れば、どう見ても抱き合っているようにしか見えない。
というか、実際そうなのだが・・・
なんといっても、上に被さっているレイのカラダを持ち上げるように、彼女の胸に両手をやっているシンジの行為が、その光景を確たるものにしている。
「碇君・・・・・・いいのぉ。」
「えっ?」
「もっと・・・」
「えっ?なに?」
「シテ!」
「はうっ〜!」
「碇君!」
「綾波〜、歯立てないで!」
「わ、わたし初めてだから・・・」
「噛んじゃだめだよ」
「どうして?」
「ボクの弱点なんだ、耳たぶ。」
「そうなの?碇君、耳たぶ噛まれるの弱いんだ・・・・・・じゃあ・・・」
「??」
「わたしの一番弱いとこも・・・」
「わー!いい、教えなくていい!」
「それじゃあ、不公平だわ。お互い、弱いとこを包み隠さずさらけ出してこそ、夫婦ってものよ。」
「夫婦??」
「そう、もうすぐ始まるわたし達の新婚生活に向けて、お父様からもう少し大きなダブルベッドを買ってもらう予定なの。」
「お父様って、ボクの父さん?」
「すごく、乗り気なの。これなら、式の日取りも順調にいくと思うわ。」
「やられた〜」
「まだ、なにもしてないわ。わたし達。」
「いや、そうじゃなくて・・・」
「ねぇ、子供は何人くらいほしい?」
「ぶっ!こ、子供!?」
「わたしは、やっぱり、サッカーが出来るくらいは欲しいと思うの。」
「そんなに〜!」
「子供は多い方がいいって、お父様が言ってたわ。いっしょに頑張りましょう!」
「そんなぁ〜、父さん、いったい綾波に何を吹き込んだんだ。」
「あっ、そうそう大事な事を忘れるとこだったわ。」
「大事な事?」
「・・・・・・」
「???}
「おはようのキス・・・」
「ちょっ、ちょっと!」
「クスッ、赤くなっちゃって・・・かわいい、碇君。」
「と、とりあえず起きなきゃ。学校チコクしちゃうよ!」
「ダメ!キスしてくれるまでは!」
「そ、そんなこと急に言われたって・・・」
「じゃあ、わたしがしてアゲル・・・」
「あ、綾波・・・・・・」
「碇君・・・・・・」
「あっ、そうだ!」
「なに、碇君?」
「先に、シャワー浴びてきなよ。」
「いいの?」
「うん、いまなら誰も使ってないと思うし・・・」
「いっしょに入ろっ!」
「それは、うれし・・・い、いや、ダメだよ。それはダメ。」
「どうして?」
「それは、つまり〜・・・」
「ねぇ、入ろうよぅ〜」
「結婚前の女の人は、人前で肌を見せちゃダメなんだ。」
「そうなの?」
「う、うん、碇家では、昔からそういうシキタリになってるんだ。わかってくれた?」
「・・・・・・うん。」
「じゃあ、行っておいでよ。シャンプーとかは、母さんのが脱衣所に置いてあるから。」
「アリガト・・・」
そう言って、掛け布団とともにむくりと起き上がり、トタトタと、壁際にあるシンジの洋服タンスに歩みよるレイ。
そして、スッと一番下の引出しを開ける。
何やらごそごそやりはじめ、あったあったとばかりにその両手をシンジの方に差し出す。
両方の親指と人差し指に挟まれた、逆三角形の形をしたもの。
その向こう側には、どう?とばかりに首を傾げるレイの顔が見える。
「ねえねえ、これ似合う?」
「それって、パパパ、パンテイじゃないか。」
「そう、今日の下着は、碇君に決めて欲しいのぉ。」
「出来ないよ!」
「ダメ!じゃあ、このピンクのフリルの付いたやつは?」
「う・・・そ、それでいいと思うよ。うん、とっても似合うんじゃないかな。」
「ほんと?」
「うん、ホントにホント!」
「じゃあ、はいてみるね!」
「わ〜、ダメダメ!ここで着替えちゃだめ!」
「わたし、碇君になら見せてもいいの。」
「いいのとかそういう問題じゃなくて・・・ちょっちょっと、ほんとにダメだったら!」
「ん〜、ねぇねぇ、碇君ちょっと見て。」
「ちゃんと着替えたよね。」
「うん。」
「ホント?」
「とにかく見て〜。」
「ど、どれ・・・・・・」
「食い込んでない?あたしって、おしり大きいのかなぁ〜。」
ぶはぁーーー!!
「あっ、大変!碇君、鼻血噴き出してる。」
「あ、綾波のが・・・・・・」
「大丈夫?」
「はぁはぁ、うん、な、なんとか大丈夫だよ。」
「よかった〜。」
「あのさ、綾波、ボクからのお願いなんだけど・・・」
「なになにぃ?」
「明日から、パジャマ着て寝ようよ。おなか冷えちゃうだろ。」
「碇君といっしょに寝るから、わたし寒くないわ。」
「それそれ。やっぱり、お互い自分のベッドで寝ようよ。さすがにふたりはキツイと思うしさ。」
「わたし、きつい方がいい。だって、その方が碇君のぬくもりを体一杯に感じていられるから・・・」
「ボクだって、その方が・・・い、いや、ダメだよ。ボク達まだ中学生だしさぁ。」
「碇君はわたしのことキライなんだ・・・・・・」
「綾波?」
「キライなのね・・・・・・」
「そ、そんなことないよ!」
「じゃあ、好きってこと?」
「まぁ、そうかな。」
「碇くんっ!」
「わっ!」
「大好き!」
「綾波・・・・・・」
「碇君・・・・・・」
「ねぇ、その格好じゃカゼをひいちゃうよ。」
「くしゅんっ!」
「ほらっ、言わんこっちゃない。」
「あっためて・・・」
「は?」
「碇君のカラダで・・・・・・」
「わっ!」
ドサッ!
「ちょっちょっと、あぶないよ、綾波!後ろがベッドだったからよかったものの・・・」
「いいの!ベッドであっためて!」
「へっ?」
「さむいの、碇君・・・」
「そ、そんなこと言ったって〜」
「はやくしないと、わたし、カゼひいちゃうわっ!」
「あ、朝っぱらからマズイよっ!」
ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリィ!!
「はっ!ホントにマズイ!!」
「目覚ましの音よ。そんなに焦らなくても、まだ十分、時間あるわ。」
「とにかく、マズイんだ!一刻も早く、家を出なきゃ!」
「どうして?」
「そうしないと、大変なことになるんだ!」
「大変なこと??」
「とにかく、ボクといっしょに逃げよう!」
「逃げるってどこに?」
「誰も知らないところへ。」
「うん、碇君がそういうのなら、わたしを連れて逃げて!」
「行こう、綾波!」
「行きましょう、碇君!」
「行くわよ、シンジ!」
「アスカ、今何時?」
「え〜とね、7時半よ。」
「綾波、着替え終わった?」
「待って、今、スカートはくとこ。」
「いい?」
「ようしょっと・・・・・・いいよ。」
「じゃあ、行くよ!」
「よしっ!じゃあ、学校まで競争よ!」
「競争?」
「あっ、待ってよ、アスカ!」
「待って、碇君!」
「アタシに追いつけなかったら、死刑!!」
「ちょっ、速すぎだよアスカ!!」
「死に物狂いでついて来なさい!!!」
「うわー、そんなー!」
「碇君、待ってってばー!」
「ごめんよ、綾波!ボクの命がかかってるんだー!」
「碇君ってばーー!!」
「ハァハァハァハァ、もうダメだ。追いつけるわけないよ〜。昔から、かけっこで、アスカに勝った試しなんかないのに。」
「どうしよう〜・・・・・・逃げちゃおうか・・・・・・・い、いや、逃げるったって、どこに・・・・・・」
「仮に学校まで行ったとしても、だぶん・・・・・・アスカは正門前で仁王立ち・・・・・・」
「ボクは、襟首掴まれて、そのまま人気のない裏庭へ・・・・・・」
「そして・・・・・・・・・・・・・・・・・・うわ〜、そんなのイヤだぁー!ボ、ボクはどうすればいいんだぁー!」
プップッ!
「ハロ〜、シンジ君!」
ビクッ!
「な〜に、ビクついてんのよっ!」
「ミ、ミサト先生!」
「どうしたの?息切らしちゃって〜。」
「いや〜、実は・・・」
「ん?」
「あっ、そうだ!」
「?」
「学校まで乗せてってくれませんか?」
「えっ?」
「お願いします!この通〜り!」
「ちょっちょっと、そんな土下座しなくっても、乗せてあげるわよっ!」
「えっ、ホントですか!」
「もう、ほらほらっ、乗りなさい。」
「ア、アリガトウございます!」
バタンッ!
「ふ〜、助かりました。」
「まだ、時間あるのに、どうしたの?なんか訳あり?」
「訳アリもなにも、ボクの命に関わる事なんです。」
「も〜、大げさね〜。」
「ホントなんですってば!」
「どういうこと?」
「アスカに無理難題を吹っかけられまして〜・・・・・・」
「ふ〜ん、そういうこと・・・・・・」
「まったく、朝っぱらからよくやってくれますよ!アスカは昔からそうなんだ。ボクの話なんか聞きもしないで、一人で勝手に話進めちゃって!」
「あ、あらっ、アスカにもいいとこはあるのよ。たとえば〜」
「例えば何ですか?」
「え〜、ほらっ、あれよっ。つまり〜。」
「そうでしょ、すぐには思い浮かばないでしょ!いま、ミサト先生が思ってること当ててみましょうか?」
「えっ?」
「ワガママで強欲で独裁的で狂暴で傲慢で自分中心に世界が回ってると思って信じて疑わない高飛車なクォーター・・・でしょ!」
「あ、あの、シンジ君、落ち着いてっ!」
「これが、落ち着いていられますか!まったく、ボクの身にもなってくださいよ!毎日毎日、暴力振るわれてない日なんてないんですよ!」
「それは、つまり〜それだけシンジ君に心を許してるって事じゃないかしらぁ〜」
「許すもなにも、その前にカラダが持ちませんよ!」
「おっと、信号赤だわ。」
キキッ!
「ねぇ、シンジ君・・・・・・」
「どうしたんです?」
「残念だけど・・・」
「なんですか?」
「バックミラー見てくれる?」
「・・・・・・」
「束の間のドライブだったけど、楽しかったわ。」
「ボ、ボクも楽しかったです。」
「いい、シンジ君。」
「はい・・・」
「ここから先はもうあなた一人よ、すべてあなた一人で決めなさい。」
「ミサト先生・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・ボ、ボクは毎日毎日、怯えて生きてきて・・・・・・自分のことしか考えられなかった、他人のことなんて、気にしていられなかったんだ。だから、今朝も、綾波のことなんか何も考えずに、置き去りにしてきた。あんなに、ボクのこと呼んでたのに・・・・・・ボクはそれを自分の保身のために・・・・・・」
「シンジ君・・・・・・」
「ボクは綾波を裏切った・・・・・・裏切ったんだ!人を傷つけてまで生きのびようとした、自分勝手な人間なんだ!そんなボクに生きる価値なんてない!だからもう、何もしないほうがいい!」
「傷つくのがイヤだったら、何もせずに死になさい!」
「・・・・・・」
「わたしは、同情はしないわ!」
「ううっ・・・・・・」
「今、泣いたってどうしようもないでしょ!」
「ぐすっ・・・・・・」
「自分が嫌いなのね・・・・・・だから他人も傷つけてしまう・・・・・・でもね、どんな結果が待っていたとしてもシンジ君、それは、あなたが自分で決めた事でしょ・・・自分で考えて行動したのよ・・・・・・それは、とても価値のあることなのよ・・・」
「・・・・・・」
「あなた自身のことなのよ・・・・・・誤魔化さず、自分に出来る事を考え、その償いは自分でしなさい・・・・・・」
「他人のくせに!ボクの事、何もわかってないくせに!」
「他人だからってどうだっていうのよ!!」
「!」
「アンタ、このままここでやめるつもり!?今、ここで何もしなかったら、アタシ、アンタを一生許さないからね!」
「・・・・・・」
「いいこと、シンジ君・・・・・・もう一度、自分の足でケリをつけなさい、今までの自分に・・・・・・そして、何のためにここに居るのか、何のためにここまで来たのか・・・・・・自分自身で、その答えを見つけなさい・・・・・・」
「・・・・・・」
「そして、ケリをつけたら・・・・・・必ず戻ってくるのよ・・・・・・ホームルームまで・・・・・・」
「ミサト先生・・・・・・」
「約束よ・・・」
「ボ、ボクは・・・・・・」
「行ってらっしゃい・・・・・・」
バタンッ!キキキキッーブロロローーー!!
「あっ、ちょっちょっと、ボクを置いてかないでーーーー!!」
「シンジ君・・・・・・グッド・ラック・・・・・・」
「ミサトセンセーってばーーーーーーーーーー!!!!!」
「ハァハァハァハァ・・・・・・あっれ〜、ミサト行っちゃったんだぁ〜。」
「ア、アスカ!ボクは・・・」
「置いてけぼりねっ、シンちゃん!」
「ボクは・・・」
「ズルしちゃったんだ〜」
「い、いやだからその〜」
「ズルよねぇ〜」
「だから〜」
「ズルだろ?」
「は、はいっ!」
「フフッ、最初からそう言えばいいのよ。」
「ゆ、許してくれるの?」
「許す?」
「今朝の事も?」
「今朝?」
「いやだから、ボクと綾波が一緒のベッドで寝てた事とか、間違って綾波の胸触っちゃった事とか・・・」
「抱き合ってた事とか、目の前で脱いじゃった事とか?」
「そうそう!あれはさすがにマズかったよ。あんな場面、アスカに見られ・・・・・・」
「・・・・・・」
「あ、あのアスカ・・・・・・あ、汗拭きなよ!はい、ハンカチ。」
くんくん・・・
「どうしたの?」
「女の匂いがする・・・・・・」
「な、何言ってるんだよ。それ母さんのだよ。」
「ホント?」
「ホントだよ!裏に名前書いてあるだろ。」
「あっ、ホントだ。」
「もう〜アスカったら疑り深いんだから〜」
「碇 レイ・・・」
「・・・・・・」
瞬殺。
終劇