第2話 イマジネーション(後編)

                                                      

                                                      present by ちひろ


 

「・・・・・・タ、おきて。」

「う〜ん・・・」

「ほらっ、会社にチコクしちゃうわよ。」

「あと十分だけ寝かせて・・・・・・」

「ダ〜メ!アナタってばぁ。」

「んっ、そんなに揺らすなよ。わかったよ、降参降参。」

「もうっ、ようやくお目覚めね。はいっ。」

「・・・・・・なに、目ぇつぶってんの?」

「むぅ〜、だから、い・つ・も・の・やつぅ。」

「へっ?」

「なにすっとぼけてんのよ!アタシに言わす気?」

「・・・・・・・・・?」

「チュッ!」

「!!!!!」

「はじめっからさせる気だったんでしょう、アタシに・・・えっち!」

「ごめんごめん」

「さっ、早くゴハンたべよっ!」

「そうだね。」

「・・・・・・アナタ、おいしっ?」

「うん、とってもおいしいよ。キミの愛情がこもってて。」

「おかわり、いっぱいあるからね。」

「じゃあ、キミをおかわりしようかな。」

「プッ、クスクス!ゴハン粒ついてる顔で似合わないわよ。」

「え〜、どこどこっ?」

「もうっ、コドモなんだからぁ・・・・・・パクッ。」

「ありがとっ。でも、キミもゴハン粒ついてるよ。」

「えっ、どこよ〜。」

「ここだよ。」

「んっ!・・・・・・・・・・・・はんっ。」

「スキだよ、愛してる。」

「・・・・・・もっとしてっ。」

「会社に遅れちゃうよ。」

「おねがいっ・・・・・・一回だけ。」

「じゃあ、一回だけだよ。」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・ねぇ、今日は早く帰ってきてね。」

「うん、なるべくそうするよ。」

「なるべくじゃダメェ!ゼッタイって約束してっ!」

「わかったよ、ゆびきりしようか。」

「うんっ。ゆっびきっりげ〜んまん、うっそついたっらはぁりせんぼんの〜ますぅ、ゆっびきったっ!」

「それじゃ、行ってくるね。」

「いってらっしゃい。」

「ちゃんと、戸締りするんだよ。」

「うんっ、アナタも約束忘れないでね。」

「ああっ。」

「気をつけてね。」

バタンッ!

「さぁて、行くかな・・・・・・?会社ってどこだっけ・・・・・・っていうか、あの女、誰?ボクは一人身のはずだ。あれっ?まてまて、ちょっと待てよ、なにがどうなってんだ!?冷静になれ、冷静になるんだ。え〜、ボクは、朝起こされて、メシ食って、んで今、会社に行こうとしている・・・・・・いや、もっと前、たしか・・・・・・昨日、くたくたになって部屋に帰ってきて、そのまますぐ寝ちまって・・・・・・それでどうしてこうなっちゃうわけ?いったいぜんたい、どうなってるの?おかしくなっちまったのか・・・・・・・・・いやいやっ、あっ、そうだ!あの女に聞けばいい。お〜い、開けてくれ!このドアをはやく。」

「・・・・・・どちら様?」

「ボクだよボク!」

「ボク?」

「そうだよ、キミの旦那様だよ、はやくドアを開けてくれよ!」

「アタシの?なら、なまえを言ってみて。アタシのなまえ。」

「えっ、キミの?・・・・・・・・・・・・」

「愛する妻のなまえが言えないの?」

「冗談言ってる場合かよ!いいから開けろよ、たのむ、開けてくれ。」

「言えないんじゃあ、できないわ。」

「開けろって言ってんだろ!!」

「ふふっ、そんなに怒鳴らないで。」

「オイ!いったいキミは誰なんだ!どうしてボクの部屋にいた!ここはぼくの家だぞ、不法侵入で警察を呼ぶぞ!」

「・・・・・・じゃあ、アナタのなまえを言ってみて。そしたら、開けたげる。」

「ボッ、ボクのなまえ?」

「はやくしないと、気がかわっちゃうかもよっ。キャハハハハハハッ!」

「ボクのナ・マ・エ・・・・・・」

「どうしたのかなぁ〜ボクゥ?おなまえ忘れちゃったのかな?クスクスッ。」

「うっ、うるさい!笑うな!オマエは黙ってろ。気が散るだろ、今思い出すとこだ。邪魔するな。」

「そんなに待てないわ。十秒だけ待ったげる。」

「あっ、おい!ちょっと待てよ。聞きたいんだよ、キミに。どうしてこうなったのか?」

「あと五秒・・・」

「おっ、思い出せないんだ!キミと結婚した事も、キミのなまえも、ボクのなまえも。たのむ!教えてくれ。」

「・・・はいっ、時間切れ。残念でした。お帰りは、後ろのらせん階段からどうぞ。」

「・・・・・・たのむ。」

「・・・・・・・・はじめっから開いてるわよ、このドア。」

「なっ!・・・・・・・・・・・バカにしてっ。おい!オマエそこに居ろよ、今すぐこの家から引きずり出してやるからなっ!」

バタンッ!

「・・・・・・・・あれ!?誰もいない・・・・・・ここ、さっきの部屋じゃない・・・なんかこの風景、見覚えが・・・・・・」

ジリリリリリリリリィー!!

「!・・・おっ、驚かすなよ。やかましいめざましだな・・・・・・・・・・・・・」

しばしの沈黙が流れる。

「!?」

微かに、汽笛のような音を耳にしたような気がした。

「そっ、そうだよ、そうだ!窓だよ、窓っ!ブラインド上げなきゃ!」

シャァァァァァァァァァッ!

ボクの目に飛び込んでくる現実。

「・・・・・・・・・やっぱりそうだ・・・・・・海がみえる・・・」

 

つづく

 


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